10月10日は“マグロの日”。

世界で初めて、「クロマグロ」の完全養殖に成功した近畿大学から、変わりつつある「養殖の未来」を探りました。

■近畿大学では学生に特別価格でクロマグロの丼ぶりや寿司を提供

【酒井麻衣記者】「近畿大学に来ているのですが、見てください、大勢の人が並んでいます」

建物の外まで続く長い列。

多くの学生のお目当ては…近大マグロを使ったマグロ丼。

お値段はなんと400円。ほぼ半額という破格の値段です。

近畿大学では、10月10日を「近大マグロの日」と名付け、学生に特別価格でクロマグロの丼ぶりや寿司を提供。

【近畿大学の学生】「ばかうまでした。マグロの赤身と中とろの脂身が絶妙でした」
【近畿大学の学生】「しっかり食感もあって、養殖とは思えないほど、天然ものと同じくらいおいしい。メチャクチャ安く買えてうれしい」

学生にも大人気の近大マグロ。誕生したのは、実は20年以上も前のことなんです。

■クロマグロの完全養殖の仕組みは

クロマグロの乱獲が問題となるなか資源保護の解決策として注目されていた完全養殖。

近畿大学が世界で初めて成功したのは2002年のことでした。

その仕組みはこうです。

自然界で捕まえた幼魚を育て、生んだ卵を人工的にふ化させ成魚まで育てます。

2周目以降からは完全養殖となります。

2004年には初めて成魚を出荷。

さらに、近大マグロの勢いはとまらず…

■2007年にはアメリカへ出荷

アメリカへの出荷が始まった2007年には、入社3年目の吉原キャスターが中継でリポートしていました。

【吉原キャスター】「こちらが近大マグロなんですけれども、脂感が違くて、表面から脂が伝わってきます。

「脂のり」の良さが養殖マグロの特徴。出荷が安定してきたおよそ10年前には、養殖専門のレストランをオープンしました。

■近大水産研究所の所長によると「低価格帯で完全養殖を提供するのは難しい」

国内外で認知を高めてきた近大マグロ。長年の技術の進化で値段を抑えることはできたのでしょうか。

【近畿大学水産研究所 升間主計所長】「天然のクロマグロが増えていったことによって、来年から(漁獲枠が)1.5倍ぐらいに増えるっていうことになりましたんで。低価格帯で完全養殖を提供するのは難しい。クロマグロの資源を守るためには、やはり完全養殖を食べることで、食べる人たちがそれぞれそクロマグロの資源を守ってるんだという意識を持って食べていただければなというふうに思います」

■多くの学生に特別価格でふるまわれた

世界で初めての快挙から20年。10日は多くの学生たちに特別価格でふるまわれました。

【近畿大学1年】「大阪人にとってはお得なんって最高なもんです!」

【近畿大学1年】「やっと1人前の近大生になれました」

【マレーシアからの留学生】「近大マグロは一番おいしい」

【近畿大学大学院1年】「誇らしい。東京行っても、近大って何?と言われたら、近大マグロと言われるぐらいに浸透してるから、スゴイもの発明したなと感じてます」

■「養殖に力を入れるのは重要な意義」と菊地弁護士

【菊地幸夫弁護士】「乱獲で非常に少なくなってる。日本は相当な数を取る。その乱獲の責任の一端を担ってるのが日本かというところがあると思いますんで、この養殖にどれだけ力を入れるかというのは、日本が天然資源の生態系を守っていく意味でも、重要な意義があると思いますね」

近大マグロの今後は?
【近大水産研究所 升間所長】「需要の高まりで、再び乱獲の恐れもある“資源を守る”意識の高い海外に『完全養殖』を広めるためにも続ける」

この技術は、海外にも広がっていきそうです。

【関西テレビ・神崎博報道デスク】「資源は限られていて、世界の人がマグロを食べるようになってきてるので、将来的には枯渇するんじゃないかと見られてるので、完全養殖という技術を世界に輸出して、近大マグロが世界的ブランドになって、どこの国に行っても店頭に近大マグロが並んでるみたいになったら、この技術自体、日本人としても誇りでありますし、 広がっていったらいいと思います」

「安定的に獲れる」という強みを武器に、世界に誇る輸出産業の道が開かれていくかもしれません。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年10月10日放送)

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