日銀は政策金利を据え置き、利上げを見送る方針を決定した。19日の円相場は一時1ドル157円台まで下落した。植田総裁は賃金と物価の好循環が重要との認識を示し、慎重な姿勢を維持している。利上げには持続可能な賃上げが必要で、消費回復が課題とみられる。
植田総裁は慎重な金融政策を示唆
日銀が追加の利上げを見送り、円安が加速した。
この記事の画像(11枚)日銀は金融政策を決める会合で、政策金利を現在の「0.25%程度」で据え置くことを決定した。賃金や物価の動向を、引き続き見極めていくことになる。
植田日銀総裁:
賃金と物価の好循環の強まりを確認するという視点から、今後の賃金動向についてもう少し情報が必要と考えました。
植田総裁は、トランプ次期大統領の経済政策の不確実性が大きいことも踏まえて決めたと説明し、今後の金融政策について、「様々なデータを丹念に点検した上で判断していく」考えを示した。
外国為替市場の円相場では、日銀の利上げの判断時期が遅くなるとの見方から、日米の金利差が意識されて、円売りが強まった。
一時1ドル157台まで値下がりし、約5カ月ぶりの円安水準をつけている。
賃上げ・消費回復目指すも限界消費性向は道半ば
「Live News α」では、市場の分析や企業経営に詳しい経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
日銀が追加利上げを見送りましたが、馬渕さんは、どう受け止めていますか。
経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
日本の経済状況がまだ弱い中で、当然の判断かなと思います。今後、利上げに向けては、「もう一段階」の変化が必要です。
具体的には「持続可能な賃金の上昇の情報」がなければ、利上げは難しいようです。要するに、2025年の春闘を確認したいのだと思います。
加えて、2025年1月にはアメリカでトランプ新大統領の就任を控えています。政策に不透明感がありますので、利上げには慎重にならざるを得ません。
堤キャスター:
ポイントになるのは、やはり賃上げと、その先にある消費の回復のようですね。
経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
そうですね。所得が増加した時に、それらがどれだけ消費に回されたかを示す割合のことを「限界消費性向」と言います。
「限界消費性向」について、日本は0.2程度と予測されているのですが、定額減税を行った今でさえ0.2どころか、0.1程度のとても低い水準になる可能性が出てきています。つまり、限られた所得の増加では、国民は消費に回さないことがはっきり示された訳です。
物価と賃金は少し上昇しているかもしれませんが、「消費への好循環」は、まだまだだということです。
多角的レビュー公表で非伝統的政策再評価を
堤キャスター:
金融の舵取りを担う日銀にとっては、悩ましい状態が続いているということですね。
経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
日銀はかねてより、予告をしていた通りに「金融政策の多角的レビュー」を公表しました。これは、金利のない状態が続いた中で、日銀が行った非伝統的な金融政策です。
例えば、マイナス金利政策や、長期金利をピン止めする、イールドカーブコントロールなど、こういった政策の効果と副作用についての評価・分析を行い、さらに将来の政策運営に役立てていく目的で発表されています。
この中で、非伝統的な金融政策に関して、再び踏み切る可能性を残しているようなメッセージになっているんです。
アメリカはこの先利下げが限定的で、金利が上昇しやすくなり、世界的にも波乱が起きやすい状況があります。そうした中で日本においては、国債の買い入れについては、再び増やすことが選択肢としてあると思われます。
堤キャスター:
賃上げと消費の好循環が待たれます。
(「Live News α」12月19日放送分より)
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