(ブルームバーグ):ネット証券が投資信託市場でシェアを拡大している。新NISA(少額投資非課税制度)適用開始を契機に、投資初心者を中心としたネット経由の資金流入が継続しているようだ。8月上旬の金融市場の混乱後も傾向は大きく変わらないとみられ、対面営業優位の構図が変わり始めている。

野村総合研究所の推計によると、主要ネット証券を通じて販売された公募投信の残高シェアは、6月末に初めて20%の大台に乗せた。NISAで積み立て投資への対応が図られた2018年ごろから徐々に増えていたが、投資枠の拡大などNISAの優遇が強化された今年は、半年で4ポイント近く上昇した。

ネット証券は、商品ラインアップの豊富さや手数料の低さを売りに顧客である投資家のすそ野を広げてきた。野村総研の金子久チーフリサーチャーは、年初からの新NISAも使い、初めて投信を購入する個人投資家などにとってネット証券は、「まず選択肢として挙がってくる」と指摘する。

8月上旬には、純資産の変動要因となる世界的な株価や為替相場の乱高下が起きたが、その後の顧客の行動に「大きく影響を与えるほどではなかったのではないか」と金子氏はみている。背景にはネット購入層に長期投資の考え方が広がっていることがあるという。

NISA資金流入や株価上昇に伴う資産効果もあり、公募投信の純資産総額が6月末で237兆3889億円と過去最大規模に拡大する中、ネット証券はシェアも伸ばした。運用報酬は基本的に純資産額に応じて販売、運用、受託会社に配分されるため、投信業界全体に貢献した格好だ。今後も中長期的に「ネット経由」のシェア拡大が見込まれる。

 

シェアが下がったのは、対面営業主体の金融機関だ。15年ほど前にシェア5割超を誇った「銀行等」は3分の1近くまで減少、「非ネット証券」も4割台前半に低下した。

ただ、金融資産を多く持つ高齢者ほど対面取引を好む傾向もあり、銀行等と非ネット証券の合計でまだ8割近くを占める。株式相場が乱高下した局面では、顧客に寄り添ってフォローする強みを再評価する声も広がった。

攻防が激化するのは、むしろこれからだ。20-30代で投信をネット購入する人の割合は多く、金子氏は公募投信残高は20-30年後には「ひょっとすると8割ぐらいネットでの購入になる可能性がある」と言及。伝統的な販売会社は、対面の強みを生かした上でネットを融合する形で「ビジネスの変革を迫られる」と指摘している。

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