工場に隣接したYONEXの最新研究施設で、選手の動作解析や試作品開発を24時間以内に可能にする技術を導入した。四大大会対応コートや最新機器が設置され、育成の場としても活用される。製造と消費を同時に行う「同時性」が、革新を促進すると専門家は指摘している。

YONEX最先端施設の最新技術…元世界1位ヒューイット選手ら視察

スポーツ用品大手・YONEXの最新の研究施設では、隣接した工場と、データの“高速ラリー”が繰り広げられていた。

プロテニスプレーヤーの白熱したラリー
この記事の画像(20枚)

白熱したラリーをしているプロテニスプレーヤーだが、試合をしているわけではない。

ヨネックス 新潟工場 研究開発室・末竹純也さん:
「Yonex Performance Innovation Center」は、ヒト・モノ・打球、そのすべてを計測していく、そして、テニスをより深く科学していけるような施設になっております。

新潟・長岡市で2024年7月から運用を開始したのは、約45億円を投資して作られた、スポーツメーカーYONEXの最新研究施設「Yonex Performance Innovation Center」だ。

屋外には、世界で唯一となる、テニスの4大大会全てを想定したコートがある。さらに屋内には、最新機器を取り入れたトレーニングルームなどを整備している。

画面がトレーニングマシーンと連携

大久保夏織記者:
こちらのバイクのトレーニングマシンなんですが、画面と連動していて、上り坂になってくると、ちょっと負荷がかかってくるんです。重たい……。

大久保夏織記者:
さらに、こちら動作解析室では、360度センサーに囲まれていて、動作解析はもちろん、下にもセンサーが設置されていて、体重移動なども計測できます。

この日、元世界ランキング1位のヒューイット選手と、世界ランキング最高27位のエチェベリ選手が施設を視察した。

体にマーカーを取り付けて、スイングのスピードや角度などを解析するモーションキャプチャーや、別のコートに設置されているのは、民間企業で初めて常設で導入された世界大会などで使用される測定機器「ホークアイ」だ。

重さのバランスが違うラケット

「ホークアイ」と、独自開発したセンサーを使った、ショット解析も体験した。

ヨネックス 新潟工場 技術開発第一部・壹岐駿介さん:
(ヒューイット選手は) 普段使用しているラケットに対して、ヘッドライトのものを使用した際には、ボール速度が低下して、スピン量も低下している。この結果からヒューイット選手は、現在使用しているラケットの方が適していると推測できます。

元世界ランキング1位・ヒューイット選手:
プロテニスプレーヤーは、一度コートに立つとフィーリングで乗り切ることが多いが、技術の向上などを(この施設で)体感することで、コート上で使っている道具を信じることもできるようになる。

実は、この施設が建てられたのは、製造工場の真横だった。解析したデータを活用し、最短24時間以内で試作品の製作が可能になる。スピーディーなアイデアの具現化で、新たな製品開発につなげる狙いだ。

ジュニア育成と夢の支援…未来のプロ選手を支える場に

施設には、他の役割もあった。

エチェベリ選手の練習を真剣な表情で見つめるのは、プロテニスプレーヤーを目指す子どもたちだ。今後は、ジュニア選手の育成の場としても広げていく予定だ。

世界ランキング最高27位・エチェベリ選手:
試合の結果がどうであろうと、負けようが、勝とうが関係ありません。重要なのは、毎日やっていることを楽しみ、100%でやることだ。

中学3年生・穐本大空さん:
感動しました。こういうプロの人たちとかと会ってみて、ちゃんと刺激もらって、練習にも生かせたらなと思いました。

中学2年生・林恵凜奈さん:
スイングスピードもすごい速くて、それがずっと安定して入っているのがものすごいなと思って、感動しました。

Q. 将来の夢は――。

中学2年生・林恵凜奈さん:
ウィンブルドンで優勝することです。

YONEXは、全てのプレーヤーが“楽しく”“長く”スポーツを続けるための製品開発が、スポーツメーカーの役割だという。

ヨネックス 新潟工場 研究開発室・末竹純也さん:
挑戦と失敗のスピード感を高めていく。やればやっただけ、動いたら動いた分だけチャンスが生まれると思いますので、工場との連携を活かしながら、新しいイノベーションを生み出せるように取り組んでいきたい。

エチェベリ選手と子供達

失敗は成功の元。科学の力でプレーヤーを支え、未来へとつなげる。

作り手と使い手の学びが広がる「同時性」

「Live News α」では、デロイトトーマツグループ執行役の松江英夫さんに話を聞いた。

海老原優香キャスター:
スピード感を持って、製品を開発するための取り組みですね。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
「失敗のスピードを高める」という言葉が印象的ですね。イノベーションは「失敗からいかに早く学べるか」これがとても重要です。特に、今回の取り組みのポイントは「同時性」です。

「同時性」とは、製造と消費を同じタイミング、同じ場所で行なうことを意味しています。通常はサービス業で一般的ですが、こと製造業、ものづくりでは違った可能性が広がります。

「同時性」によって「作り手と使い手、双方に新たな学びが生まれる」ということが大事なポイントです。

まず、作り手にとっては、同時に色々な情報やアイデアをぶつけながら開発できるので、使い手のニーズに合った製品化のポイントをいち早く学べることです。これが、スピーディーかつ高品質な製品開発のメリットにつながります。

さらに使い手にとっては、物を使ってみることによって、自分自身の動作の改善点につながることの学びがあります。今回のケースでは、プレーヤーが自分の身体の動きがわかり、「競技力向上」につながるというメリットがあります。

ものづくりにおける「同時性」によって、作り手・使い手のそれぞれが新たな学びを得ることで、新しいイノベーションの輪が広がることに期待したいと思います。

海老原キャスター:
研究開発に加えて、トップアスリートや、ジュニア選手育成の場としても活用されることで、競技の普及・発展にもつながっていきそうです。
(「Live News α」12月6日放送分より)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。