Gotcha Gotcha Gamesより発売中のNintendo Switch(※)用ソフト『RPG MAKER WITH』(以下、『WITH』)。専門知識ゼロでも気軽にゲーム制作を楽しめるRPGツクールの最新作だ。

※プレイステーション4、プレイステーション5版は発売日未定

 本記事では、本作を使って制作された5つのサンプルゲーム(※)のプレイレビューをお届け。各ゲームの特徴や魅力を中心に紹介していく。

※先行プレイの段階ではサンプルゲームは5つだったが、4月11日より“遊ぶチュートリアル”という作品が追加された。

 なお、紹介するサンプルゲームは、『WITH』のほか、体験版としてニンテンドーeショップで無償配布されている『RPG MAKER WITH PLAYER』でも遊ぶことができる。メニュー内の“みんなの作品”の“ゲームを探す”からダウンロード可能だ。

 『WITH』本体では、プレイのほか、ダウンロードしたサンプルゲームの中身を見ることもできるようになっている。どのようにゲームが作られているかを確かめたり、サンプルゲーム自体を改変して遊ぶこともできるので、ゲーム作りの参考にもなるだろう。

 『WITH』のゲームシステムやゲーム制作の様子については、以下の記事をチェックしてほしい。

※本記事はGotcha Gotcha Gamesの提供でお送りします。

『フリーゲーム実況少年HI★KA★RU』実況プレイあるあるが詰め込まれたお手軽RPG

 こちらは“アクツクMV情報局”ぞうのもり氏が制作した、10分ほどでクリアーできる戦闘のない手軽なサンプルゲーム。プレイヤーは新作フリーゲームの生配信を行う実況者のヒカル少年(以下、ヒカル)となり、フリーゲーム『クエストファンタジー√』をプレイしていく。

 『フリーゲーム実況少年HI★KA★RU』は、生放送中に起こるトラブルやヒカルがゲーム実況を行う様子、ヒカルと視聴者(リスナー)のやり取りが大きな見どころだ。現実の実況配信で見られるあるあるネタも豊富で、ときおりクスッとさせられるシーンも。さらにふつうの実況配信を題材にした物語かと思いきや、意外な仕掛けが盛り込まれており、ラストは驚きの展開もある。

 本作はテキストと演出を駆使してゲーム実況をうまく表現し、それをサクッと遊べるボリュームに落とし込んでいたのが印象的だ。テキストが読みやすくてテンポもよかったので、あっという間の10分だった。短時間でおもしろさとインパクトの両方を与えるのは、なかなか難しいことだと思うのだが、本作はそれがしっかりと表現されており、いい意味で裏切られた。

『Cleanse Lord』シンプルだけど遊びやすくて熱中するアクションRPG

 スペリオン氏が手掛けたステージクリアー型のアクションRPG。想定プレイ時間は60分。人類と魔族が大地を巡って争い続ける世界で、“浄滅師”と呼ばれる少女の活躍を描いた作品だ。

 プレイヤーは浄滅師のテティスを操作して、フィールド内をばっこする魔物を倒していく。本作では魔物に近づき、相手のほうを向いて攻撃ボタンを押すことでダメージを与えられる。ただし魔物に接触するとダメージを受けてしまうので注意。

 攻撃は近接と精霊術(魔法)の2種類で、近接攻撃は攻撃距離が短く、目の前の敵にしかダメージを与えられない。対して精霊術は精神力(MP)を消費する遠隔攻撃で、属性によって攻撃内容および攻撃範囲が変化する。なお、敵を倒すと、経験値(緑色のアイテム)をドロップする。これを集めるとテティスがレベルアップし、ステータスが上昇していく。

フィールド内の女神像に触れると、HPとMPが全回復し、セーブが行える。
感圧板を使った、ちょっとした謎解きギミックもある。

 フィールド内の魔物をすべて倒すと、ステージクリアー。フィールドが浄化されてNPCたちが移住してくる。彼らに話しかけることでつぎのステージを攻略するヒントがもらえることがあるほか、新たな魔法を入手も可能。ステージによっては装備とアイテムのショップがあり、ここで強力な装備を購入してキャラクターのステータスをさらに強化することも。

