電力供給でロシアと戦う、ウクライナ最大の民間電力会社「DTEK」のティムチェンコCEO(2022年3月、ウクライナ西部) REUTERS/Max Hunder

<冬が近づくたびに激しさを増すエネルギーインフラ攻撃に備え、迅速な復旧が可能な電源に切り替えた>

ロシアがウクライナのエネルギーインフラを狙ったミサイル攻撃を続けるなか、ウクライナの電力復旧の取り組みを主導しているのが、ウクライナ最大の民間電力会社「DTEK」のマクシム・ティムチェンコ最高経営責任者(CEO)だ。

アゼルバイジャンで国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP29)に合わせて行われたインタビューの中で、彼は、エネルギー施設を再建しても攻撃で再び破壊されるので発電量が安定しないとデータを示しながら説明した。


 

ロシアとの戦争は既に3年近く続き、ウクライナの国土は荒廃したが、一方で再生可能エネルギーの導入ペースは加速している。「ほかにどんな選択肢があるだろう」とティムチェンコは問いかける。「ロシアの攻撃がないことをただただ祈るか、自分の仕事をして国民のために電力を復旧させるか。そのどちらかだ」

COP29のウクライナ・パビリオンには粉々に砕けた太陽光パネルが展示されている。これはロシア軍による破壊を思い起こさせるものであると同時に、ウクライナの回復力の象徴でもある。

従来型の石炭火力発電所は集中型の電源で攻撃に弱いが、分散型の電源である風力や太陽光などの再生可能エネルギーはより迅速な復旧が可能で、ロシアからしてみれば破壊し尽くすことがより難しい。

今年の春にDTEKの太陽光発電所2カ所がロシア軍の攻撃を受けたときも、損傷したパネルと変圧器の交換を行って電力を復旧させるまでに7日しかかからなかった。

石炭火力発電所が同様の被害を受けたときには、3〜4カ月かかったという。

「それが、集中型の電源といわゆる分散型の電源の違いだ。分散型の方が集中型よりもはるかに柔軟性があり壊れにくい」とティムチェンコは説明した。


 

ウクライナのエネルギーインフラを狙う上で変圧器を破壊してもあまり効果がないと知ったロシア側は3月以降、作戦を変更して発電施設を狙うようになった。

米国務省のジェフリー・パイアット次官補(エネルギー資源担当)は、ウクライナの発電能力の50%が失われていると指摘するが、それでも原子力発電、水力発電および新たに建設された再生可能エネルギー施設を通して電力供給は続いている。

ウクライナのエネルギーシステム再建において重要な役割を果たしているのが国際的なパートナーシップだ。DTEKはアメリカのGEベルノバやハネウェルなどと共同で、風力発電やバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)の開発に取り組んでいる

GEベルノバのロジャー・マーテラ最高サステナビリティ責任者、ロジャー・マーテラは、ウクライナは戦時下の厳しい条件下で送電網を維持するために前例のない努力を行っていると称賛。

COP29のパネルでも「ウクライナがこれまで誰も成し遂げたことのないことを達成したという事実に深い尊敬と称賛の気持ちを抱いている」と述べた。


 

ティムチェンコはG7(主要7カ国)の支援に謝意を述べる一方、アメリカの政権が変わっても、米主要企業との協力関係がウクライナの長期的な再建努力を後押ししてくれるだろうと自信を示した。

また、分散型の電源システムは迅速な復旧を可能にするというだけでなく戦略の変更を意味しており、継続的な攻撃に直面するなかでエネルギーの独立性を確保するものだと述べた。

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