使用済みの竹の割り箸をアップサイクルしたテーブルや建材(写真提供:ChopValue)

<従来リサイクルに向かないとされていた竹製の割り箸がスタイリッシュなテーブルなどに......>

日本で1年間に使われる割り箸の量は、最近は約140億膳にのぼるという。国民1人当たりに換算すると年間約110膳も消費している。木製、竹製、プラスチック製と様々な素材の割り箸が出回っているが、ほとんどは中国から輸入される木箸や竹箸だ。

近年、割り箸は森林保護の観点から、竹を用いることが増えている。竹は驚くほど成長のスピードが速い。繁殖力も強く、供給が安定している。8年後には、世界の割り箸は木製が6割、竹製が2割近くになると見込まれている(割り箸の市場調査)。日本では、木の割り箸は紙類製造の資源として再利用されているが、竹の割り箸はリサイクルには向かず、普通は廃棄されるという。そんななか、素材にかかわらず日本の割り箸の廃棄をさらに減らそうと、いま、カナダの企業が日本での事業展開に乗り出した。

チョップバリューのマイクロファクトリーでは割り箸を圧縮加工してアップサイクルする ChopValue / YouTube

1億8千万本以上をリサイクルした実績

バンクーバーのチョップバリュー(2016年設立)は、外食産業から使い終わった割り箸(木製と竹製)を無料で回収し、それを板に加工し、テーブルや椅子、小物を製造販売している。再利用の作業は、マイクロファクトリーと名付けられた独自の工場で行われる。集めた割り箸は仕分けし、水性樹脂コーティングして乾燥後に圧縮して板にする。

同社の躍進は目覚ましく、バンクーバーのみならず、北米や東南アジアを中心にほかの都市にもマイクロファクトリーをオープンしている。フランチャイズ化をさらに進め、数年後は150カ所以上で展開したいという。

チョップバリューの製品は、最近ではメキシコシティーのケンタッキーフライドチキンに導入されるなど、多数の飲食店で使われている。オフィスでも導入されており、公共施設ではバンクーバー国際空港で使われている。個人で購入したい場合は、同社のオンラインショップで買うことができる。

同社は現在までに1億8414万本以上の割り箸をリサイクルし、リサイクルの過程全体で910万㎏のCO2排出量を削減した。 

川崎市に、日本初の工場オープン

チョップバリューは、とりわけ、日本と中国とアメリカでマイクロファクトリーの数を増やす計画だ(同社の2023年版サステナビリティ・レポート31ページ)。

そして、日本での記念すべき第1号工場が川崎市に誕生した。木製・竹製両方の箸をレストラン、オフィスのカフェテリア、フードコートから集め、年内に稼働予定とのことだ。日本でも環境保護への意識が高まるなか、同社のねらい通り、将来的に国内でのフランチャイズに関わりたい人が各地で次々と手を挙げるかもしれない。

使ってみたくなる「デザイン」 コクヨとの共同開発も

「廃棄される割り箸の量を減らす」というチョップバリューのビジョンは、時代にマッチしている。しかし、同社が勢いに乗っている理由はそれだけではないだろう。製品を使う側にとっては、デザイン性と使いやすさも重要なポイントだ。

現代人はデザイン性に富んだモノに囲まれている。同社の割り箸を加工した製品は、柄のパターンも色も様々で、どれも美しい。上質なライフスタイルやワーキングスペースを求める人や企業は、これなら使ってみたい!と思うだろう。実際、オンラインショップには、購入者から「割り箸とは思えないデザインだ」「非常に使いやすい」といったコメントが寄せられている。

また同社の品質重視の姿勢には、事務用品メーカーの株式会社コクヨも共感し、両者で割り箸をリサイクルした新しい家具シリーズの開発も進めている。


日本でのビジネス展開を図るチョップバリュー JETRO Global Eye / YouTube

「B Corp認証」を取得している

チョップバリューは、日本でもよく報道されるようになった「B Corp(B Corporation / Bコーポレーション)」認証を、2021年に取得した。

B Corpは、社会に利益をもたらす優れた活動を行う企業に与えられる国際的な民間認証制度。取得のハードルが高いことで知られ、企業の活動を5つの分野―「ガバナンス」「従業員」「環境」「コミュニティ」「顧客」―で評価する。約180の質問のうち80以上をクリアし、インタビューなどを受けて(点数の修正が行われる場合あり)、最終得点が80点を超えていれば認証を得られる。認証は3年ごとに更新が必要だ。2024年10月時点で、世界で9100以上の企業が取得しており、日本では45社となっている。


チョップバリューはこのB Corp取得にあたり5つの全分野で計101点を獲得。このうち「環境」分野では36.8点と高得点で、B Corp企業(2021年)全体の上位5%に入るという好成績だった。ほかの分野の改善もさらに進めていく必要はあるが、同社が環境への責任を果たす努力をしている企業であることは間違いない。

10年後、チョップバリューの製品が日本のあちこちの公共施設や飲食店で見られるようになっているか、楽しみにしたい。


[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com


【動画】チョップバリューによる竹の割り箸をアップサイクルする製造工程


カナダのスタートアップ企業、チョップバリューは昨年竹の割り箸のアップサイクル累計1億本を達成した。 ChopValue / YouTube

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