北京国際モーターショーに出展した中国のEV最大手、比亜迪(BYD)のブース

【北京=三塚聖平】世界最大の自動車市場である中国で、電気自動車(EV)の販売拡大をきっかけに業界地図を塗り替える地殻変動が起きている。中国勢がシェアを拡大し、日本などの海外勢を引き離している。ただ、中国メーカーも採算度外視の値下げという消耗戦に苦しんでいるのが実情だ。海外輸出も進めているが、米欧では中国製EVへの逆風も増している。

新車販売3千万台突破

「中国市場はここ数年で大きく変化している」。 北京市郊外にある北京国際モーターショーの会場で日産自動車の内田誠社長はこう強調した。

中国自動車工業協会によると2023年の新車販売台数は、前年比12%増の約3009万台で史上初めて3千万台を突破した。原動力はEVやプラグインハイブリッド車(PHV)などからなる新エネルギー車だ。新車販売に占める新エネ車の割合は31・6%で22年から6ポイントも伸ばした。

乗用車販売に占める中国ブランドのシェアは56%で22年の49・9%から拡大した。中国EV最大手の比亜迪(BYD)は23年10~12月期のEVの販売台数で米テスラを超えて世界首位となった。EVに参入する新興メーカーも乱立しており、中国では百数十社のEVメーカーが存在しているとされる。

日本は教えてもらう側に

EV拡大は海外メーカーにとって逆風だ。特にガソリン車で優位を誇ってきた日系メーカーは苦戦している。昨年10月にはガソリン車が中心の三菱自動車が中国での車両生産からの撤退を発表した。ガソリン車で築いた重厚なサプライチェーン(供給網)も、安価なEVを製造・販売するには不利だと指摘される。

日本勢ではEVで中国メーカーに協力を求める動きが広がっているほか、次世代車で重視されるソフトウエアなどの強化へ中国IT大手との提携も盛んになっている。日系メーカー幹部は「教える側から、教えてもらう側に変わってきている」と話す。

ただ、中国勢も内実は厳しい。シェア維持のため値下げ合戦を繰り広げているからだ。香港紙によると、米シティグループはシャオミが3月発売したEV「SU7」は1台売れるたびに6800元(約15万円)の損失が生じると指摘。車載電池も手掛けるBYDや、国有自動車大手といったごく一部を除いて利益は出ていない状況とみられる。

中国勢は欧州などへのEV輸出にも本腰を入れており、昨年には世界各国の自動車輸出台数で日本を抜いて初めて首位となった。しかし、欧州連合(EU)は中国製EVに対する補助金調査を行っているほか、米欧は中国がEVの過剰生産能力を抱えているとの懸念も増している。新たな貿易摩擦の火種となっており、中国のEV戦略にも影響を与える可能性が出ている。

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