舞台は東京都八王子市。「環境に優しい家」を目指して、モノを捨てることなくリノベーションした家を紹介する。

モノを捨てないリノベーションをした家

 住人(アルジ)は、2人兄弟がいる建築家の夫妻。一家が暮らす延床59平方メートル、団地の2LDKほどの広さの家は、元々妻の祖母が一人暮らし用に建てた平屋で、昨年譲り受けてリノベーションした。

 コンパクトな平屋にしては広々とした玄関には、本がずらりと並んでいる。以前は縁側だった場所だが、リノベで玄関兼ライブラリーに生まれ変わった。南側にあるので、明るく本も読みやすい。また居住スペースとしても活用していて、本を読むほかにも家族が食事をしたり、来客用のスペースとしても利用している。

来客用のスペースとしても利用しているライブラリー兼玄関

 玄関土間はモルタル仕上げ。リノベで床を剥がし45センチ掘り下げたことで、座りやすく開放感たっぷりの空間になった。床のモルタルは祖母が使っていた植木鉢を再利用。細かく砕いてモルタルに混ぜ込み、丈夫な玄関土間として再生させた。
 実は、住人(アルジ)はこのリノベーションで、「環境に優しい家」を目指したという。

祖母が使っていた鉢を細かく砕いてモルタルに混ぜ込み、丈夫な玄関土間として再利用

 都内の賃貸マンションから、妻の祖母が住んでいた空き家に移り住むことになった住人(アルジ)一家。リノベーションのため片付けを進めているときに痛感したのが、モノを捨てることの大変さ。しかもリノベの際にはどうしても大量の廃材が出てしまう。廃棄料も値上がりしており、捨てるだけでも莫大な費用が必要だったという。そこで何とかゴミを捨てずに活かせないかと考えるうちに、少しずつ住人(アルジ)の捨てることへの意識に変化が。こうして極力ゴミを出さずに再利用し、環境にもコスト的にもやさしいリノベーションに挑んだのだった。

日本庭園にあった大きな岩と灯篭を新たな形として再利用

 リノベで新たに作った玄関ポーチは、元々立派な日本庭園だった。庭の大きな岩と灯籠は不要になったが、実は一番お金がかかるのが石の処分。そこで岩は自転車置き場の舗装として地面に埋め込み、灯籠はバラして玄関ポーチの飛び石として利用した。

 以前は暗くて閉鎖された空間だったキッチンは、壁を取り払い、窓を設けた。テーブルはリノベで不要になった梁(はり)を再利用。近くの製材所でスライスしてもらったので、捨てる費用も材料費もかかっていない。

リノベで不要になった梁(はり)でつくったダイニングテーブル

 ダイニングキッチンの奥のスペースには、大量の本やDVDが並ぶ壁がある。大きなワンルームに改装する際、広い空間を支えるための壁や筋交いの代わりに耐震補強として取り入れたのが、この頑丈な耐力壁。長さ30センチほどの小さな木材を菱形に組み上げることで、分厚い筋交い同様の役割を果たしている。その構造体の両面を巨大な本棚として利用。しかも最終的にゴミになったときのことまで考え、木材は再利用しやすいようになっている。

耐震補強として取り入れられた耐久壁の役割を果たしている本棚

 ダイニングの横は夫妻のワークスペース。家がワンルームなので、リモート会議など集中したい仕事のときは、元玄関だった部分に扉を設置して作ったこの家唯一の区切られた空間を利用している。

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