【ニューヨーク=竹内弘文】米運用大手のバンガード・グループは14日、次期最高経営責任者(CEO)に米ブラックロック元幹部のサリム・ラムジ氏を指名したと発表した。同社で上場投資信託(ETF)事業などの責任者を務めたラムジ氏のもと、バンガードは資産運用規模で先行するブラックロックを追う。国際戦略の練り直しも課題だ。

バンガード次期CEOのサリム・ラムジ氏

ラムジ氏は7月8日付で就任する。退任の意向を表明していた会長兼CEOのティム・バックリー氏は同日付で役職から退く。バンガードにとってラムジ氏は創業以来、初めての社外登用のトップとなる。

弁護士としてキャリアを始めたラムジ氏はコンサルティング大手の米マッキンゼー・アンド・カンパニーで資産運用業界を担当。ブラックロックに移籍した後は米国の富裕層向け助言責任者などを経て、ETF・インデックス投資部門のグローバル責任者を担った。

故ジョン・ボーグル氏が1975年に創業したバンガードは翌76年に世界初となる指数連動型ファンドの提供を開始。以降、低コストの指数連動型ファンドを軸に成長を続け、23年末時点の運用資産総額が8兆6000億ドル(約1330兆円)と、ブラックロック(24年3月末時点で10兆4700億ドル)に次ぐ世界第2位の運用会社だ。運用資産の約8割は指数連動型が占める。

世界的な株式相場の回復という追い風もあり、新規資金の流入が続いている。米調査会社モーニングスターによると、バンガードのファンド流入額は23年に1100億ドルを超えた。

課題は米国外事業の立て直しだ。モーニングスターのダニエル・ソティロフ氏は「バンガードは米国以外の市場で苦戦してきた」と指摘する。20年には日本や香港から、23年には中国本土やドイツからの撤退を発表した。ブラックロックが米国外で事業展開を進めるのと好対照だ。

ラムジ氏のCEO就任後も、バンガードは暗号資産(仮想通貨)ビジネスには慎重な姿勢を続けるとみられる。ビットコインの現物で運用するETFが1月に米国で承認されて以降、ブラックロックなどのETFは資産規模を拡大させてきた。

バンガードはビットコインETF事業に乗り出さないだけでなく、バンガードの口座で顧客がビットコインETFを取引できないようにした。ラムジ氏は15日の米投資情報誌バロンズのインタビューで、ビットコインETF投入しないという事業判断を覆さない方針を明らかにした。

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