11月29日、 「SHEIN(シーイン)」やPDDホールディングス傘下の「Temu(テム)」など中国発の電子商取引(EC)サイトは、年末商品で安い商品を求める欧米の顧客を取り込もうと、玩具販売を拡大している。写真は両社のロゴ。8月撮影(2024年 ロイター/Dado Ruvic)
「SHEIN(シーイン)」やPDDホールディングス傘下の「Temu(テム)」など中国発の電子商取引(EC)サイトは、年末商品で安い商品を求める欧米の顧客を取り込もうと、玩具販売を拡大している。
シーインやテムは主にスマートフォンのアプリで商品を販売しており、昨年まで玩具やクリスマスの贈り物を購入する場所として一般的ではなかった。規制当局や米消費財メーカーは、これらのサイトで偽物や模造品が売られていると懸念している。
これらサイトは米国においてデジタル版「1ドルショップ」とも言うべき存在で、バスタオルから衣類、家電製品まで、主にノーブランドの商品を低価格で提供している。
玩具はホリデーシーズンに小売業者の売り上げを世界的に押し上げる。シーインとテムは現在、シェア拡大を目指している。市場調査会社サカーナによると、2023年の玩具の世界売上高は1087億ドルに上った。
5ドルのTシャツや10ドルのセーターを販売して人気となったシーインの広報担当者は、玩具は最も成長の速い分野の一つであり、前年比2桁のペースで販売が増えていると説明。テムは、玩具の検索件数が増加しているとコメントした。
玩具販売において、アマゾン・ドット・コムやウォルマート、ターゲットなどの小売り大手が依然として主力であるのは確かだ。D・A・ダビッドソンの調査アナリスト、リンダ・ボルトン・ワイザー氏によると、これら3社は米国における玩具販売の約70%を占めている。
それでも、今年のホリデーシーズンにテムでギフト購入を計画している米消費者の割合は13%と、昨年の9%から増加していることが、市場調査会社キャンターの調べで分かっている。さらに、データ会社ファクテアスによると、11月のテムとシーイン両サイトにおける米国のクレジットカード支出は前年同月比で増えている。
玩具販売を急速に伸ばすテムとシーインには、MGAエンターテイメントなど米玩具メーカーが注目している。MGAは、ぬいぐるみやフィギュアをターゲットやメーシーズなどの伝統的な小売業者に卸しているが、アイザック・ラリアン最高経営責任者(CEO)は、より多くの買い物客と接点を持つため、オンラインでの販売を検討すると話す。「平均的な所得層だけでなく、あらゆるレベルの消費者層にアプローチしたい」
シーインとテムは、21年以降の物価高騰に苦しむ年収5万ドル未満の消費者をますます引きつけている。年末商戦開始前に発表されたバンク・オブ・アメリカのクレジットカード・データによると、掘り出し物を見つけるためにオンラインで買い物をする低所得者が増えている。
欧州では、特に18歳から34歳の若い世代がテムやシーイン、中国アリババ傘下のアリエクスプレスなどで玩具を購入するケースが増えていることが、サカーナが9月に実施した調査で明らかになった。アリエクスプレスでは、1ドル未満の玩具の銃など、中国製の安価な商品も販売されている。
同調査によると、今年に入って欧州の消費者の39%がこうしたサイトで玩具やゲームを購入したことが分かった。 若い消費者では、その割合が60%に上る。
偽造品への懸念
一方、バービー人形のメーカー、米マテルの広報担当者は、同社がテムやシーインに製品を直接販売しておらず、同社の代理店にもその権限はないと話す。ところが、テムではマテルのカードゲーム「Uno(ウノ)」、シーインではマテルのミニカー「ホットウィール」が売られ、出品ページには認証バッジや、本物であるとする文言が掲載されている。
シーインの広報担当者は、同社がサプライヤーに対し、自社製品がブランドの知的財産権を侵害せず、偽造品でもないことを証明するよう求めていると説明。シーインにはサプライヤーがそのポリシーを遵守していることを確認するチームがあり、守られていない場合は迅速な対応を取っていると述べた。
テムの広報担当者は、ロイターからの問い合わせを受けてUnoの出品を取り下げたとし、徹底的な調査を行うと述べた。
ポップマーケットなどの玩具販売業者は、手数料の安さにひかれてシーインやテムでの販売を増やしている。
シーインは新規販売者に対して、最初の3カ月間は手数料を免除し、その後は10%を請求する。テムは以前、同社が招待した販売業者しか出品できない仕組みだったが、今月から米国を拠点とする全ての販売者に対して申請受付を開始したと明かした。
しかしMGAなどの玩具メーカーは、シーインとテムで「偽物」が売られる可能性を懸念している。MGAのラリアンCEOは、特にウォルマート、アマゾン、ターゲットによってホリデーシーズンのトップ玩具に選ばれた新ミニチュア玩具ブランド「ミニバース」の偽造品が心配だという。
ラリアン氏によると、MGAの弁護士は、偽造品をより厳しく取り締まる方法についてシーインおよびテムの法務部門と協議中だ。同氏は、偽造品には不適切な年齢表示が成されていたり、幼児が窒息する恐れのある小さな部品が付いていたりする可能性があると語った。
カナダのトロントに拠点を置く玩具メーカー、スピン・マスターの広報担当者は、同社が発売した生後6カ月の乳児向け人形の新製品の偽造品がテムとシーインで売られていると指摘。これらの製品は品質と安全性のテストを受けていないのではないかとの懸念を示した。
テムの広報担当者は、スピン・マスターから11月8日に知的財産権上の懸念について連絡を受け、「すぐに調査を行い、問題の商品を削除した」と述べた。
玩具メーカー、ファット・ブレイン・トイズのマーク・カーソン社長は、シーインとテムのサイトで自社製品を販売すべきかどうかを判断する前に、両社の動向を注意深く見守るつもりだ。カーソン氏は「消費者が最安値を求めて(これらのサイトに)殺到しているからといって、すぐに販売するつもりはない。わが社のためになるものでなければならない」と話した。
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