日銀仙台支店が1日発表した企業短期経済観測調査(短観)によると、東北6県の9月の景況感を示す業況判断指数(DI)は全産業でプラス3と、前回調査(6月)に比べ2ポイント改善した。改善は2期連続。半導体関連需要の持ち直しや、価格転嫁の進展による企業収益の改善などが寄与した。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いて算出する。9月調査の回答期間は8月27日〜9月30日で、645社が回答した。
製造業は14業種中6業種が改善し、前回調査から4ポイント上がりマイナス5だった。改善幅としては2021年6月調査以来3年3カ月ぶりの大きさ。半導体関連需要の回復で非鉄金属、生産用機械、電気機械といった業種がけん引役となった。
非製造業は12業種中7業種と幅広く改善した。前回調査から2ポイント改善しプラス8だった。情報通信や対事業所サービスなどの業種で価格転嫁が進んだことや、運輸・郵便、宿泊・飲食サービスといった業種で観光関連需要の回復が追い風となった。
製造業・非製造業ともに改善幅は全国を上回った。日銀仙台支店の岡山和裕支店長は1日の記者会見で「製造業については半導体関連業種のウエートが東北は全国よりも大きく、半導体需要の回復が寄与している」と説明した。
半導体を巡っては、宮城県での半導体工場建設計画でSBIホールディングス(HD)が台湾の力晶積成電子製造(PSMC)との提携を解消し、PSMCが計画から撤退することを9月27日発表した。岡山支店長は「一般論として工場誘致は地域経済に様々な波及効果が想定され、宮城県の企業誘致の今後の動向を注視したい」と述べた。
業況の先行きDIは製造業が2ポイント改善のマイナス3、非製造業は4ポイント悪化のプラス4となった。
このうち製造業では輸送用機械がプラス14と22ポイントの大幅改善を見込んでいる。6月初めに発覚した認証不正の影響でトヨタ自動車東日本で3車種の生産停止が続き、足元で輸送用機械の景況感が悪化する主因となった。9月4日に3車種の生産が再開し、今後は挽回生産への期待が高まっている。
9月短観では企業収益について製造業の改善が目立つ。一方、非製造業は24年度の売上高(計画)が前年度比でほぼ横ばいで、経常利益(同)が前年度比10.1%減と前回調査から0.2%の上方修正にとどまった。岡山支店長は「非製造業でも価格転嫁は進んでいるものの、仕入れ価格や人件費の上昇が減益要因になっている」と話す。
食品スーパー大手のヨークベニマルは10月から飲料や菓子類などの値上げに踏み切る方針だが「ディスカウント店の攻勢もあり、どこまで浸透できるか分からない」と話す。今回の値上げは人件費と物流費の高騰に対応するためだ。特に人件費に関して「価格に転嫁できなければ、今の体制が維持できるか分からない」と説明する。
設備投資(土地投資を除く)はソフトウエアや研究開発を含む24年度の計画が全産業で前年度比11.3%の増加となった。「設備投資は引き続き好調さを継続している」(岡山支店長)ものの、前回調査からの修正率が1.1%減と、製造業で投資コストの上昇による先送りがみられるという。
産業ガスの製造販売で幅広い業種と取引のある東邦アセチレンの堀内秀敏社長は「設備投資関連の遅れなどでモノがあまり動いていない印象だ。鋼材価格が上がり、当初計画を見直し延期するといった話も聞こえてくる」と話す。
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