米スティール・パートナーズを率いるウォーレン・リヒテンシュタイン氏(2007年6月)=ロイター

【ニューヨーク=竹内弘文】英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は5日までに、米投資会社スティール・パートナーズが日本への投資再開を検討していると報じた。同社は2000年代に日本でアクティビスト(物言う株主)としてブルドックソースへの敵対的買収提案などを展開したが、少なくとも直近10年間は投資実績がなかった。

FTは関係者の話として、スティールを率いるウォーレン・リヒテンシュタイン氏が「日本企業への投資再開を1年以上前から検討し、その一環で東京を複数回訪問した」と伝えた。同氏は11月に実施したFTの取材で日本企業投資に特化したファンドの設立を否定した一方、日本への投資再開そのものについては明言を避けたという。

スティールは00年代、資本効率の低さに注目して日本企業に活発に投資しサッポロホールディングスやブルドックソースに敵対的買収を提案した。村上世彰氏率いた旧村上ファンドと並び、当時盛り上がりをみせた日本の証券市場におけるアクティビズムブームの立役者だった。

投資再開の検討はアクティビストを受け入れる環境の変化を映している可能性がある。

00年代当時は資本効率の向上を意図した株主還元拡充や敵対的買収の提案は企業経営を揺るがすものと受け止められ、提案に対する株主からの賛同は広がりを欠いて失敗に終わった。旧村上ファンドの退場や08年の金融危機、そしてスティールの日本市場撤退を経て日本でアクティビズムは下火になった。

10年代半ば以降から、官主導で状況が変わった。14年に機関投資家の行動規範を定めた「スチュワードシップ・コード」、15年には企業統治の指針「コーポレートガバナンス・コード」が策定された。経済産業省は19年に少数株主の権利保護を意図して「公正なM&Aの在り方に関する指針」を定めた。

機関投資家との対話を上場企業が前向きに受け入れる素地ができるにつれ、日本のアクティビズムは再び盛り上がりをみせている。証券代行大手の三菱UFJ信託銀行によると、24年は6月の株主総会シーズンで124件の株主提案を機関投資家などが出した。18年対比で4倍強に膨らんだ。

スティールと同時期に活躍した別のアクティビストも、再び活発に動いている。00年代初頭に日本企業に対するMBO(経営陣が参加する買収)を提案するも軒並み失敗に終わった米ダルトン・インベストメンツは19年から再び日本企業との対話を始めている。戸田建設などに対するキャンペーンを実施した。

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