「もしトラ」もリスクの1つ──空港で遊説に訪れるトランプ前大統領の到着を待つ支持者たち(4月10日、アトランタ) REUTERS/Alyssa Pointer
<投資を分散してリスクを減らすポートフォリオ理論からいっても、「一つの国の市民権や居住権しか持たないのはナンセンス」と、世界的な投資・移民コンサルタントは言う>
アメリカの富裕層の間で、さまざまな将来不安から身を守るために、外国で第二市民権を取得しようとする傾向が強まっているという。
世界的な投資・移民コンサルティング企業のヘンリー・アンド・パートナーズは米CNBCに対して、富裕層の顧客の多くが、自国から逃げる必要を感じた場合に備えて「パスポート・ポートフォリオ」を構築しようとしていると述べた。同社の個人顧客グループ責任者であるドミニク・ボレックによれば、彼らが第二市民権の取得を目指す理由は「将来の不確実性に対する防御策」だ。
ボレックはCNBCに対して、4月10日朝に発表したリポートの中で「アメリカは今も素晴らしい国であり、アメリカのパスポートには今も大きな価値がある」と前置きしつつこう続けた。「だがもし私が裕福だったら、万が一の備えが欲しいと考えただろう」
「裕福な個人は、分散投資(ポートフォリオ)の重要性をよく理解している」と彼は言う。「分散させることができるのに、一つの国の市民権と居住権しか持たないのはむしろナンセンスだ」
ヘンリー・アンド・パートナーズでは、事前のビザ申請なしで渡航できる国・地域の数に基づいて世界のパスポートをランク付けする「パスポート・インデックス」を作成しており、世界189カ国・地域にビザ申請なしでアクセスできるアメリカのパスポートは現在6位(タイ)にランク付けされている。ランキング1位のフランス、ドイツ、イタリア、日本、シンガポールとスペインのパスポートを所持している人は、事前のビザ申請なしに194カ国・地域への渡航が可能だ。
「海外にはもっといい場所がある」
第二市民権を求める動きが広がっているのは、アメリカの富裕層だけではない。海外移住専門誌「インターナショナル・リビング」編集主幹のジェニファー・スティーブンズは3月に米スクリップス・ニュースに対して、米国外で暮らすため必要なパスポートや居住許可証などの取得を希望するアメリカ人は所得にかかわらずますます増えていると語った。
「あらゆる職業・社会的地位の人々が、アメリカの将来を懸念している」とスティーブンズは指摘し、さらにこう続けた。「そのため彼らは自分たちにどのような選択肢があるのかを調べ、我々の海外移住雑誌の読者なら以前から知っていたことに気づきつつある。海外には、生活費がもっと安く、一年を通して天候が良く、今よりもう少しゆったりしたペースの暮らしができる素晴らしい場所があるということだ」
米モンマス大学世論調査研究所が3月に公表した調査結果によれば、調査に回答したアメリカ人902人のうち3分の1以上が別の国で暮らしたいと回答した。2019年にギャラップ社が公表した世論調査結果では、2017年と2018年に調査に回答したアメリカ人のうち別の国への永住を望んでいたのは全体の16%という結果が示されており、そこから大幅に増加したことになる。
同研究所のパトリック・マレー所長はかつて本誌に対して、国外で暮らすことを望むアメリカ人の数がいつから急増したのか正確には分からないが、「過去数年間の激しい党派対立が、移住願望の高まりに大きな影響を及ぼしたと確信している」と述べた。
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