【ニューヨーク=斉藤雄太】米連邦預金保険公社(FDIC)は26日、経営難に陥っていた米地銀のリパブリック・ファースト・バンクが経営破綻し、公的管理下に置いたと発表した。同業のフルトン・バンクがリパブリック・ファーストの全預金を引き継ぎ、資産を買収することも発表した。
リパブリック・ファーストは「リパブリック・バンク」の名称で米東部のニュージャージー、ペンシルベニア、ニューヨークの各州に計32支店を構える。これらは27日以降にフルトン・バンクの支店として営業を再開する。
FDICによると、リパブリック・バンクの1月末時点の総資産は60億ドル(約9500億円)、預金総額は40億ドルだった。米連邦準備理事会(FRB)の統計によると、資産規模は2023年末時点で全米211位だった。買い手のフルトン・バンクは資産274億ドルで69位だ。
フルトン・バンクはペンシルベニア州ランカスターが本社で、米東部の州を中心に200以上の支店を構える。銀行持ち株会社フルトン・ファイナンシャル・コーポレーションのカート・マイヤーズ最高経営責任者(CEO)は声明で「今回の買収で我々の(営業)地域でのプレゼンスは倍増する」と述べた。
FDICは今回の破綻処理に伴い、預金保険基金に6億6700万ドルの損失が生じるとの試算を示した。将来的に銀行への負担金を課す可能性がある。
米地銀をめぐっては23年3月のシリコンバレーバンク(SVB)の破綻を契機に信用不安が広がり、シグネチャー・バンクやファースト・リパブリック・バンク(FRC)が相次ぎ破綻した。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、リパブリック・ファーストは昨年破綻した地銀と同様に金利上昇による保有債券の含み損が大きく、預金保険の対象外の大口預金の比率も高かったという。昨年の段階で経営に行き詰まり、身売りを含む経営再建策を模索していた。昨年8月にはナスダックを上場廃止になった。
SVBなどの破綻行は資産規模で全米10〜30位以内に入る比較的大きな地銀だった。今回のリパブリック・ファーストは相対的に規模が小さく、銀行システム全体に与える影響は限定的とみられる。
ただ今年1月にはニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)の赤字転落と株価急落が発生し、3月に投資家連合が救済的な資本増強に動いた。NYCBと同じように商業用不動産向け融資の焦げ付きリスクが大きい地銀への警戒感はくすぶっている。
米国ではインフレが高止まりし、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測は逃げ水のように遠のいている。高金利環境が続けば利ざやの悪化や不良債権の増加などを通じて地銀の収益を圧迫する公算が大きい。
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