福井銀行は8日、傘下の福邦銀行(福井市)と合併契約を締結した。2026年5月に両行を統合する予定で、商号は親会社ブランドの「福井銀行」にすると明らかにした。福井県内で長らく続いた2行体制は福井銀行への統一という形で幕を閉じる。
「形式としては(福井銀への)吸収合併になるが、本当に新しい銀行としてやっていきたいと思っている」。同行の長谷川英一頭取は8日の記者会見でこのように強調した。2行体制のなかで取り組んできた両行職員の融和や顧客へのブランド周知も進んだと改めて述べた。
銀行再編では両行ブランドの商号を残すか、新しい行名で再スタートを切る事例が一般的には多い。しかし長谷川頭取は「行名の変更にコストをかけるより、中身など実質的な場面でお金を有効に使いたい」と語り、「福井銀行」の商号を継続する方が合理的だと説明した。
福井銀は過去にも森田銀行など様々な地銀を合併してきたが、行名は常に福井銀行として営業し続けてきた。今回の合併でも自行の商号は変えず、県内地盤の銀行は「福井銀行」で一本化されることになる。
同日発表した24年4〜9月期の連結決算では、純利益が前年同期比約3倍の54億円だった。事業者の生産性改善に向けた先行投資需要などをとらえて貸出金利息が増えた。好業績を踏まえ、25年3月期の通期純利益見通しを従来予想から25億円引き上げて前期比75%増の65億円になりそうだとし、期末配当予想も2.5円積み増して27.5円にすると発表した。
福井銀グループは取引先の「課題解決」をうたい、福井・福邦の両行が中小企業向けの伴走支援や積極的な資金融資の戦略を取ることで貸出金残高を押し上げてきた。2ブランド体制は人材やシステムが分散されるため経営の効率化は難しく、統合によってこれまでの融資戦略を一体となって押し進める考えだ。
福井銀は統合によって生み出されるシナジー効果を30年3月期には60億円創出すると説明している。8日公表した企業価値向上の目標では、人材配置や本部機能の最適化など収益向上策による「トップラインシナジー」を同期に40億円見込むとした。達成への指標の一つとして、地域の事業性貸出金残高を年3%増やす目標を掲げた。
システムや店舗の統合によるコスト効率化で利益に寄与する「コストシナジー」は同期に20億円を見込んだ。システムや店舗の統合など24年度以降にかかる経営統合費用は累計111億円を見込んでおり、トップラインとコストの両シナジーの利益創出額による累計黒字化は29年3月期までに達成する目標だと説明している。
福井銀は21年に福邦銀の第三者割当増資を引き受ける形で同行を子会社化した。24年6月には完全子会社化について株主からの承認を取り付けており、26年の統合では親会社の福井銀を存続させる形で両行を合併する。事業者としての福邦銀はなくなり、同行職員らは福井銀に組み込まれることになる。
福邦銀は相互銀行としての顔を前身に持ち、普通銀行への転換を経て長らく福井銀のライバル行として県内で競ってきた歴史がある。小規模事業者との関係が深く、今でも福邦銀の方に親近感を覚える層は一定数存在する。理念に掲げる地域価値の向上を実現するためにも、福井銀が取り組むべき統合への課題解決はこれからだ。
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