 『RPGツクール』=ターン制バトルと思いがちだが、作りかた次第で本作のようなアクションRPGも作れてしまう。コンストラクションツールとしての『WITH』の可能性を示す作品だ。

 操作はシンプルだが、攻撃と精霊術の間合いをつねに意識しつつも、魔物の攻撃をかわさないとならないため、思っていた以上に忙しい! とくに後半になると、魔物の攻撃が苛烈になる。弾幕ゲームのような難しさもあってやり応えは十分。筆者はアクションゲームが得意なほうだと思っていたが、予想以上に歯ごたえがあり、何度もゲームオーバーになってしまった。

 ちなみにゲームオーバーになると、再開時にお金が支給されるため、初心者向けの救済措置が用意されている点も好印象だった。

『ステータスワールド』ゲームシステムとリンクした魅力的な設定を盛り込んだローグライクRPG

 シバルバー氏の作品。想定プレイ時間は2時間。本作はステータスが見える魔法をかけられた世界が舞台。自身の強さを数値で確認できるため、便利な反面、魔法を解析して悪用する“チート”を行う者もいる。プレイヤーは過去の記憶を見る能力を持つ魔法剣士・レイノルズとなって、育ての親・カトレイルを殺した犯人を捜す旅に出る。

 本作は複数の階層で構成されたランダムダンジョンを攻略するローグライクRPG。ダンジョン内にいる敵を倒すと、強化ポイントが貯まっていき、最大に達すると強化可能なステータスが3つ表示される。その中からひとつを選んで、パーティーを少しずつ強化していくのだが、強化ポイントで得られるステータス上昇効果はダンジョンから出るとリセットされてしまう。

 対して、敵を倒すことで得られる経験値が一定数に達するとレベルアップが上昇するのだが、こちらはダンジョンから出てもリセットされないのが特徴。

 戦闘はシームレスなターン制バトル。敵に接触すると、戦闘コマンドと敵味方のステータスが画面に表示され、すぐさま戦闘が始まる。戦闘に参加できるのは4人パーティーの先頭にいるキャラクターひとりのみで、バトルでは相手のステータスを見ながら弱点(防御力が低ければ物理攻撃など)を突いていくのだが、敵との相性が悪い場合は、弱点が突けるキャラクターに交代することも可能。交代はターンを消費しないので気軽に切り換えられる。

ダンジョンには3種類の宝箱がある。赤は無条件で開き、青はMPを消費する。金色は現在のステータス上昇効果の内容に応じて解錠確率が変化。
ダンジョン内に持ち込めるアイテムは1種類につき、ひとつまで。基本は現地調達となる。

 ダンジョンの最深部にいるボスを倒して出口に到達するとクリアーとなり、到達階層と敵撃破数に応じたお金がもらえて物語が進行。ちなみに途中でパーティーメンバーが全滅した場合は、その時点の到達階層と敵撃破数に応じたお金を獲得できる。

 お金はダンジョンの入口や街で販売されているアクティブスキルとパッシブスキルの購入に使用する。アクティブスキルはMPを消費して放つ特技や魔法のことで、パッシブスキルはステータスを高めるアイテムのこと。これらが本作における装備枠になり、各キャラクターにスキルを装備して自分好みに強化していく。

 遊び心満載の本作は、ランダムダンジョンやその都度強化していくステータスなど、しっかりとしたローグライクRPGだった。『WITH』でローグライクRPGを作ってみたい人には、参考になる点も多いのではないだろうか。ターン制の戦闘も、独自のUIとシームレスなバトルによってテンポがよく、快適にダンジョンを進められた。弱点を突くためにキャラクターを交代する駆け引きや、スキルでちょっとしたビルドを構築する遊びも大きな魅力と言える。

 設定とストーリーがかなり練られているのも印象深い。ステータスが見えるという設定を逆手に取ったUIは秀逸だった。チートを巡る物語は、進めていくにつれて本作の世界にドンドン引き込まれるような意外性とおもしろさがあった。

『嵐の後で』遊びながらゲーム作りのイロハを学べる王道RPG

 すぎやん氏が手掛けた短編RPG。本作は外の世界での冒険に憧れる青年ダンが、その夢を叶えるべく、仲間とともにアーティファクトを集める旅に出る。想定プレイ時間は3時間。

