イベント登壇者と参加者による集合写真。前列左から、スターバックスコーヒージャパンの佐藤千春氏、チャンス・フォー・チルドレンの今井悠介氏、ファシリテーターを務めた三井住友フィナンシャルグループの大萱亮子氏

<近年問題視されるようになった「子どもの体験格差」について考える対談イベントをOlive LOUNGE渋谷店で開催。金融大手のSMBCグループが「社会課題に向き合い、考える機会」を提供し続ける理由とは>

企業にとって、「社会的価値」と「経済的価値」は相反する概念であると捉えられてきた。しかし近年は、これらの両立を目指したCSV経営を掲げる企業が増えている。事業により環境、人権、少子高齢化などの課題を解決し、社会の持続可能な発展に寄与することが企業価値を高める時代へと移行しているのだ。

国内金融大手のSMBCグループでは、中期経営計画の柱の一つである社会的価値創造の一環として、「より良い未来のために踏み出す一歩を応援する」をコンセプトとしたイベントを三井住友銀行の個人向け店舗「Olive LOUNGE渋谷店」にて定期的に開催している。2024年9月に行われたイベントでは、公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事の今井悠介氏とスターバックスコーヒージャパン株式会社広報部Social Impactチームの佐藤千春氏をゲストに迎え、「子どもの体験格差」をテーマにしたトークセッションが実施された。


●Olive LOUNGE 渋谷店
2024年5月にオープンした、銀行窓口としての機能を有しながら、カフェやオフィスとして利用できる自由な空間。1階にスターバックスを併設し、2階はフリードリンクやフリースナック、Wi-Fi環境を備えたシェアラウンジとなっている

「社会的価値の創造」を経営の柱の一つに

体験格差とは、サッカーをする、キャンプに行くなど、子どもが得る体験機会の格差のこと。家庭の経済状況や生まれた地域により学びの機会を得られない子どもがいることが可視化され、近年注目されている社会課題である。

今井氏は『体験格差』(講談社現代新書)の著者であり、困窮家庭で育つ子どもの支援を行う社会起業家だ。チャンス・フォー・チルドレンでは、経済的困難を抱える子どもに向けて、学習や文化、スポーツ、体験活動などで利用できるスタディクーポンを提供している。支援者から寄付を募ることで年間2.1億円分(2023年度実績)のクーポンを発行し、子どもたち自身がやりたいことを選択できる仕組みだ。

スターバックスは、未来を担う子ども・若者支援を目的とした「ハミングバード プログラム」により、同団体への寄付支援および共同活動を実施。また、SMBCは資金と人員派遣の両面からスタディクーポン事業をサポートしている。「子どもの貧困」に関する支援・認知拡大のため、豊富な知見や調査実績を有する民間団体と大手企業が連携しているという構造だ。

イベントのファシリテーターを務めた三井住友フィナンシャルグループ社会的価値創造推進部の大萱亮子氏は、「2023年にチャンス・フォー・チルドレンと連携を開始し、教育格差の手前で体験格差は低年齢から始まっており、銀行業務とは直接関係ない活動であるものの、短期的な経済的見返りを求めず、社会課題解決として取り組むことを当社のミッションに掲げている」とコメント。同社は2023年度に中期経営計画を策定し、「社会的価値の創造」を新たに経営の柱の一つに据えた。同年10月に社会的価値創造推進部、翌年4月に社会価値創造本部を設置し、社会的価値創造に資するさまざまな施策を「シャカカチ」の愛称で拡充している。

左から大萱氏、今井氏、佐藤氏

中期経営計画に合わせ、重点的に取り組むべき5つのマテリアリティを「環境」「DE&I・人権」「貧困・格差」「少子高齢化」「日本の再成長」に改定した。今回対談のテーマとなった「貧困・格差」におけるSMBCグループの取り組みは、金融包摂、フィランソロピー、社会貢献など多岐に渡る。その中でも、大萱氏が携わる社会貢献活動は、給与天引による積立募金「グループライジング基金」の運営、業務時間の一部を活用できるプロボノなどが行われている。

「SMBCグループライジング基金」は、一般公募したNPOのプロジェクトの中から有識者の審査と役職員の投票を経てグループ各社の社員約7000人から集めた募金の支援先団体を決定するプログラム。「時間はないがお金はある」「ライトに社会貢献に取り組みたい」という社員にとって、アプローチしやすいプログラムになっている。一方、プロボノはNPOに派遣された社員が3~6カ月程度社会貢献活動に従事する。国内の金融機関では珍しく、業務時間が活用できる点が特徴だ。

このほか、金融経済教育活動、体験型商業施設「キッザニア」での職業体験、那須千本松牧場での自然体験などを通じ、貧困・格差の解消に向けた教育・体験機会の拡大を支援している。今後の展望について、大萱氏は「こどもたちの学びや体験を支援する場所として、まずは東京都内にこどもの居場所拠点を新しく開設する」と語る。1階は図書開放や上映会などを行うイベントスペース、2階にはこども食堂の開催や食イベントも開催できるスペースを設けた「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」をオープンする計画だという。

従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」で、社会と経済、人々が持続的に豊かになれる「幸せな成長」を目指すSMBCグループ。同社は今後も、オフラインイベントやウェビナーなどを通じて「社会課題について考える機会」を定期的に提供していく予定だ。


●問い合わせ先

SMBCグループ
https://www.smfg.co.jp/

Olive LOUNGE渋谷店
https://www.smbc.co.jp/kojin/olive/olivelounge/shibuya/

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