七十七銀行は10日、シンガポールに同行初となる海外子会社を全額出資で新設すると発表した。2025年1月に設置し、同年4月に開業する予定だ。地元企業の東南アジア諸国連合(ASEAN)への進出を後押しする体制を強化する。

決算発表で記者会見する七十七銀行の小林英文頭取(10日、仙台市)

資本金の額や会社名、社長人事は未定で、24年秋までに決める。シンガポールに16年に設けた駐在員事務所を現地法人に置き換え、現在の数人体制から人員を増やす。東北と地元企業をつなげるハブ機能を目指す。

駐在員事務所では海外のビジネス情報集約を中心に活動していた。今後は海外で事業を展開する企業の支援に力を入れる。事務所を子会社にすることで、コンサルティング業で取引先から対価を得られるようになる。多元的な収益源を確保する方策の一つにする。

「地元企業にとっては海外輸出は重要なテーマだ。シンガポールは比較的規制が緩い。進出の手伝いをしたい」。ASEAN市場に事業を展開する意義について、小林英文頭取は10日の記者会見でこう強調した。

七十七銀の取引先はASEANに拠点を持つ比率が大きい。取引先は24年3月末時点で海外に508カ所の拠点を持っており、このうちベトナムやタイなどASEAN域内に189の拠点がある。これは全拠点の37%にあたり、台湾を除く中国の170拠点(33%)を上回る。

外務省の「海外進出日系企業拠点数調査」によると、22年10月末時点で全国の日系企業がASEANに拠点を出している割合は16%となっており、同行の取引先はASEAN比率が高くなっている。

一方、中国での事業拡大には慎重だ。上海の駐在員事務所は05年から構えているものの「上海を子会社にする予定はない。政治的なリスクや人件費の高騰などで中国にこれから新工場を建てたいという声は少ない」(同行関係者)としている。

海外展開を推し進める背景には東北の人口流出の問題もある。2021年の出生率は全国平均が1.30で、宮城県は1.15と東京都に次いで低い。

小林頭取は記者会見で「東北の人口は減少するが、製造業は外に売ることで付加価値を増やせる」と語った。

海外子会社の新設の他に、七十七銀行は事務など企業の間接業務を担う「ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)」サービスを提供する業務受託の子会社を24年10月に設立することも発表した。

障害者や高齢者を雇用し、活躍機会を創出する。資本金は1億円で、出資比率は100%の予定だ。

これらの新規事業の打ち出しは同行が21年に作成した長期経営計画「Vision 2030」の取り組みの一環だ。10の新規事業の立ち上げを掲げており、今回の2件で全プロジェクトが出そろった。

今後は10件に限らず、さらに事業を増やすことも視野に入れる。それぞれの子会社の採算が見込めるようになれば「いずれは企業グループをホールディングス化させたい」(同行幹部)との思惑もある。

七十七銀は連結決算で21年3月期から3年連続増益を達成した。24年3月期の最終利益は298億円と過去最高を更新した。

(今井秀和)

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