 物語の舞台は本土から遠く離れた北の大地にある “冬の街”。ある日、ダンは幼なじみとともに森の中で墜落した飛空艇に遭遇。ダンたちは飛空艇の持ち主から、飛空艇の修理に必要なアーティファクトの回収を依頼される。その報酬は飛空艇での冒険だった。外の世界に行くチャンスだと思ったダンは、幼なじみのクーデリカやマッチとともに、冬の街の周囲に散らばったアーティファクトを集める冒険へと出かける。

 本作はランダムエンカウント方式を採用したターン制バトル。MPを消費してくり出す特技と、敵への攻撃や被ダメージ時によって蓄積するTPを消費してくり出すTPスキルを駆使して戦う。敵を何度も倒してレベルを上げたり、装備でステータスを上げたりすることが攻略のカギとなる。

 『嵐の後で』はゲームであると同時に、ゲーム制作の教科書のような内容が大きな特徴だ。フィールドの宝箱にキーアイテムを忍ばせることで探索の意味をより強く見いださせたり、ストーリーが進むごとに強力な装備が入荷するショップを設けたり、水位の変化や氷の床のような視覚的にわかりやすいギミックを用意してダンジョン攻略の楽しさと達成感を教えたりなど、RPGに必要な要素を余すことなく盛り込んでいる。

 さらにゲーム内に登場する吟遊詩人のNPCに話しかけると、ゲームにおけるストーリーの作りかたや魅せかたを教えてくれる。なぜそうしなければならないのか、という部分まで丁寧に答えてくれるので、遊びながらゲーム制作のノウハウを身につけられる。『WITH』で初めてゲーム制作をする人やいつもストーリー作りで苦戦するという人は、最初に本作をプレイしてみるといいだろう。

 そんな本作は演出、レベルデザイン、ストーリー、すべてが王道でプレイしていてワクワクさせられる内容に仕上がっている。世界観の壮大さを感じさせる演出もよかったが、個人的には、冒険に憧れるダンの主人公らしい真っ直ぐ過ぎる性格が見ていて気持ちよかった。会話の選択肢にも彼らしさがあって、プレイしていて感情移入しやすいし、そのおかげでもっと遊びたいと思えた。改めて「王道っていいな」と感じられる作品だった。

『イービルクエスト』ハイテンション&ハイスピードなオープンワールドRPG

 ケケー氏が制作したオープンワールドRPG。想定プレイ時間は10時間。主人公は謎の力でレベル888から1にダウンした悪の帝王“悪逆メータ”。自身が最強であることを証明するために、広大なオープンワールドの世界を大冒険していく。おもな目的はさまざまなキャラクターを仲間にし、各地の強敵“ランカー”を倒して“夢幻境ランク”1位を目指すことだ。夢幻境ランクとは本作における強さランキングのこと。

このかわいらしい見た目の子が主人公の悪逆メータだ。

 本作の特徴は3つ。ひとつ目はひとクセも、ふたクセもあるキャラクターの存在。どいつも、こいつも、ぶっ飛んだやつばかりで、脳の理解が追いつかないことも。そんなキャラクターたちが織りなすハイテンションでコミカルな会話は本作の醍醐味とも言える。

 ふたつ目は個性的なバトルシステム。本作はシンボルエンカウント方式のターン制バトルなのだが、敵の攻撃がつねにインフレ状態。ゲームを初めたばかりでこちらのHPが1000ほどしかないのに、平気で数千、果ては数万ダメージがポンっと飛んでくる。そのため、ただ殴り合うだけでは絶対に勝てないようになっているのだ。

 そこで重要なのが、バフ・デバフ、トラブル、弱点属性、ツキの要素。それぞれの概要は以下のとおり。

  • バフ・デバフ:バフは自身を強化、デバフは相手のステータスを弱体化する技のこと
  • トラブル:状態異常のこと。最大ライフの30%を削る“猛毒”、特定の属性攻撃が66%の確率で外れる“暗闇”、気力(本作におけるMPのこと)を消費して放つアーツ(必殺技)を使えなくする“封印”がある。
  • 弱点属性:本作には筋肉、科学、魔法という3つの属性があり、それぞれ同じ属性に弱い。例:筋肉属性の敵には筋肉攻撃が有効。
  • ツキ:幸運を表す数値。戦闘時に味方のツキは気力ゲージの下、敵のツキはその敵のグラフィックの足下に表示される。ツキは毎ターンランダムに変動し、その数値によってくり出せるアーツが変化。ツキが高ければ強いアーツ、低ければ弱いアーツしかくり出せない。ツキは通常攻撃で+50、ガードで+30上昇する。

