老後の生活の支えになる「年金」。

いま日本では、国民の3分の1、約4000万人が年金を受け取って暮らしています。

■「年金受給額」は「生活費」を下回っている

現在、65歳以上の夫婦が2人で生活していくには、平均で月々約28万円ほどかかり、一人暮らしでは、月々約15万8000円の生活費が必要となっています。
(※総務省 家計調査年報(令和5年)より)

そんな中、年金受給額の平均は、自営業やフリーランスが加入する国民年金で月5万6000円、会社員が加入する厚生年金で月14万4000円となっていて、いずれにしても月々の年金受給額が毎月の生活費を下回るおっカネ~事態に陥っているんです。
(※厚生労働省より)


■年金暮らしの高齢者の生活を拝見

12月12日、年内最後の年金支給日前日。

年金暮らしの高齢者はどのような生活を送っているのか。「newsランナー」番組スタッフが向かったのは、大阪市にあるNPO法人「ここから100」。

中で行われていたのは「麻雀」。一体どのような施設なのか、代表の金山さんにお話を伺いました。

【「ここから100」代表 金山佳子さん】「ここはアクティブシニアがいつまでも元気で過ごせる居場所となっています。元気な高齢者がいつまでも地元、地域で過ごせるように、認知症予防のカフェとか麻雀教室、100歳体操とか行っています」

ここは元気な70代・80代の高齢者が集まるコミュニティー。孤立しがちな高齢者を手助けしたいと設立され、居場所を提供しています。

みなさんはどれぐらい年金をもらっているのでしょうか?

【参加者】「微々たるものです。月5万ですから」「月10万」「月6万」

実際に聞いてみると、思ったより恐ろしい年金額。それでもこのコミュニティーの存在が人生をより豊かにしてくれているそうです。

【参加者】「こういう集まり以外は家にこもっていますからね。テレビ見たりね」
【参加者】「老人に優しく、楽しい。ありがたいと思っています」

毎週木曜日に行われているのが健康麻雀。1回の参加費はなんと1000円。おいしそうなスイーツも付いてくるんです。

「newsランナー」番組スタッフも麻雀に参加させていただき、年金生活について深堀りしていきます。

麻雀が楽しみで、頻繁に通っている77歳の宮川さんは、毎月どれぐらいの年金を受け取っているのでしょうか?

【宮川さん】「そんな多くないよ 満額かけてないから」
【番組スタッフ】「ロン、8000点です」
【宮川さん】「どさくさにまぎれて。(年金は)月6万5000円ぐらい」

宮川さんの現在の収入は、年金で月に約6万5000円。清掃のアルバイトが約4万円。1カ月10万円ほどで生活を送っています。

【番組スタッフ】「生活はどうですか?」
【宮川さん】「厳しいっていうたら厳しいけど、その中でいろいろなことをして(遊ぶ)。そんなに(値段が)高いところじゃないから、それでも楽しいですよ」

宮川さんは麻雀の他にも、さまざまなイベントへ積極的に参加。年金生活の中にも楽しみを見出しています。

■年内最後の年金支給日を密着取材

麻雀の翌日、12月13日。年内最後の年金支給日です。

【関西テレビ 秦令欧奈アナウンサー】「きょうは年金で生活する宮川さんに密着していこうと思います」
【宮川さん】「郵便局が近いから、(年金を)下ろしに行くんですよ」

宮川さん、うれしそうに郵便局から出てきました。

【宮川さん】「(2カ月分)13万全部下ろしてきました。支払いとか、家賃払わなあかんし」
【関西テレビ 秦令欧奈アナウンサー】「毎回全部下ろすんですか?」
【宮川さん】「使わなかったら1万円貯金。1万円しかできないけどね。でもすぐ下ろしちゃうよ」

そんな宮川さん、毎月の支出の内訳は、家賃・光熱費・食費がほとんどを占め、余った分は貯金に回しているということです。

【関西テレビ 秦令欧奈アナウンサー】「年金の支給日って、どういった気持ちですか?」
【宮川さん】「ワクワクしますよ、少ないけど。でも楽しいですよ。みんなでご飯食べに行くとか。きのうは麻雀やってきたし。きょうは6時からみんなで集まって、誕生日会」

