日銀は20日の金融政策決定会合で政策金利を0.25%のまま据え置いた。7月会合で決めた利上げが急激な円の反転上昇と株価下落の一因となったばかりだ。利上げの影響や賃金・物価の動きを慎重に見極める姿勢は妥当だろう。
市場は落ち着きつつあるが、米連邦準備理事会(FRB)が利下げに転換したなか、海外経済の先行きは注意が必要だ。金融政策の円滑な正常化のためにも、丁寧な情勢分析や市場との対話を心がけ、政策を周到に運営してほしい。
植田和男総裁は会合後の記者会見で「経済・物価見通しが実現していくとすれば、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と述べ、追加の利上げの機を探る考えを改めて示した。
一方で利上げ時期の見極めについては「特定のタイムラインやスケジュール感をもって、ここまでに確認するというような予断はもっていない」とも表明し、慎重に判断する考えを強調した。
理由の一つは海外経済だ。植田氏は市場が不安定な背後に米景気の先行き不透明感を挙げ、「軟着陸に近いシナリオが実現するのか、もう少し厳しめな調整になっていくのか、丁寧に見極めていきたい」と語った。
日米の金融政策が逆を向くなかで、米景気の軟着陸が日銀による正常化作業の大前提となる。米景気や市場の急変動リスクに目をこらすのは当然だろう。
もう一つの理由は円安の収束だ。7月末の利上げの背景には「円安による物価の上振れリスク」があったが、足元で一方的な円売りは収まった。植田氏は「リスクは相応に減少している」と述べたうえで、政策判断には「時間的な余裕がある」と明言した。
国内では賃金上昇が続くなか、消費回復を伴いつつ「賃金と物価の好循環」が定着するのかどうかが焦点となる。内外の経済情勢をじっくりと見極め、積極的な情報発信とともに、的確な政策判断に結びつけてほしい。
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