日銀の野口旭審議委員は3日、「経済・物価情勢の見通しが想定通り実現していけば極めてゆったりとした形であれ、金融緩和の度合いを調整していく」と述べた。「時間的には余裕がある」とも指摘した。
長崎市で開いた金融経済懇談会の後に記者会見した。
野口委員は「もう少し調整の余地がある可能性は否定できないが、一段階利上げしたら様子を見て、これなら大丈夫だろうという段階でまたやっていく。ほふく前進的なやり方で利上げをせざるを得ないのが現実だ」と話した。
石破茂首相が「現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と発言したことに関連した質問が相次いだ。野口委員は「いちいち我々が反応するのは望ましくない。有権者の意識の反映でもあるので尊重するが、物価安定の目標を実現するためにどうするべきかという観点から政策変更を行う」と語った。
日本経済については「物価・賃金のゼロインフレ・ノルム(社会規範)が克服できるかの重要なポイントに差し掛かっている」と論じた。「来年以降の春闘で賃上げのモメンタム(勢い)が維持できるかどうかが非常に重要だ」と強調した。
会見前に開いた金融経済懇談会では、7月の金融政策決定会合で利上げを決めた後の株式市場の乱高下について、日銀と市場の間に経済認識を巡る齟齬(そご)があったとの見方を示し、「コミュニケーション上の努力が必要不可欠だ」と説いた。
会見では「7月は金融経済懇談会のような日銀側の見解が示される機会が少なかったと指摘される。例えばスケジュールを見直して隙間が生まれないようにしたり、審議委員の多様な考えが示される場を設定することも一つあるのかなと思う」と改善策に言及した。
野口委員は7月の金融政策決定会合で利上げに反対票を投じた2人の政策委員のうちの1人で、市場では利上げに慎重な「ハト派」とみられている。
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