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<人生を形づくっていた「定番の失敗パターン」を変えるために知っておきたい、「適切なコーピング」と「不適切なコーピング」について>
家族、友人、恋人、同僚...。相手が変わっても人間関係で同じトラブルが繰り返されるのはなぜなのか。うまくいかない理由は子ども時代のトラウマによって生じた「パターン」にあった...。
自分にすでにある力を見つけ、自分で自分を育てるワークによって人生を変えられる。全米で80万部突破の大ベストセラー『ホリスティック心理学 自分の行き詰まりパターンを特定し、トラウマを解消して人生を変える「ワーク」』(パンローリング)の第3章「トラウマの新理論とは?」より一部抜粋。
◇ ◇ ◇1984年、ストレスと感情を研究していた2人の革新的な心理学者──カリフォルニア大学バークレー校の教授だった故リチャード・ラザルスと、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の教授だったスーザン・フォークマン──が「コーピング理論」を提唱した。
2人はコーピングを「その人の資源(リソース)を超える外的・内的な要求に対処するための、絶えず変化する認知行動上の努力」と定義していた。
つまり、コーピングとは、ストレスが生み出す心身の強い不安に対処するために学習された戦略のことだ。
ラザルスとフォークマンは、「適切なコーピング」と「不適切なコーピング」について説明している。適切なコーピングとは、真正面から問題に取り組む、ネガティブな思考を変えるなど、安心感を取り戻すために取る行動をいう。
ここでの鍵になるのは、積極的になること。適切なコーピングには努力と、意識的に不快感を認識することが求められるのだ。ただし、適切なコーピングは、手本を示されたり、使い方を教わったりしない限り、なかなか使えないだろう。
不適切なコーピングは、たいてい親を通して学習される。不適切なコーピングを行えば、不快感から一瞬気をまぎらわしたり救われたりするし(たとえば飲酒によって。私が姉の結婚式でそうだったように)、感情的な反応を避けたりもできる(解離しているときの私がそうだったように)。
でも、こうして苦痛をやわらげているうちに、本当の自分からさらに遠ざかってしまう。人がある環境にどう対処するかは、その環境よりむしろ、ストレスに対してどんなコーピングを条件づけされているかに関係している。
たとえば、2人の人間(ソニアとミシェル)がストレスフルで成果主義のまったく同じ仕事をしているとしよう。
ソニアは、ストレスを適切なコーピングで解消している。定期的にジムに通ってストレスを発散したり、親友に電話して支えてもらったりしているのだ。ところが、同じストレスと闘っているミシェルは、お酒で意識をもうろうとさせ、現実逃避をしている。
その瞬間は気分がよくなっても、翌朝目覚めたときには頭がぼんやりして、うつろでみじめな気分になっている。ストレスも恥の意識もいっそうふくらんで、不適切なコーピングによる悪循環が続いてしまう。
私はクリニックで、不適切なコーピングを数多く目にしてきた。最もよく見かけるのは、次のようなものだ。
・他人の機嫌を取ること 相手の要求を満たせば、ストレスは(一時的に)消える。
・怒り/激怒 感情を他人にぶちまければ、ストレスは解消される。
・解離 ストレスフルな出来事の間は、「身体を離れて」いるから、トラウマを「体験」しなくてすむ。性的な面では、あまり興味のない相手とセックスしてしまうことも、解離の一つに数えられる。あるいは、パートナーを性的に満足させるために尽くして、自分自身の喜びには気づかない、注意を向けていないというケースもある。
こうしたコーピングを行うと、過去のトラウマを繰り返したり追体験したりせずにすみ、目の前の苦しみを先送りできる。ただし、自分の身体的、感情的、精神的な望みや欲求を十分に満たす助けにはならない。
欲求が満たされない状態が続くと、苦しみや分離は悪化する。自分を守るつもりが、自分への裏切りにつながっていくのだ。
私たちはこのループに、簡単にはまり込んでしまう。未解決のトラウマに不適切なコーピングを行い、自分を否定し続ける―という悪循環のせいで、苦しみが心身で生き続け、それが原因で病気になることもある。
変化のポテンシャルを高める2つのステップ
私たちはみんな、未解決のトラウマを抱えている。心に何が刻み込まれるかを決めるのは、出来事そのものの過酷さよりも、それに対する自分の反応だ。打たれ強さ(レジリエンス)は、条件づけを通して学習される。
幼い頃に親から手本を示してもらえないと、一生学べないかもしれない。ただし、トラウマを解決する「ワーク」に取り組めば、レジリエンスを高められる。それどころか、その経験が大きな変革のきっかけになるだろう。
「セルフ・ヒーラーズ」のコミュニティでトラウマに関する情報をシェアすると、多くのフィードバックが届く。みんなから「誰もがトラウマを抱えている、という意味ですか?」「どうすればわが子にトラウマを与えずにすみますか?」などと質問される。では、答えを言おう。
トラウマは人生の一部だから、避けられない。あなたがこの世で最初に経験したこと― 誕生―だってトラウマだった。もしかしたら、あなただけでなく母親にとっても。とはいえ、トラウマを経験したからといって、人生で苦労や病気に見舞われる、と運命づけられているわけではない。
幼い頃の人生を形づくっていたパターンをわざわざ繰り返さなくてもいいのだ。「ワーク」に取り組めば、私たちは変われる。前に進めるし、癒やされる。
トラウマは普遍的なものかもしれないけれど、個人的なものでもあり、その人全体──神経系、免疫反応、生理機能のあらゆる領域── に影響を及ぼしている。一人一人違った形で。
心身を癒やす第一歩は、自分が何に対処しているかを知ること。そう、未解決のトラウマを明らかにすることだ。
第二のステップは、そのトラウマの長期的な影響と、自分が学習したコーピングが、いかに自分を行き詰まらせているのかを理解することだ。
ニコール・ルペラ(Dr. Nicole LePera)
心理学博士。ホリスティック心理学の第一人者。ペンシルベニア州フィラデルフィアで育ち、コーネル大学とニュースクール・フォー・ソーシャル・リサーチ(ニュースクール大学の前身)で臨床心理学のトレーニングを受ける。臨床心理学者としてクリニックを開業し、心・身体・魂の健康に総合的に取り組む「ホリスティック心理学」を生み出す。
『ホリスティック心理学 自分の行き詰まりパターンを特定し、トラウマを解消して人生を変える「ワーク」』
ニコール・ルペラ[著]長澤あかね[訳]
パンローリング[刊]
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