マイナビ 東京ガールズコレクション 2023に登場したときのNewJeans Kazuki Oishi/Sipa USA via Reuters Connect

<ファンやNewJeansメンバーも巻き込み事態は長期化するおそれも>

昨年夏、ビルボードのアルバムチャートで『Get Up』が1位となり、またアルバム収録曲3曲がビルボードシングルチャートに同時にランクインするなど(K-POP以外の全ガールズグループとしても歴代4番目)、世界的な人気を獲得したK-POPガールズグループNewJeans。だが、今後の活躍が危うい状況になってしまった。

既報のように、所属事務所アドアに対して親会社ハイブが4月22日午前、特別監査を行うと同時にアドアの代表であり「NewJeansの母」として知られるミン・ヒジン代表に対して辞任を要求する事態が発生した。ミン・ヒジン代表らがハイブから独立する動きを見せたというのが理由だった。

【動画】NewJeansと一緒にバラエティ番組に出演したミン・ヒジン

ハイブは、ミン・ヒジン代表と副社長A氏らが経営権を奪取して独立するための計画を立てたという情報提供を受けて監査に着手し、アドア経営陣の業務エリアを訪れ業務用PCを押収したという。特にミン·ヒジン代表とA氏が投資家を誘致するために社外秘の人契約書などを流出し、ハイブが80%保有しているアドア株を売るように誘導する案を議論した。また、以前ハイブに所属していたA氏はハイブ内部の情報をアドアに渡したとされる。

これに対して、アドアとミン・ヒジン代表は22日夕方メディアを通じて声明を発表。3月にハイブ傘下のレーベル・ビリーフラボからデビューしたガールズグループILLIT(アイリット)がNewJeansをコピーしていると反発。

ミン代表は「ハイブのバン·シヒョク議長がILLITデビューアルバムのプロデューシングをした。ILLITのNewJeansコピーはビリーフラップというレーベル単独でしたことではなく、ハイブが関与したこと」と主張。「これを内部告発した私を解任しようとしている」と批判の声を強めた。

追い詰められたミン・ヒジン代表

アドアの発表、そしてミン・ヒジンの発言をよそに、一連の騒動について音楽業界などからはハイブ有利、さらにミン・ヒジンに対して否定的な声が多い。その理由としてアドアとミン・ヒジンの「経営権奪取を企んだことはない」という主張とは異なる証拠がハイブによる監査から出てきたためだ。

ミン・ヒジン代表へ送られた経営権奪取計画とされるカカオトーク画面

監査対象者のうち1人は、調査過程で経営権奪取計画、外部投資家接触事実が盛り込まれた証拠を提出し、ハイブを攻撃する文書を作成した事実も認めた。

対面調査と提出された関連資料のカカオトークなどによると、ミン・ヒジン代表はアドア経営陣に、ハイブが保有しているオドアの持分を売却するよう、ハイブを圧迫する方法を用意するよう指示した。

この指示に従って、アーティストとの専属契約を中途解約する方法(編集部注・NewJeansメンバーはアドアではなくハイブと契約している)、ミン・ヒジン代表とハイブ間の契約を無効化する方法などが具体的に議論されたという。また「海外の投資資金を引っ張ってきてハイブと取り引きしよう」「ハイブがするすべてのことに対してクリティカルにアピールしなさい」「ハイブを苦しめる方法を考えなさい」という対話も交わされていた。さらには「5月世論戦準備」「アドアを空にして連れて行く」のような実行計画もあったという。

ハイブは監査対象者から「『究極的にハイブを抜け出す』という文言はミン・ヒジン代表が言った言葉を書き取ったもの」という陳述も確保した。

ハイブはこれらの資料を根拠にミン・ヒジン代表ら関係者に対して背任などの疑いで25日告発状を提出する予定だ。

ファンがミン・ヒジンを糾弾するデモまで

また、NewJeansのファンもミン・ヒジンに否定的だ。24日、ニュージーンズの一部のファンはソウル龍山区(ヨンサング)のハイブ社屋前でトラックデモを行い、ミン·ヒジンを糾弾した。

