9月25日、大阪”キタ”の阪急うめだ本店と大阪“ミナミ”の高島屋大阪店で「北海道物産展」が偶然にも同時スタートしました。百貨店において物産展は意外と儲からないということですが、なぜ力を入れているのか?そもそも物産展の歴史とは?物産展にまつわるさまざまな情報をまとめました。

実は北海道でさつまいもが急増中

 阪急うめだ本店では「秋の北海道物産大会」を開催(前半:9月25日~10月1日 後半:10月2日~10月7日)。計100店舗が出店し、ソフトクリームやイートインが充実しているということで、イートインの店舗だけでも5店舗もあるそうです。

 高島屋大阪店では「秋の大北海道展」(9月25日~10月8日)。計78店舗が出店し30種類のじゃがいもが販売されるなどしています。なんとバイヤーが北海道に駐在して、現地でいいものを見つけているということです。

 そんな中で今回、この2つの物産展で特に注目なのは、どちらも「さつまいも」です。阪急うめだ本店では13店舗で、高島屋大阪店では15店舗でさつまいも商品が売られます。2、3年前までは1店舗あるかどうかだったんですが、なぜさつまいもが北海道で?と思う人もいるのではないでしょうか。

 実は、北海道でのさつまいも生産量は年々増えているんです。温暖化で暖かい地域のさつまいもが北海道でも作れるようになったことが背景の一つとしてあるようです。また、これを何とか商品化しようということでさつまいもスイーツもどんどん増えているということです。

バイヤー厳選のさつまいもスイーツ

 今回の物産展で注目のさつまいもスイーツを、それぞれのバイヤーに教えてもらいました。

 阪急百貨店のバイヤー榮川正治さんのおすすめは、北海道・赤井川村「アリス・ファーム」の「手焼きマフィンさつまいも&レーズン」(1個税込み520円 各日60個)。北海道産小麦の生地に、存在感たっぷりの北海道限定品種「由栗いも」がごろっと入り、上には甘さの違う「シルクスイート」を贅沢に使用。ラムレーズンが絶妙な風味を出しています。
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 一方、高島屋のバイヤー古川正樹さんのおすすめは、札幌市の「布袋スイーツ毘沙門天」の「道産サツマイモのシュークリーム」(税込み540円 各日70個)。平飼い卵を使ったこだわりの生地に山盛りのさつまいもがのり、中のクリームもさつまいも。

全国初の北海道物産展では「牛の乳しぼり体験」が目玉!?

 物産展の歴史を見てみましょう。全国初の物産展が行われたのは明治時代の1917年。呉服屋の三越が、デパートになった後も人を集めるために呉服の催事として開催したのが始まりだそうです。その後、各地方の呉服や織物を集めて即売会をするようになったところから、名産品も一緒に売りましょうとなったということです。ただ、当時はまだ物流が発達していなかったため、工芸品や乾物が主流でした。

 戦後の1949年、阪急うめだが山形の物産展を開催します。こけし・将棋の駒・木工品が並んだそうです。
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 その2年後の1951年、高島屋大阪店が全国初の北海道物産展を開催します。しかし当時は今のようなスイーツもない時代。そこで集客のために行われたのが「牛の乳しぼり体験」。当時の関西の人にとっては「北海道ってどこ?」というほど遠い存在だったため、インパクトを与えるために行われたということです。その後も高島屋大阪店では、1985年にキタキツネ、1990年には羊毛刈りなどの目玉イベントで北海道物産展を広めていきました。当時は鮭をくわえた熊の木彫りや毛皮などを売っていたそうです。

「デパ地下の成功」で物産展も“食”メインに

 その後も物産展は進化していきます。物産展が“食”メインになったきっかけは、1990年代~の「デパ地下」の成功です。百貨店はそれまで洋服の販売がメインでしたが、デパートの地下の食品売り場が注目されて「デパ地下」という言葉が生まれました。

 マーケティング用語の「噴水効果」で、“まず下の階にお客さまに来てもらい上の階にも行ってもらおう”、そこから「シャワー効果」で“上の階の催しを食品で成功させて下の階に行ってもらおう”ということで、食品中心の物産展になっていったようです。

 そこから時は進みさらに進化します。2010年代には北海道物産展で「限定モノ」が増加しました。当初は主に北海道の自治体が主催していたので、どこの百貨店の物産展も同じものを扱っていました。そこで差別化をするため、百貨店主催にして独自のバイヤーが誕生。今やバイヤーが現地のメーカーと相談して、物産展でしか食べられない商品を作ってもらうまでになったのです。

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