4月13日で開幕まで1年となる大阪・関西万博。開幕に向けて海外パビリオンの工事も始まっていますが、肝心の主催国である日本の準備状況はどうなのか。55年ぶりの万博成功のカギを握る2人のプロデューサーを直撃しました。

批判の声もある『大屋根リング』藤本壮介氏が語る“意味”

 万博の会場デザインプロデューサー・藤本壮介さん。大屋根リングの設計・監修やパビリオンの配置などを決めました。世界がつながっていることを一目で分かるようにしたい、それを象徴するのが『大屋根リング』だといいます。

 (藤本壮介さん)「世界の最先端の大規模木造と日本の1000年以上の伝統ある木造を組み合わせて発信することができたら、万博で世界に対して大きなアピールになるのではないかと」

 ただ、批判も相次いでいます。リング単体でかかる建設費は約344億円と想定されていて、会場全体の建設費が膨れ上がる中で果たして必要なのかという声があるほか、パビリオンの建設に携わる関係者からは「リングがあることで建築資材の搬入に制約が多い」といった声もあがっています。

 藤本さんは、物価の上昇を考慮すると会場全体の建設費は適切な見積もりになっている、といいます。そしてリングはさまざまな役割があると話します。

 (藤本壮介さん)「展望台の機能・回遊路の機能・イベント広場の機能、いろんな機能を集約させることでこのリングができあがっています」

 また、建設関係者からの声に対しては…。

 (藤本壮介さん)「僕も建築の専門家ですので、会期が始まっても会場の中に搬入をする必要があるので、バック動線もしっかり取っているんですね。(大工区を担当する)各ゼネコンと常に情報のやり取りをしていて、リングが搬入の邪魔にならないようにしっかりやっています」

 そして検討中としながらもリングの活用方法の一つとしてこんなことも。

 (藤本壮介さん)「このリングの上あるいは下で盆踊りをやりたいなと思っているんですね。1周2kmずらっと世界中の人と老若男女でぐるぐるぐるぐるっと回る。なるべく切り詰めて実用性だけで社会をつくっていこうとした結果が、たぶんこの失われた30年、今の日本なんじゃないかなと思っているので、『ワクワク』『そこにいることの楽しさ』を上回る実用性というのはあまり僕はないと思うんですね」

“50年後の社会を体験できる展示”を準備する石黒浩教授

 今後、世界はどうなるのか、未来の一つの姿を表現したパビリオンの準備も進んでいます。

 「万博では科学技術の進化により、未来の人間の姿や社会の変化を具体的に体感してもらい、来場者に未来に向けた夢を持ってもらいたいです」

 こう話すのは日本のロボット工学の第一人者である大阪大学の石黒浩教授が開発中の最新のアンドロイド『ジェミノイドHI-6』です。

 石黒教授は万博で「いのちを拡げる」をテーマにしたパビリオンをプロデュースしています。アンドロイドと暮らすのが当たり前となっているであろう50年後の社会などを体験できる展示を予定しています。

 (大阪大学 石黒浩教授)「万博は未来を考える非常に大きなチャンスなんですよね。万博の先に来る、例えば30年40年50年後の未来をみんなでイメージを共有しながら、未来をつくっていく。それが万博の一番大きな役割だと思うんですよね」

 石黒教授はこれまで、介護の現場などを視察して課題を聞き取り、未来のあるべき姿を考え続けてきました。

 (施設運営法人の理事長)「自分たちのお昼ご飯を一緒につくっています。今日はハンバーガーです。現実的にこういう時間をとるって努力しないとなかなか。どちらかというとおむつを交換したりトイレの介助をしたり、そっちの方で精いっぱいになってしまう」
 (石黒教授)「対話ロボは入れていないんですか?」
 (施設運営法人の理事長)「まだ入れていないですね」

 こうした研究を基にしてつくるパビリオンの内容には多くの人が関わっています。50年後の世界にはどんな技術があってどんな世の中になるのか、協賛企業などと2年にわたって議論を交わし、それぞれが出したアイデアをパビリオンの製作に落とし込みます。

 (大阪大学 石黒浩教授)「ここまで内容を知ったら言いたくてしょうがなくなるでしょ。酒飲んだ時に絶対内容を言いたくなると思うんですけど、言わないようにお願いします。残り1年よろしくお願いします」

「未来は自分たちで責任持ってつくっていかないといけない」

 今年2月下旬、石黒教授は東京にいました。会議室に運び込まれるのは万博で使われる3体のアンドロイドです。6か月間、万博会場で動かすため耐久性を高めました。人間の表情や動きをどのアンドロイドでも同じように再現することに苦労したと話します。

 (アンドロイドを製作したエーラボ 廣嶋まいさん)「3体を全く同じ動作にしなければいけないのが初めての取り組みで。例えば口角の引き具合は、同じ信号を送っても同じように動作するかはやってみないとわからないので、3体を並べて調整したのが大変でした」

 (大阪大学 石黒浩教授)「コンピューターのプログラムで動かせばめちゃめちゃなめらかに動きます。今度は万博のシナリオに合わせてみんなが感動できるような動きをつくれたらと思います」

 半世紀ぶりに大阪で開催される万博。石黒教授は急速に技術革新が進む今だからこそ万博の意義は大きいと強調します。

 (大阪大学 石黒浩教授)「50年前はまだ科学技術で豊かになりたいという時代で、人間が将来どうなるのかとか、環境がどうなるか、世界がどうなるかはあまり考えてこなかったわけですよね。それが50年経って、遺伝子で人間を設計する技術を手に入れたり、地球の環境を守ることも破壊することもできるような強大なエネルギーの技術を手に入れる。未来は神様に聞いてつくるものではなくて、自分たちが責任持ってつくっていかないといけないわけであります。そういった機会を与えてくれるのが万博だと思っております」

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