13日、2025年大阪・関西万博の開幕まで1年となる。万博のシンボルとなる大屋根(リング)の〝完成〟が見え始めた。すでに建設は8割が終わり、秋に全体が輪となってつながる見通しだ。ただ、会場の主要部分を囲うリングが完成すると、外から重機やトラックが入ることが難しくなり、内側の海外パビリオンの建設工事はますます遅れる恐れがある。開幕まであと1年と残り期間が切迫する中、パビリオンの完成を間に合わせるため、関係者は知恵を絞る必要がある。

「本当にすごい建築物だ。まるで、京都・清水寺の『清水の舞台』のようだ」

3月上旬、自国のパビリオン建設の起工式のために夢洲を訪れた欧州の政府高官は、建設が進むリングを見上げ、感嘆の声を上げた。

リングは3工区に分けて工事が進められ、本体の多くができあがった。リング建設には木と木をつなぎ合わせる伝統的な工法を採用。一方、3D映像で工事の進捗(しんちょく)をオンラインで管理するなど、最新技術を織り交ぜ作業が進められている。

ただ、大きな課題がある。

「リングの内側の海外パビリオンは今後着工するものも多いが、リングがつながったときには内側への重機、資材の搬入が制約される。万博協会は調整をしてほしい」

2月下旬、日本建設業連合会の宮本洋一会長(清水建設会長)は会見でこう訴えた。

リングがつながった後も外部と内部をつなぐ複数のルートを設け、重機や車両が入れるようにする。ただ、現実問題として、会場内やリングの下で舗装工事が始まると、舗装を壊してしまう規模の重機は入れなくなる。

舗装工事が終わっていない一定期間なら重機は入れるが、協会幹部は「個別の調整が必要になる」と難色を示す。リングの輪がつながった後の10月中旬以降の重機を使った工事の容認には否定的だ。

ただ、海外パビリオンの建設は遅れている。独自に設計・建設する「タイプA」を目指していた国は当初60。しかし、資材価格の高騰や各国の準備遅れで建設事業者が決まった国は今月4日現在、36にとどまる。

事態を打開するため、万博協会は「タイプA」を希望し建設事業者が決まった国に、可能な限り早期の工事完了を働きかけている。工事の簡素化や、デザインの見直しなども求めている。

建設事業者が決まっていない国に対しては、日本側が建設して建物を提供する簡易な「タイプX」や「タイプC」への移行を促す。タイプXについては、ドバイ万博で日本も同様のパビリオンを使い高い評価を得た事例を紹介し、早期の移行の決断を促す。

リングの輪がつながると、海外パビリオンの建設はますます遅れる恐れがある。〝万博の華〟パビリオンと〝万博のシンボル〟リングの両立へ、現実的な〝解〟を導き出すことが求められる。(黒川信雄)

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