 バフとデバフでダメージを抑えつつ、トラブルで相手の動きを封じる。通常攻撃やガードで仲間のツキの数値を高め、強力な弱点属性のアーツで大ダメージを狙う。また敵のツキが高い場合はガードや防御系のアーツでつぎのターンに備える。これが本作の戦闘の基本となり、把握しておかないと、敵にただただ一方的に蹂躙されるハメになるので、チュートリアルやアイテム欄にある攻略のヒントに目を通しておこう。

 3つ目の特徴はすべてのNPCを仲間にできること。本作には会話、バトル、洗脳という3つのモードが存在。会話モードは文字どおり、NPCと話すためのもの。バトルモードは話しかけたNPCがランカー(強敵)であればバトルでき、勝利すれば、そのNPCが仲間になる。

 そして、洗脳モードは話しかけたNPCをお金で何度も購入できるという、なかなかにゲスいシステムだ。洗脳はバトルと違ってすべてのNPCに有効なので、街の入口にいるふつうのお姉さんも仲間にできてしまう。意外なNPCがメチャクチャ強いことも!?

 仲間になったNPCには隊長と隊員というカテゴリーがある。隊長はパーティーに加えられる、いわゆるプレイアブルキャラクター。パーティーは最大4人までで、プレイアブルキャラクターは約15体。隊員はパーティーメンバーの部隊に編成できるキャラクターで、本作における装備枠。つまり隊長に隊員を装備することで、隊長のステータスを上昇させたり、新たなアーツを使えるようにしたりしていく。

 まとめるとバトルモードと催眠モードを使ってさまざまなNPCを勧誘し、そのNPCでパーティーメンバーを強化。戦闘ではバフ・デバフ、トラブル、弱点属性、ツキをうまく駆使して、世界中のランカーを倒し夢幻境ランクの1位を勝ち取る。これが本作のゲームの流れだ。

 最初にプレイしたときは、敵の強烈なインフレのせいで“RPGの常識が通じないRPG”と思った。しかし遊んでいくと、パーティーメンバーの強化や、相手に合わせた戦法で戦うというゲーム性は、まさに王道RPGそのものだったことを理解。それに気づくと、攻略のおもしろさが増し、NPCの勧誘も楽しくなった。本質は王道だが、ツキや催眠モードなど、変化球の要素も多く、RPGが好きな人ほど、夢中になれると思う。

 登場人物たちはとにかく個性的で型にはまらない者ばかりなので、「こいつはどんなキャラクターなのだろう」と、話しかけるのが毎回楽しみになるのも本作の魅力のひとつだと思う。個人的には主人公のメータがお気に入り。彼女はメタネタを平気で言う、本作屈指のおもしろキャラクターだが、その一方で、ランカーに勝利した際には、悪の帝王らしいカリスマ性を魅せ、言葉で堕とす一幕もある。そのため、テキストを読むのが非常に楽しかった。

どのサンプルゲームも遊ばなきゃ損なデキ

 本作のサンプルゲームをどれも素晴らしいデキで、作り手のこだわりを強く感じた。専門知識やゲーム開発の環境がなくても、アイデアさえあればこれほどのゲームが作れることに驚くばかりだった。

 ひと口にRPGと言っても、アクション、ローグライク、オープンワールドといった多彩なジャンルを作ることができるし、バラエティ豊かな演出も盛り込むことができる。もちろん昔ながらの王道RPGも再現可能。

 まさかたった5つのサンプルゲームで、『RPG MAKER WITH』のポテンシャルの高さをここまで感じるとは思いもしなかった。いずれもただおもしろいだけではなく、ゲーム制作の参考になるように作られているので、ぜひ遊んでみてほしい。

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