4月25日、 競争が激しさを増す一方の中国の電気自動車(EV)市場では今、他の地域では決して目にされないような「豪華装備」を惜しげもなく提供し、消費者を引きつけようとする国内メーカーの動きが活発化している。写真は北京モーターショーに展示されたBYDのロゴ。同日撮影(2024年 ロイター/Tingshu Wang)
<1万~2万ドル程度の低価格EVにも、高級車並みの内装や多様な性能を盛り込む中国メーカー。外国メーカーもカラオケ搭載などで対抗>
競争が激しさを増す一方の中国の電気自動車(EV)市場では今、他の地域では決して目にされないような「豪華装備」を惜しげもなく提供し、消費者を引きつけようとする国内メーカーの動きが活発化している。
新興ブランドだけでなく国有の大手メーカーでさえ、2万ドル(約310万円)程度の低価格EVにも、かつては高級車向けと考えられてきた技術や性能を盛り込んでいるほどだ。2万ドルと言えば、米国の新車平均販売価格4万8000ドルの半分以下に過ぎない。
こうした流れは、中国市場で売れ筋のEVを抱えるテスラやフォルクスワーゲン(VW)をはじめとする外国勢にとっては逆風が強まることを意味する。
価格に関しては昨年、BYD(比亜迪)が「シーガル(海鴎)」を投入して業界に激震が走った。現在シーガルの販売価格は1万ドル未満で、中国における販売台数は4位となっている。
ただEV参入後発組の国有企業を含む他の中国メーカーも、25日に始まった国際自動車展示会「北京モーターショー」で1万ドルを切る車を披露し、BYDとの差を埋めた。
それらよりやや高い2万ドル近辺のEVやプラグインハイブリッド車(PHV)も市場にあふれているが、注目されるのはこうした車も高級車並みの内装や技術が装備されている点にある。
ベイン・アンド・カンパニーのパートナー、レイモンド・ツァン氏は、中国の特に若い世代は自動車を選ぶ際に「技術面の豪華さ」を重視していて、中国メーカーはその面で優位に立ち続けていると指摘。「この状況は、多くの西側市場で車の買い手がなお品質や信頼性、乗り心地、操縦性などにかなり重きを置いているのとは非常に異なっている」と述べた。
中国メーカー各社は差別化に躍起
一部の中国メーカーは何とか差別化を図ろうとして、消費者を面白がらせるような機能を車に取り付けている。
ゼネラル・モーターズ(GM)と上海汽車(SAIC)の合弁企業が販売する小型EV「宝駿」(最低価格1万1000ドル前後)には、後方部分にドライバーが他の車に対して親切にされた場合に「ありがとう」やハートの絵文字をメッセージとして点滅させるためのスクリーンがある。
吉利汽車傘下のプレミアムブランド、ジーカーのEVセダン「001」のフロントグリルは、停車時に音楽を流しながら、歩行者に「いいね」の絵文字を送り続けることができる。
国有の東風汽車集団が披露している「納米」は航続距離300キロで価格は9600ドルだが、テスラによって人気となった空力性能を持ち、スマートフォンで離れた位置からドアを開けられる。
メルセデスは車内にカラオケ装備で対抗
これまで中国では、国産ブランドよりも欧米ブランドがより豪華で品質も上だとみなされてきたものの、そうした構図は急激に変わりつつある。
マッキンゼーのアナリストチームは3月に公表した中国自動車市場見通しで「外国ブランドの威光はほぼ消滅した。伝統的な高級外国車オーナーは一方的に中国産の高級新エネルギー車オーナーへと移り変わっている」と分析した。
こうした中でドイツのメルセデス・ベンツのオラ・ケレニウス最高経営責任者(CEO)はロイターに、同社の中国デジタル技術チームが地元の若者の好みに応じ、中国の消費者に合った技術をより多く採用する作業に取り組んでいると明かした。
ケレニウス氏は「新しいEクラスではカラオケが歌える。多分ドイツでそんな機能は装備しないし、するべきではないだろう。だが中国の顧客はそれを愛している」と語る。
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<中国メーカーは1万~2万ドル程度の低価格EVにも高級車並みの内装や多様な性能を盛り込み、消費者を引き付けようと競争を繰り広げている>
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