石川県の能登地域を襲った豪雨を受けて、金融機関や企業が対応を急いでいる。同県に本店を置く北国銀行や地元の信用金庫は24日、預金の払い戻しなどに応じる相談窓口を開設した。北陸電力送配電(富山市)は2100戸の停電解消に当たっている。クスリのアオキホールディングス(HD)は同県輪島市内のドラッグストア1店を24日まで一部休業した。

生活再建の途上にある住民の仮設住宅にも水害が及んだ(22日午後、石川県輪島市)

金融機関は日銀と財務省が24日、本人確認ができた場合は預金の払い戻しに応じるよう要請したのに伴い、対応する窓口を開いた。北国銀のほか能登を営業エリアとする興能信用金庫(同県能登町)、のと共栄信用金庫(同県七尾市)が営業可能な全店で開設した。

興能信金は輪島支店(同県輪島市)が浸水被害にあい、24日から一部の業務を停止している。同支店ではATMも使えない。相談は受け付けており、緊急時に限り1人10万円を限度とする払い戻しも可能だ。

北陸電力送配電の管内では24日午後6時現在で輪島市の約1100戸、珠洲市の約770戸などで停電が続く。豪雨災害が広がった21日午後2時時点の約6450戸からは減少したが「浸水や土砂崩れで復旧作業のための立ち入りが困難な場所もある」(同社)。全戸復旧の見通しは立っていないという。

クスリのアオキHDは同県輪島市の市街地にある輪島店で21日、店舗の床に泥水が浸入し、同日から休業した。24日に併設する調剤薬局の営業を再開し、25日からはドラッグストアも開く。ラーメンチェーンのハチバンは従業員の住宅に被害があった珠洲店(同県珠洲市)を26日まで休業する予定だ。

製造業では電子部品を手がけるサンケン電気の子会社、石川サンケン(同県志賀町)が能登町と志賀町に計3工場を持つ。24日から通常通り操業しているという。

石川・馳知事、床上浸水の仮設住宅視察

石川県の馳浩知事は24日午前、豪雨で被害を受けた輪島市で床上まで浸水した仮設住宅などを視察した。同日午後、県庁で開いた災害対策本部会議では河川の氾濫で田畑などに木材が多数積み重なっている状況を「1月の大震災(能登半島地震)以上の凄(すさ)まじさ」と話し、「被災者の立場に立った対応を」と呼びかけた。

輪島市の仮設住宅を視察し、住民に語りかける石川県の馳知事(右から2人目、24日)

今回の豪雨では能登半島地震以降、徐々に復旧してきたインフラが大きな打撃を受けた。同日午後4時時点で石川県が管理する道路のうち20路線34カ所が通行止めになっている。輪島市など3市町の5200戸以上で断水が発生している。携帯電話は同日午後1時30分時点で、NTTドコモなど4社とも能登のいずれかのエリアで通信に支障が出ている。

豪雨で田んぼにも流木が積み重なっている(石川県輪島市)

馳知事は対策本部会議で「河川がほぼ溢水(いっすい)している」と話し、収穫時期にあたるコメにも大きな影響が出ると指摘した。中小事業者の支援に関しては「商工会議所や石川県信用保証協会などで受け付ける。遠慮なく相談してほしい」と訴えた。

(坂田耀、後藤圭次郎)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。