記者会見する日銀の田村直樹審議委員(12日、岡山市)

日銀の田村直樹審議委員は12日の記者会見で、今後経済・物価情勢が見通し通りに推移すれば「段階的に金利を引き上げ、経済・物価の反応を確認し、適切な短期金利の水準を探っていく必要がある」との見解を示した。

利上げぺースは「ゆっくりとしたペースになる可能性が高い」とも述べた。

田村氏は12日午前の講演で、景気を過熱せず、冷やしもしない中立金利の水準は「最低でも1%程度だろう」との見方を示した。2026年度までの見通し期間の後半に「少なくとも1%程度まで短期金利を引き上げていく」ことが必要と語った。

記者会見で年内に追加利上げすべきと考えるかを問われた田村氏は「今後の経済や物価、金融情勢次第であり予断は持っていない」として明言しなかった。1%に到達する詳細な時期についての言及も避けた。

中立金利の推計には幅があり、日銀の関連する試算をもとにすれば1〜2.5%程度との見方がある。植田和男総裁も、7月末の金融政策決定会合後の記者会見で「中立金利に関しては大幅な不確実性がある」として、中立金利に近づいた際に「どの辺で利上げをストップするのかというのは大きな課題だ」と述べている。

田村氏は12日の記者会見で「1%と決め打ちしているわけではない」としつつ「金融実務家として企業や家計と接してきた感覚で、このところ企業や金融機関の経営者の声を踏まえてイメージしている水準だ」と説明した。「一定の水準を念頭に置いた方が適時段階的な調整ができる」と述べた一方で、経済・物価情勢次第では上下に振れる可能性があることを強調した。

日銀は7月会合で追加利上げを決め、政策金利を0〜0.1%から0.25%へ引き上げた。市場はサプライズと受け止め、利上げ後に為替相場は急激な円高・ドル安進行が進み、株価が暴落した。

日銀は4月以降、経済や物価が見通し通りに推移すれば「金融緩和度合いを調整していく」(植田総裁)と説明してきたが、市場では「日銀の意図とは異なるニュアンスでの受け止めもあった」(田村氏)。それに対する「日銀の情報発信はタイミング含め改善の余地があったと感じる」と振り返った。

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