(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)は12日、政策金利引き下げを発表した。インフレ率が2%に向かって低下する一方で景気への懸念は深まり、6月に続き今サイクルで2回目の利下げを決めた。

ECBは中銀預金金利を0.25ポイント引き下げ、3.50%とした。ブルームバーグの調査に答えたアナリスト全員の予想通りだった。中銀は今後の金利について特定の道筋にコミットすることはできないとあらためて表明した。

ラガルド総裁は決定発表後にフランクフルトで記者会見し、「われわれはデータに依存する姿勢を崩さない。不確実性に満ちていることを考えれば、それは特に正当化される」と述べた。決定は全会一致だったと付け加えた。

「利下げの道筋は、順序についても規模についても、事前に決定されるものではない」と語った。

 

短期金融市場はECBの利下げ見通しをやや拡大させ、年内の追加利下げ幅を36ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と織り込んだ。これは0.25ポイントの利下げがもう一度あることを完全に織り込んでいるが、それが2回ある確率は50%未満だと予想されていることを意味する。

ECBはインフレ率が目標値に戻りつつあるとの自信を深めている。一方、ユーロ圏経済は勢いを失いつつある。消費は年前半の回復を維持できず、製造業は外需の弱さにより低迷を続けている。

これを受け、ECBは2024、25、26年の域内総生産(GDP)見通しを引き下げた。今年については0.8%増と、前回予想の0.9%増から下方修正した。インフレ見通しはほぼ据え置かれた。

 

ラガルド総裁は「回復は幾つかの逆風に直面している」と述べ、リスクは依然として下向きに傾いていると強調した。「景気抑制的な金融政策の効果が徐々に薄れ、消費と投資を下支えするはずだ」と続けた。

インフレについては、労働コストの全体的な伸びは緩やかになっているものの、賃金上昇率は高く変動の大きい状態が続くだろうとの見通しを示した。

他の2つの政策金利であるリファイナンスオペの最低応札金利と限界貸出金利は、それぞれ60bp引き下げられた。これは長期的な戦略転換の一環で、差し当たっての影響はほとんどない。

8月のユーロ圏インフレ率は2.2%に低下し、特にサービス部門の物価上昇の原動力となっていた賃金の指標は上昇ペースの鈍化を示した。従業員1人当たり報酬の上昇率は4-6月(第2四半期)に4.3%と、前四半期の4.8%から低下した。

ユーロ圏、1人当たり雇用者報酬の伸びが鈍化-ECBに安心感

ECBは声明で「インフレ見通し、基調的なインフレの動き、金融政策の伝わりの強さに関する政策委員会の最新の評価に基づき、金融政策による景気抑制の度合いを緩やかにするためもう一歩踏み込むことが今や適切だ」と説明した。

しかし、危険は去っていない。8月のサービス価格上昇率は4.2%に加速した。これはパリ五輪の押し上げがあったためとみられるが、インフレ脱却の勝利宣言を行うにはまだ至らないとみる政策委員も少なくない。

シュナーベル理事は、利下げは機械的なものではなく「データと分析に基づかなければならない」と主張。チーフエコノミストのレーン理事は、インフレ率2%への回帰はまだ「確実」ではないと述べた。

 

一方でレーン氏は、高い借り入れコストが経済の息の根を止めることがあってはならないと警告している。第2四半期のユーロ圏成長率改定値は前期比0.2%と、速報値の0.3%から下方修正された。

ブルームバーグが実施したアナリスト調査の中央値では、ECBが25年9月まで四半期ごとに利下げを行うと見込まれたが、経済の低迷を理由にペース加速を予想する向きもある。ゴールドマン・サックス・グループは、中銀預金金利が2%に達する来年7月まで、今年12月から毎回の会合で利下げが決定されるとみている。

ゴールドマン、ECBと英中銀の予想修正-利下げペース速まると予想

原題:ECB Cuts Rates Again as Inflation Fades and Economy Stumbles (3)(抜粋)

(ラガルド総裁のコメントなどを追加します)

--取材協力:Sonja Wind、Alessandra Migliaccio、James Regan、William Horobin、Daniel Hornak、Barbara Sladkowska、市倉はるみ、Joel Rinneby、Laura Alviz、Libby Cherry、Carolynn Look、Fergal O'Brien、David Malingha、Constantine Courcoulas、Laura Malsch、Alexey Anishchuk.

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