トラックに載せられたパネルビジョンには「バニーズ(NewJeansのファンの愛称)はハイブ所属のNewJeansを支持する」「ミン・ヒジンはこれ以上NewJeansを利用するな」「ミン・ヒジンは他のアーティストの誹謗を直ちに止めろ」等のメッセージが出され、NewJeansが盾にされる状況に対して憂慮の思いを伝えた。

NewJeansの日本デビュー直前になぜ?

今回の問題で一番懸念されているのがファンも心配するようにNewJeansの活動への影響だ。なぜなら彼女たちは5月24日と6月21日にそれぞれ韓国と日本でダブルシングルを発売し、6月26・27日に東京ドームでファンミーティングを開催する計画になっているからだ。

なぜこの重要なタイミングでハイブはNewJeansの所属事務所を潰すような監査を行ったのかという疑問の声もある。実際、今回の騒動が報じられるとハイブの株価が暴落した。7%以上暴落した。韓国取引所によると、22日、前取引日対比7.81%(1万8000ウォン)下落した21万2500ウォン(約23,852円)で取引を終えた。このような株価下落で、ハイブの時価総額は7,498億ウォン(約841億円)蒸発した。これはBLACKPINKの所属事務所YGエンターテインメントの時価総額(8,187億ウォン)に匹敵する金額だ。

だが仮にこの問題が長引いてNewJeansの今後の活動に支障が出てきても、ハイブにとってビジネス的には大きな障害とはならないという声がある。

NH投資証券のイ・ファジョン研究員は「2023年のハイブへのアドアの営業利益寄与はNewJeansの2つのアルバム発売にともなうアルバムおよび音源で売上高の11%。2024年の当社推定ではアドアの営業利益寄与度はNewJeansの3つのアルバムおよび日本での東京ドーム公演を勘案して14%だ」と分析した。

また「下半期NewJeansの活動が中断されるとしても実質的には1つのアルバム発売のキャンセルに止まると見られ、ハイブの今年実績に対する影響は10%未満だろう」と説明する。そしてこうした懸念点はすでに株価に反映された状態だと語った。

その理由として同研究員は、ハイブ傘下の他のレーベル所属アーティストであるBTS、SEVENTEEN、TOMORROW X TOGETHER、LE SSERAFIM、ILLET、TWSなどに言及し、「(ハイブは)効率的なコンテンツ製作力および新人開発力を備えており、一つのレーベルへの依存度が高くない」と話した。 今回の騒動に対して「早期に円満に解消されるのが一番良いが、もしそうでない状況になってもハイブの中長期成長力への影響は限定的だろう」と見通した。

NewJeansそしてミン・ヒジンを失ったとしてもハイブにとってはさほど大きな痛手にはならず、それよりもコーポレートガバナンスを重要視したということだろうか。

果たして今後の展開はどうなる?

ついに「NewJeansの母」と呼ばれてきたミン・ヒジン代表が告発されるような状況にまでいたった今回の騒動。果たして今後どういう展開になるのだろうか?

一連の問題が発生した22日時点では、ハイブとミン・ヒジン代表の和解を望む声もあったが、ここまで至ってはそれはあり得ない状況だ。

既に決まっていることとして、ハイブはアドアに理事会招集を要求している。理事会は30日に開催予定で、ハイブがオドアの持分を80%を持っているだけにミン·ヒジン代表の解任を要求するものと見られる。ただ、アドア理事陣の大半がミン·ヒジン代表の側近によって占められているだけに、彼らが欠席して理事会自体が成立しない可能性が高い。その場合、ハイブは裁判所に株主総会招集を申請し、裁判所の決定によって臨時株主総会招集が進められる可能性が高い。その場合は2カ月ほどの時間がかかると見られている。

遅かれ早かれ、ミン・ヒジン代表がアドアを退任せざるを得ないのは確実だ。その場合、NewJeansはどうなってしまうのか?

