地下鉄の「東京メトロ」が東京証券取引所に上場しました。時価総額が一時「1兆円」を超える6年ぶりの大型案件ですが、実は株の半分は国と都がもったまま。なぜなのでしょうか?

■時価総額は…1兆円規模! 東京メトロ 東証上場のワケ

銀座線や千代田線など、9路線を運営する東京メトロ。2004年に「東京地下鉄株式会社」が誕生してから実に20年越しで、東証「プライム市場」への上場を果たしました。気になる初値は…?

記者
「取引開始から10分が経ちますが、東京メトロはまだ値が付いていません」

「ドル箱」路線を活かした先行きへの期待感から、売り出し価格を3割上回る初値「1630円」がつくまで1時間以上かかる展開に。時価総額は一時、1兆円を超えました。

東京メトロ 山村明義 社長
「多くの皆様に評価いただいた結果だと、改めて感謝申し上げたい。経営の自律性・透明性を高めていく」

これまで国と都が全ての株をもってきた東京メトロは、法律で完全民営化の方針が決まっていますが、今回、国と都が売却した株は半分だけ。そのワケは?

鉄道アナリスト 川島令三さん
「新線の建設ですね。もう少し影響を持ちたい。国と都は」

いま、東京メトロでは、有楽町線を豊洲駅から住吉駅まで4駅、5.2キロ延長し、南北線はリニア新幹線の発着駅となる品川駅まで延ばす計画を進めています。国と都は株の半分を持ち続け、この計画をスムーズに支援する考えです。

きょうの上場でも、東京メトロは経営の裁量は一定程度高まり、「地下鉄一本足打法」からの脱却を目指します。ただ、「完全民営化」は延伸計画の完了後、2030年代の半ば以降となる見通しです。

鉄道アナリスト 川島令三さん
「(完全民営化すると)いろんな副業、不動産業とか駅ナカ事業は自由にやれる」

強い収益基盤を活かして利用者と投資家にとってより良い企業になれるのか、「経営力」が問われることになります。

■国・東京都 保有分の売却益は?

井上貴博キャスター:
東京メトロは2004年に営団地下鉄が民営化しました。銀座線や丸の内線など、9路線で1日約652万人が利用しています。

これまでの株式保有の割合は東京都が46.6%、国が53.4%でしたが、それぞれが保有する株式の半分を売却するということです。

2002年に東京地下鉄株式会社法が施行され、「保有する株式の売却、その他の必要な措置を講ずる」となっていました。

国の保有分の売却益は「東日本大震災の復興財源に充てる」ということが既に発表されています。一方で、東京都の保有分の売却益は「どのように使うか、今後、検討する」ということで、まだ明らかにされていません。

ホラン千秋キャスター:
上場してすぐの株価というのは不安定な部分もありますので、今後どうなるかわかりませんが、秋元さんは企業のトップとして、大型上場などには注目していますか?

オンライン直売所「食べチョク」代表 秋元里奈さん:
すごい話題になっています。特に上昇率がこの10年でトップクラスで、規模も大きいIPOだったので、すごく注目するというか、わくわくするなと思います。

近年、投資家が利益の部分をかなり強く見るようになっているので、しっかり安定した事業があるというところや、鉄道事業をメインにして、他の事業はまだまだこれからという部分もあると思うので、そこは弱みでもあり、チャンスも多いというところで、結構期待をしている投資家が多いんじゃないかなというふうに見ていて感じます。

ホランキャスター:
ここから鉄道業以外にも手を広げていける余力があるという部分ですかね。

秋元さん:
例えば、地下なので、土地の権利などは実は地上の人が持っていたりします。まだ権利を持てていない部分などがあったりするので、今後、路線の拡張などもありますが、JRのように不動産事業など、他の領域に広げていける拡張余地があるんじゃないかなと思います。

■東京メトロの株主優待制度は?

井上キャスター:
東京メトロの株主優待制度ですが、株主優待乗車証というものがあります。

▼200株以上持つと、全線きっぷ(片道1回限り)3枚~75枚を年2回もらえます。
▼1万株以上持つと、全線定期乗車証(有効期限 約6か月)1枚を年2回もらうことができます。一般販売している全線定期券(有効期限 6か月)は9万5420円なので、これを2回分もらえるということになります。

他にも、東京メトロの株主優待としては…

▼ECサイト「メトロの缶詰」で300円引きのクーポン券1枚(3000円以上購入で1年間何度でも利用可能)
▼そば処「めとろ庵」でかき揚げ無料券3枚(350円以上利用時に限る)
▼ゴルフ練習場(メトログリーン東陽町)の入場無料券5枚(平日限定)
▼地下鉄博物館の無料招待券5枚

経済評論家の池田健三郎さんは「上場で資金調達がしやすくなり、路線の整備や新たなビジネスの拡大なども進めやすくなる」と話しています。

■“都心の大動脈”はどう変わる?

井上キャスター:
路線の整備や新たなビジネスの拡大などは具体的にどういうものがあるのかみていきます。

まず、「延伸」計画です。有楽町線「豊洲~住吉」と南北線「品川~白金高輪」の延伸計画があり、2030年半ばの開業を目指しています。

そして、もう一つは「不動産ビジネス」です。「渋谷ヒカリエ」や「ハラカド」などがありますが、2029年に地上48階建ての高層ビルが新宿西口にオープンする予定となっています。

経済評論家の池田さんは「個人や海外の資本が入ることで、徹底した利益追求を求められる可能性もある」と話しています。

少子高齢化で将来的に鉄道の利用者が減ることや、急激な運賃の引き上げが難しいという中で、「駅員の数」や「利用客の少ない駅」の整理が求められる可能性があるということです。

ホランキャスター:
お金が入ってくることで、普段から使っている利用者の利便性や、外国人観光客の利便性、駅が綺麗になることなど、良い面もたくさんあると思うんですが、今回のような大型の新規上場で心配事や懸念点はあるものなんですか?

秋元さん:
どうしても利益追求型になりがちなので、大きな投資とのバランスをどう捉えるかというところはありますが、それこそ経営力が問われる部分かなと思います。

なので、利益はしっかり追求しつつも、調達したお金で新規の投資もしっかり行なっていく。投資はするけど利益はしっかり伸ばしていく。その両方が求められるので、そこはある意味、市場からのプレッシャーがより強くはなるので、すごく難しくなっていくとは思いますが、経営者がしっかりやっていくと思いますので、今は市場の期待値はすごく高い状態かなというふうに思います。

ホランキャスター:
あとはNISAなどが拡充されたので、先ほどの優待などを求めてこれから買う人もいるかもしれないですよね。

秋元さん:
これだけ身近な会社なので、新しく投資する人は手が出しやすく、優待もかなり身近なものなので、魅力的かなと思います。

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秋元里奈 さん
オンライン直売所「食べチョク」代表、33歳、神奈川の農家に生まれる。

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