1988年生まれ、中国出身。大連外国語大学卒業後、日本の武蔵野大学の大学院で学んだエダ氏。Forbesの資産家ランキング上位の起業家など世界の超富裕層からの信頼も厚い
円安、低金利、質の高さ──。相対的な割安感もあり、海外投資家による日本の不動産取引が活発になっている。だが、「人気の理由は円安だけではない」と投資用不動産の売買、仲介、管理で業績を伸ばしているポスト・リンテルグループ常務取締役のエダ(Ada)氏は指摘する。
外国人が日本で土地や建物を所有する際、永住権や日本国籍の有無、ビザの種類などによる規制はない。実は、これは世界でも稀な例だ。例えば2023年4月、シンガポールでは外国人が全ての不動産を取得する際の税金が既存の30%から60%へと倍増した。
エダ氏は「海外だと税制が一瞬で変わることも珍しくない。日本は社会、経済、治安が安定しており、変動が少ないことも海外投資家にとって魅力的。彼らは日本人以上に、日本のマーケットの良さを理解している」と指摘する。24年後半もインバウンド需要がマンションなどの不動産価格を下支えすると見られ、不動産業界は好調をキープすると予測されている。
なかでも熱視線が送られるのが、ホテル投資だ。訪日外国人観光客の急激な回復を背景に、その高い収益性とインフレに強い資産であることが注目を集めている。オフィスビルや賃貸住宅など、数あるアセットタイプの中でも特徴的と言える点は、実際にホテルの経営を担うことになる運営会社の選択が、収益のカギを握ること。エダ氏は「運営会社、運営方法を変えたことで収益が1.5~2倍になった例は少なくない。ホテルオーナーは不動産だけではなく、『運営会社のノウハウ』を買うことになる」と言う。そのため同社では案件のソーシング、ホテルの規模と投資家の属性に合わせた運営会社の選定、運営条件の調整、融資のアレンジメント、購入後の管理を含めたワンストップサービスを提供している。
ブルガリ ホテル 東京に社費で宿泊 物件を見る目を徹底的に養う
不動産業界において、専門知識が求められるホテル投資の主力を担うのは大手不動産仲介会社だ。そんな中にあって、ポスト・リンテルの取扱物件のうちホテルは5割を占める。中小企業の同社が、なぜ業界で存在感を発揮しているのか。その秘密は、地道な努力と先見性にある。
エダ氏らは「コロナ後、ホテル需要は必ず戻る」と見越し、インバウンドが急激に落ち込んだ期間をホテル投資の調査に費やした。それと同時に、その三年間で東京、大阪、京都で20棟以上のホテルを仲介した。
ホテルに限らず土地活用やレジデンスにおいても、同社の強みは「とにかく足を使うこと」。年間2~3回実施される海外視察ツアーでは朝から晩まで新築マンションやホテル、中古物件を見学。ディベロッパーに「この物件は、なぜこの仕様になっているのか」と細かく質問し、知見を深めている。付き合いのある海外投資家の所有物件に招待され、より実際の使われ方に近い状態の不動産を内見できることもあるという。
国内でも「ブルガリ ホテル 東京」をはじめ、従業員は研修のため様々なホテルに宿泊。費用は全額会社負担だ。「顧客は超富裕層。数十億単位の取引をする相手と対峙するには、日本の不動産の専門性を俯瞰的に話せることが求められる。そのためには、徹底的に足を運ぶしかない」とエダ氏は断言する。圧倒的な経験と情報量が、投資家から絶大な信頼を集めているのだ。
グローバルな環境に身を置き、社員の意識と能力を高める
写真左からポスト・リンテルの王(ワン)氏、伊藤氏、エダ氏、大野氏、程(テイ)氏。「海外出身者は日本人よりストレートに物事を言う傾向がある」とエダ氏は言う。活発に意見を交換し合えるチーム力の高さは、他社にはない同社の強みだポスト・リンテルの取扱件数の8割以上は、中国、香港、台湾といった海外の顧客を相手にしたクロスボーダー取引。そのため世界経済、政治、通貨の動きなどグローバルな情報のチェックを毎日欠かさない。常にアンテナを張っていないと、投資家との会話が成立しないからだ。
「大切なことは全て投資家に教えてもらった」とエダ氏は続ける。海外の投資家は日本の投資家以上に「見積もりやスケジュール、重要事項説明書の内容を非常に細かくチェックする」。そのため「契約書には解釈が2つあるような曖昧な翻訳、説明を避けるなど、法律に関する知識も深まった」という。
顧客もさることながら、同社の社内環境もグローバルだ。グループ全体の従業員の半数以上は、中国、台湾、香港、韓国、シンガポール、イギリスなどの海外出身。加えて、国内の大手不動産業界で活躍した人材が続々と同社に集結しており、「日系、外資とは違う第3のジャンル、"ミクスチャー"と呼べる面白いチームが出来上がっている」と同社代表取締役社長の坂東多美緒氏も太鼓判を押す。同社では、経験者・未経験者を問わずさらなる新しい仲間を募集中だ。
社内では、ビジネスマナー全般を網羅したオンライン講座、日本語・英語の語学研修も活発に行われる。未経験者でも成長意識の高い社員に囲まれた環境で、自身のステージアップを追求できるだろう。中国出身のエダ氏は、「色んなシナリオを想定するのが日本の文化だとしたら、中華圏は特にスピード勝負。駄目だったら他の方法を考えるのが我々のやり方。就業員同士で互いの文化・価値観を尊重し、不動産におけるバリューアップを追求している」と、さまざまなバックラウンドを持つ社員が集まる環境ならではのメリットを語る。
同社は「不動産は国籍、人種、宗教を問わず世界中の人々の幸せを具現化するもの」という理念を掲げ、その体現を志しているという。今後目指すのは、アジアナンバーワン不動産ソリューションカンパニー。目標の実現のため、欧米を含めた全地域に視野を広げ、人材育成にも力を入れる。中小ならではの高い機動力、独自性、ユニークな人材やチーム力を武器に、不動産業界で激化するグローバル競争を勝ち抜こうとする姿勢には、今後も要注目だ。
エダ(Ada) ポスト・リンテルグループ常務取締役
2012年武蔵野大学大学院ビジネス日本語修士課程を修了後、デュアルタップ社に入社、クロスボーダーのチームの立ち上げメンバーとして、インバウンド・アウトバウンド事業を担当した。その後、ポスト・リンテルグループのCo-founderとして、会社を立ち上げ、2022年より現職
●問い合わせ先
株式会社Post Lintel Investment Management
https://plim.jp/
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