1)望ましい展開:ミン・ヒジンだけが去り、NewJeansはアドアに残留し活動継続
本来のベストな展開であるハイブとミン・ヒジンの和解が望めない現在、もっともいいのはミン・ヒジンが退任して、NewJeansがアドアでそのまま活動を継続するというパターンだ。現状ではこれがもっとも可能性が高い。

NewJeansを大ヒットさせたミン・ヒジンなら、ハイブと袂を分かったとしてもいくらでも新しいレーベルを立ち上げるために投資家が列をなすだろうというのが音楽業界の見方だ。ある業界関係者は「SMエンターテインメントを経てNewJeansという優れた結果を出しただけに、国内はもちろん国外でも投資家が列をなすだろう」と話した。
ミン・ヒジンとともにNewJeansの成功を支えたクリエイティブスタッフが、ごっそりアドアを去ることも考えられ、NewJeansのサウンドなどが変わってしまう可能性も指摘されるが、複数の音楽業界関係者たちは「ミン代表の独断的な経営に嫌気がさしたハイブ経営陣が『ミン·ヒジンのいないNewJeans』を生かすためにより一層力を入れるだろう」とコメントした。

2)望ましくない展開:ミン・ヒジンとともにNewJeansもアドアを去り独立、活動に支障が
心配される展開としてはNewJeansメンバーが母のように慕うミン・ヒジン代表とともに独立を目指すということが考えられる。ただ、この場合、前述のようにメンバーが契約しているのはアドアではなくハイブのため、専属契約解除を求める訴訟をすることになり、戻れない川を渡ることになる。仮に何らかの条件で合意できて独立することができたとしても、ハイブは放送局をはじめとしたメディアに彼女たちが出演できないように圧力をかける(ハイブ傘下のアーティストを出演させない)ことが予想され、活動には大きな支障が伴う。

3)最悪な展開:ミン・ヒジンとともにNewJeansが独立目指すが裁判で敗訴、活動停止に
最悪なパターンは、上記2)の訴訟がこじれる場合だ。専属契約解除を求める訴訟のなかで合意ができなかった場合、裁判所は、契約解除を認めない可能性が高い。メンバーがミン・ヒジン側についても、契約上の所属はハイブのままということになると、活動はストップしたままになってしまう。

こういった最悪なパターンの事例として音楽業界関係者が口を揃えてあげるのが「FIFTY FIFTY」だ。奇しくもNewJeansと同じ2022年にデビューした4人組ガールズグループFIFTY FIFTYは、2023年2月にリリースした「Cupid」がブレイク。ビルボードの「ワールドデジタルソングセールス」にて8位を記録したほか、大手以外の事務所のK-POPアーティストとしては初めてHOT 100にもチャートインするなど、一躍注目される存在になった。ところが、所属事務所が実務を依頼していた会社がメンバーとともに独立を図り、専属契約解除を求める訴訟を起こしたものの敗訴。メンバーのうち一人だけが和解して所属事務所に復帰したものの、他のメンバーは契約を解除され、最終的にFIFTY FIFTYというグループ自体が事実上解散となってしまった。

このFIFTY FIFTYの事件があったため、今回のハイブとミン・ヒジン代表の対立についてメディア、そして音楽業界関係者はハイブ有利との見方をしてきた。

果たしてNewJeansがこれからも活動を続けられるのか、あるいは第二のFIFTY FIFTYになってしまうのか? それはミン・ヒジン代表の今後の動きにかかっていると言えるだろう。

【動画】NewJeansファンも所属事務所ミン・ヒジン代表を糾弾


ハイブとアドアの対立を報じる韓国メディア MBCNEWS / YouTube

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