誕生日会までの時間、宮川さんのお宅について行かせてもらいました。ご自宅に向かう前にお昼ごはんの買い出し。知り合いが営むお店でお好み焼きを2枚購入しました。

【宮川さん】「豚とイカと1枚ずつ」

年金支給日当日だからといって豪遊はせず、堅実にお金を使う宮川さん。一人暮らしをしている市営住宅にお邪魔します。

【関西テレビ 秦令欧奈アナウンサー】「実家に来たという感じがします。家賃はどれぐらいですか?」
【宮川さん】「3万円でおつりがくる。安いでしょ」

大阪で年金暮らしをしている77歳の宮川さん。少ない年金で厳しい生活を送りながらも、楽しく毎日を過ごしています。そんな宮川さん、実はこれまで波乱万丈な人生を歩んできました。

20 歳のときに北海道で結婚。3人の子宝に恵まれましたが27歳で離婚。その5年後、子どもを連れ、大阪に移り住みました。

20年以上もの間、スナックを切り盛りしましたが、常連客にだまされ、2000万円もの借金を背負うことに。50代半ばで店を閉めることとなりました。それでもパートを3つ掛け持ちし、努力の結果、2000万円もの借金を5年で返済したのです。

【宮川さん】「みんな『あんなに苦労していたのに、そんなにニコニコできんの?』って。周りから見たら全然そういうふう(苦労しているよう)に見えないんやって」

数々の苦難を乗り越えたからこそ、日常のささいな出来事にも幸せを感じられるのだそうです。

■「お金がなかったらないなりの生活をする」

【関西テレビ 秦令欧奈アナウンサー】「今、一番楽しみなことはあるんですか?」
【宮川さん】「みんな(友達)と会って、会ったらみんな元気でしょ。きのうみたいに麻雀したり、フラダンス行ったり」

中でも楽しみにしていることは…

【宮川さん】「(生活は)厳しいけど次の年金が楽しみ。それまで持ちこたえて。友達に『きょうお金ないねん』って言ったら食べさせてくれる。(お金が)なかったらないなりの生活をする」

最後に今後の夢を教えてくれました。

【宮川さん】「お金貯めて旅行に行きたい。父親と母親のお墓が北海道にある。だから北海道に行きたい。でも寒いからイヤやな。春にしよかな」

【関西テレビ 秦令欧奈アナウンサー】「もっともっと僕も元気に生きなきゃいけないなと感じました」

【宮川さん】「今度お好み焼き食べに行こ。電話するね」

■「友達がいる」ことも老後の生活の豊かさに関わる

多いとはいえない年金をやりくりしながら楽しく毎日を過ごす女性の姿から、老後について考えさせられました。

番組コメンテーターでジャーナリストの浜田敬子さんは、高齢者の中での格差の問題や、生活の質を左右するポイントについて次のように話しました。

【ジャーナリスト 浜田敬子さん】「『年金は厳しい』という生活ぶりを見ることが多いんですけど、一方で結構悠々自適な高齢者の方も増えてきていて、かなり高齢者の中でも格差が広がっていると思っています」

 一つはやっぱり年金の種類。国民年金か、厚生年金かでもらえる額が違いましたよね。特に女性の方は非正規で働いてる方が多いので、単身の女性が一番貧困率が高いと言われていて、これが非常に問題になっています。

 あと持ち家かどうか。家賃を払わなきゃいけないと大きいですよね。あとやはり元気かどうか。元気だったら週に何度か働けますよね。やっぱり働くと収入がもらえる。

 もう一つはお友達がいるかどうか、つながりがあるかどうか。これが非常に老後の生活を豊かにするかどうかを決めるのかなと思って見ていました」

【関西テレビ 秦令欧奈アナウンサー】「取材させてもらった宮川さんにお話を聞くと、『ほとんど家に居る時間がない』とおっしゃっていて、街中を歩いているとしょっちゅう知り合いの方がいるんです。することがいっぱいあって、友達がいるというのは、やっぱりすごく幸せなことだと感じました」

(関西テレビ「newsランナー」 2024年12月20日放送)

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