北は北海道から南は沖縄まで、日本各地の離島40以上が自慢の名産品を持ち寄った、全国初の離島限定物産展。
その中の一つ、兵庫県の「家島(いえしま)」のブースで、名産のカキや海苔を売るのは中西和也さん。
家島に移住し、その魅力を発信し続けています。
■13年前に大阪から移住した中西さん
家島は、兵庫県姫路市の沖合に位置し、姫路港から船で約30分の場所にあります。
人口約2000人のこの島は、一見すると他の離島と変わらない風景を持っていますが、その歴史は他の離島とは一線を画しています。
【中西和也さん】「普通の離島は、漁業、農業が基本で当たり前ですけども、ここはそうじゃなくて、採石・海運業っていう珍しい産業があって、ちょっと普通の島と違うっていう面白さを感じましたね」
13年前に大阪から家島に移住してきた中西さん。
もともとは大阪で街づくりに関わる仕事をしていましたが、家島を訪れた際にその魅力に取りつかれ、移住を決意しました。
■地元の人が集まる店を積極的に紹介し、島の日常生活を体験してもらう
現在は、「いえしまコンシェルジュ」として、島の魅力を観光客に伝える活動を行っています。
【中西和也さん】「島の暮らしの魅力を楽しんでもらうっていうことを心がけてるんで、なんかここに泊まって勝手に来て勝手に帰ったっていうよりも、島の中で人と喋って、なんかよくわからんけどいい島やったなって思って帰ってほしいんで」
中西さんの活動は、カフェや宿泊施設の運営、お土産の開発など多岐にわたりますが、特に力を入れているのが観光ガイドです。
地元の人が集まる店を積極的に紹介し、島の日常生活を体験してもらうことに重点を置いています。
■人口減少と高齢化という課題にも向きあう
しかし、家島も他の離島同様、人口減少と高齢化という課題に直面しています。
20年前には約4500人いた人口が現在は半減し、毎年100人以上のペースで減少を続けています。
若者世代の島外流出も進み、島民の半分近くが65歳以上という状況です。
この状況を象徴するのが、かつては花見の名所として賑わっていた城山公園の現状です。
人口減少により整備の手が回らなくなり、港を一望できた場所も草木が生い茂ったままになっています。
【家島観光事業組合 岡部賀胤さん】「草はぼうぼうで。せっかくの昔から名所があるんやから、それをなんとかみんなの力で起こしたいし」
再びここを人の集う場所にしようと、島民の有志で遊歩道や花壇の整備などを進めてきましたが、島民の力だけでは限界もあります。
■中西さんが目指すのは「観光以上、移住未満」
中西さんが目指すのは「観光以上、移住未満」の関わり方です。
離島限定物産展への参加もその一環です。
家島の特産品であるカキや海苔などを使った商品を通じて、少しでも家島に関わる人を増やし、島の暮らしを守ろうと考えています。
【中西和也さん】「やっぱりこの機会に、家島っていうのが大阪から近いところにあるんだということを皆さんに知ってもらって、もちろん商品を味わってもらって、『美味しいやん』と言ってもらって来るきっかけにしていただきたいなと思っています」
物産店では、家島の海苔を使った商品が特に注目を集めています。
20年以上海苔の生産に携わる漁師の中村さんによると、家島の海苔は水深の深い瀬戸内海で浮き流し式という方法で育てられ、他の地域の海苔と比べて黒々として柔らかいのが特徴だといいます。
■移住して13年。中西さんの思いに変化
家島で暮らして13年、中西さんの思いにも変化がありました。
【中西和也さん】「移住当初は、家島を僕やったら変えられるとか思ってたんですけど、最近おこがましいなとも思うんですよ。街づくりって正解がないんで、ということは失敗もないんちゃうかなと。唯一の失敗としたら、やめてしまうことかなとは思ってるんで。やめないように、お金が尽きないように」
中西さんの取り組みは、離島の課題解決のための一つのモデルケースとなる可能性を秘めています。
【中西和也さん】「本当に何がこの島にとって、あるいは日本にとって、僕にとっても何が一番いいのかなっていうのは分からないんですけど、迷いながら前を向いてやってます」
家島の未来は、中西さんのような“よそ者”の視点と、地元住民の思いが融合することで切り開かれていくのかもしれません。
離島限定物産展の取り組みを通じて、家島だけでなく日本の離島全体の可能性が広がることが期待されます。
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