(ブルームバーグ):米国のエネルギー企業による新たな天然ガス火力発電所の建設計画が、ここ数年で最速ペースとなっている。これは、化石燃料がこれまで考えられていたよりも長い期間、利用される可能性が高いことを示す最も明白な兆しの一つだ。
フロリダ州やオレゴン州など全米各地の電力各社は電力消費の激しい人工知能(AI)データセンターや製造施設、電気自動車(EV)からの需要急増に対応しようと急いでいる。
米国の電力源として2016年に石炭を抜いて1位となったガスの利用持続は、国内需要の急激な伸びが近く終わると予測していた一部の専門家を驚かせている。
投資銀行ウィリアム・ブレアのエネルギー・持続可能性セクター担当グループ責任者ジェド・ドーシャイマー氏は、「数年前にはソーラー・風力発電の増強で発電ニーズを満たせるという期待があった」と説明。「石油とガスはピークが見込まれ、最終的にはそうした見方は正しいだろう」と述べたが、それがすぐには起こることはなさそうだ。
同氏は現在、新たな発電の最大6割をガスが占めるとみている。
メタン漏れ
天然ガスの長期利用は環境への大きな影響をもたらすが、その方向性については意見が分かれている。
シェールガス革命による米国の安価な天然ガスの豊富さが、炭素排出量の多い石炭発電の衰退を加速させている。ガス推進派は長年にわたり「つなぎ燃料」、つまり、より炭素排出の多い化石燃料からの移行を促進するものとしてガスを推奨。
また、風力・ソーラー発電を大規模に導入する電力網のバックアップを支える上でも、天然ガス発電所は魅力的だ。
エジソン電気協会(EEI)のダン・ブルイエット会長は「天然ガスは電力網の信頼性を維持し、再生可能エネルギーの展開を拡大するために不可欠なパートナーだ」と述べた。
だが、ガスインフラはメタン漏れも起こしやすく、メタンは大気中に放出されてから最初の20年間で二酸化炭素の80倍の温暖化効果をもたらす。
そして、新しいガス発電所が稼働し始めると、40年以上稼働し続ける公算が大きい。つまり、新しい施設の建設を今承認することは、温室効果ガス排出実質ゼロの電力セクターを実現するというバイデン大統領の期限目標である35年を何十年も超え、危険な温暖化ガス排出を固定化するリスクを負うことになる。
バージニア州でグリーンエネルギーを推進するクリーン・バージニアのディレクター、ケンドル・コバービッグ氏は「石炭やガス発電所のようなコストがかかり、環境を汚染するインフラから脱却しようとしているわれわれだが、今は逆方向に向かっている」と語った上で、「多くの人が痛めつけられていると感じている」と主張した。
今年1-6月(上期)だけでも、企業が発表した全米での新たなガス発電容量の建設計画は、20年1年間の総計を上回っていることが、自然保護団体シエラクラブのデータから明らかになっている。
そして、7-12月(下期)が1-6月期と同じ傾向なら、シエラクラブがデータ集計を開始した少なくとも17年以降、24年は最も多くの新たなガス発電容量の建設計画が打ち出される年になる。今年発表された容量だけを見ると、テキサス州が最も多くの新たな発電を進めている。
原題:AI’s Massive Power Needs Drive a Surprise Renaissance for Gas(抜粋)
(最終段落に加筆して更新します)
--取材協力:Raeedah Wahid、Alex Newman.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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