【スパリゾート】丸新岩寺(札幌)は温浴施設「ほのか」を道内と千葉県に計9店舗を構え、グループ会社で新琴似温泉壱乃湯などの公衆浴場、ビジネスホテルなどを展開している。代表取締役の高橋祐一さんに経営ビジョン「日本をあったかくする」について聞きました。
ワーキングホリデーでカナダへ 出会った日本人は夢があり、輝いて見えた
――ご出身はどちらですか? どんなお子さんでしたか?
出身は神奈川県です。小学校の通信簿で落ち着きがないって書かれていました。小学1年のときはよく廊下に立たされ、ときには机ごと廊下に出されるような子どもでした。
――結構、やんちゃですね。学生生活はどういうふうに過ごされましたか?
高校まで神奈川で過ごし、親元から離れたい一心で、北海道の情報系の大学に進学しました。大学3年生が終わって2年間休学して、1年間でアルバイトをしてお金を貯め、ワーキングホリデーでカナダのバンクーバーに1年間、行きました。そこで会った日本人の方は夢を持ち、すごく自立していて、みんな輝いて見えました。自分も海外で働きたくて、SEであれば海外で働くチャンスがあると思ってSE系の派遣会社に就職しました。電気メーカーに派遣され、7年間ほど勤めました。
結婚し、SEから転身 サービスを一から学び、新店舗の立ち上げ責任者に
――どういうタイミングで丸新岩寺に入るなど、北海道との縁が再びつながりますか?
大学のときにお付き合いしていた方と、たまたまご縁があって、SE時代に復縁しました。その方の実家が札幌で、結婚して札幌に移住しました。妻の父から一緒に働かないかと、お声を掛けられ、入社させていただいたという流れになります。
――SEと、温浴施設などの運営は全く違います。入社して苦労されませんでしたか?
今までの経験を生かすより、一から学ぼうという姿勢でした。入社してすぐ当時、運営していた小樽のリゾートホテルに勤務して、レストランのホールやフロント業務をしながら、2年半ぐらいサービスの勉強をさせていただきました。その後、森林公園温泉「きよら」を弊社が手掛ける話が出て、責任者として立ち上げました。その後、「ほのか」の1号店となる「湯処 ほのか」(北広島市)も責任者として立ち上げました。
縁が縁を呼び、事業を拡大 どんな人も楽しめる施設づくりが奏功
――たくさんの店舗がありますが、最初の店は北広島だったんですね。北広島の「ほのか」はゼロからの立ち上げたのですか?
営業していた方から、ご縁があり、引き継ぎを持ち掛けられ、受け継ぎました
――店舗を増やすぞという思いで増やしてらっしゃるんですか?
本当にご縁でお話をいただき、どんどん店舗展開をしていったという流れになります。
――温泉、サウナはもちろん、休憩する場所の作りなどから、1日でものんびり過ごせる施設です。そのあたりのコンセプトはどう作っていますか?
私は実はそんなにお風呂が好きではありませんでした。シャワーで十分みたいな感じでした。お風呂が好きな人はもちろん、お風呂があまり好きじゃない方も楽しめる施設作りをしたいという思いがありました。(入浴以外の)時間を暇にさせないよう、さまざまな仕組みを考えました。家族で来ると、お父さん、お母さんと、お子さんがそれぞれの楽しみ方ができる施設を考えています。例えば、お母さんはお風呂に入ったり、岩盤浴をやったり。お父さんはレストランでビールを飲み、お子さんは漫画やインターネットを楽しむなど、それぞれ楽しめるような施設を作っています
――「ほのか」さんは道外にもお店があります。「本州に進出するぞ」という思いですか?
道外は千葉県に2店舗を運営しています。それもご縁ですね。たまたま千葉県に空く施設があるのでどうですかという話が先代に来て、挑戦してみたいと進出したのです。
――店舗展開は縁でつながっているんですね。お店は増やしていきますか?
ご縁があれば広げていきたいとは思っています。
コロナ感染症の流行で休業する事態に 窮地に陥って気づいた現場力の強さ
―― 経営者になられたのはいつですか?
2021年です。
――2021年はコロナ感染症の(流行の)まっただなかです。コロナの影響をもろに受け、大変だったのではないですか?
「ほのか」も1カ月半ほど休業しました。そのときは売り上げがゼロです。お店が開けられず、すごくショックを受けました。
――釜の火を止めるのはどんな思いでしたか?
切なかったです。そのときは、今できることをやろうと、現場のスタッフが率先してお弁当を作って、駐車場で売ったり、キャンプ用地を造ったり、弊社の温泉を使った化粧品の開発をしたり、社員全員で乗り越えてきました。
――大きく影響を受けたコロナ流行時の経験は生きていますか?
現場の力ってすごく強いと思いました。指示しなくても、みんなが率先していろいろとやることが分かりました。現場の力の強さは今でも生きていると思います。
地域のため休まず営業がモットー 働きやすく働きがいのある環境を整備
――高橋さんは何代目社長ですか? 先代や、会社に流れる哲学で受け継いだものはありますか?
私は3代目ですが、創業者が事業を始めたころは各家庭にお風呂がまだない時代でしたので、人々の衛生や生活を守るというような思いで営業していました。休めば、ご迷惑をかけるとして営業していたと聞き、私もその思いを引き継いでいます。機械のトラブルでも、自分たちで直し、対応できない場合も、できる限りその日のうちに直しています。
――経営者として、どういうことに力を入れていますか?
お客様を喜んでいただくためには従業員の方が楽しんで働かないといけないと思います。いかに働いている人が働きやすくて働きがいのある職場を作るか―を大切にしています。介護や育児をされている方が働きやすいように、時間当たりの有給休暇や短時間勤務を導入し、副業を解禁しています。遠くから通勤する方には条件に合えば、高速道路の利用を認めています。従業員の方から話を聞いて少しずつ改善しています。
地域住民の居場所を提供、 体も心も温まる世の中に向け、「源泉でありたい」
――どういう未来のビジョンを描かれていますか?
お風呂はコミュニティとして地域の人が顔を合わせて体だけでなく、心も温まるように、「日本をあったかくする」というビジョンを掲げています。世の中は、人とつながる場所がどんどん少なくなっていると思います。「ほのか」が地域の方の居場所となれば良いと思います。お風呂だけでなくて、人とのつながりや人のやさしさを通じて、みんなの心も体も温まるような世の中になればと思い、われわれは源泉でありたいと願っています。
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