金融政策決定会合に臨む日銀の植田総裁(中央)ら(10月、日銀本店)

日銀は11日、10月30〜31日に開いた金融政策決定会合での「主な意見」を公表した。政策委員からは現状の物価動向について、サービス価格の値上げなどの動きを踏まえ「ほぼ見通し通り」との評価が挙がった。米国の大統領選などを考慮し米経済の動向を「一時的に様子見した後、追加的な利上げを展望していく状況」との意見も出た。

日銀は7月会合で政策金利を0.25%に引き上げると決め、9月、10月の会合では政策金利を据え置いた。

9月の会合では、追加利上げの判断において経済や市場の動向を「見極めるための時間的余裕はある」として、利上げを急がない姿勢もみられた。一方、今回公表した10月会合では政策委員から「米経済の不透明感が低下するなかで、『時間的余裕』という言葉で情報発信する局面ではなくなりつつある」との声があがった。植田和男総裁も10月会合後の記者会見で「時間的余裕という表現は今後は使わない」と言及していた。

10月会合では政策委員から、経済・物価見通しが実現していけば、政策金利を引き上げていくという「コアメッセージをしっかりと発信することが重要」との主張もあった。

一方、「金利のある世界」への移行には「相応の不確実性がある」として、今後の利上げは「時間をかけて慎重に行う必要がある」と強調した委員もいた。別の委員は、賃金と物価の好循環の持続性への自信が強まるまで「当面、政策金利は現状維持でよい」と指摘。政策委員の利上げ姿勢には温度差がみられた。

国内経済については、政策委員が中小企業も含めて「賃上げの必要性が当然視される状況で、来年の賃上げ率も高水準が続くと見込まれる」と指摘した。

為替相場の動向への言及もあった。中小企業の経営者から円安の修正を歓迎する声がきかれたとして「各種調査をみると、家計も円安修正を歓迎しているのではないか」との声があった。

「日米の財政政策の展開と、そのもとでの為替相場の動向について、物価への影響を懸念している」と述べた政策委員もいた。米国の拡張財政にともない金利が高止まりすれば、日米の金利差から円安が進行するとの懸念を示唆した発言だ。

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