広島市安芸区瀬野にある「みどり坂団地」の「スカイレール」の運行が、住民たちに惜しまれつつ四半世紀の歴史に幕を下ろしました。 

【五十川記者】
「郊外の住宅街の結構な傾斜のあるところなんですが、モノレールのようなロープウエーのような不思議な車両が駆け上がっていきます。日本で唯一の存在なんですが、見納めです」

高台に広がる人口7000人あまりの「みどり坂団地」とふもとのJR瀬野駅前とを結んできた「スカイレール」。
1998年の開業から25年8カ月でのべ957万7000人の乗客を運んできました。

【通学で利用・高校3年生は】
「悲しいです。もう乗れないのが。坂なのでみどり坂がこれを使ったら簡単に行き来できるし、高くて楽しいんで」

【日頃通勤で利用・住民は】
「みどり坂のシンボルマークだったんで、なんかちょっと涙出そう。よく頑張ってくれたなと思います」

スカイレールはモノレールとロープウエーの技術を組み合わせた世界的に例がない交通システム。
高台との160mの高低差や雨風をものともしない安定性が売りでしたが…近年は赤字が続き、さらに他の地域に「スカイレール」が普及しなかったことで、今後も設備の更新費用がかさみ、大幅な運賃上昇が見込まれることから廃止が決まりました。
30日朝、地元の住民以外にも多くの鉄道ファンも駆け付けました。

【愛知県から】
「日本でここしかないと聞いたので、乗れるうちに乗っておかないといけないなと思って。突然急発進するところとか、突然ワイヤーに切り替わるところとか、ガクンと来るんだなとか面白かったです」

そして午後0時6分、団地側の終着駅「みどり中央駅」に最後の車両が滑り込んできました。

【最後の乗客・東広島市から】
「こんなにいい景色だと思っていなくてもっと早く知ってもっと一杯乗っておきたかった。誇りを持てるようなものだなと思いました。ありがとうございました」

駅に集まった住民やファンに向け運営会社が、「スカイレール」の終了を宣言しました。

【スカイレールサービス・村松明彦社長】
「ただいまを持ちましてスカイレールのすべての運行を終了致します。本当に皆様ありがとうございました」

すでに団地の中では1カ月前から「スカイレール」に代わる電気バスが走っていて、運賃は30円上がるものの、停留所と運行本数は大幅に増えます。

【スカイレールサービス・村松明彦社長】
「結果として(スカイレールが)唯一の交通機関という形になりました。こういったものが走っていたんだよと自慢ができるような町に今後もしていきたい」

レール部分と3つの駅舎は数年がかりで解体される予定ですが、運営会社はスカイレールのゴンドラ車両などを広島市交通科学館で展示することを市側に要望しているということで、その雄姿を再び見ることができるかもしれません。

<スタジオ>
惜しまれながらもひとつの時代が終りを迎えましたね。

【コメンテーター:広島大学大学院・匹田篤准教授】
「坂の上のニュータウンへの意欲的な25年前の提案だったが、単に普及しなかったのが一番の敗因と言える。一方でこのニュータウンというのは、30年ぐらいたった時に購入者の年齢が上がって60代、70代と高齢化する。若返りとの両面で、ベビーカーにも車椅子にもより優しい交通が必要になる。バスを超えるような提案が引き続きできたらいいと思う」

多くの人に愛されたスカイレール、28日は過去最高の1日4206人が乗車したということです 。

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