(ブルームバーグ):世界の主要中央銀行3行の当局者は、今後数カ月以内に政策金利の引き下げに着手ないしは継続する方針を固めていると示唆した。世界経済が新型コロナウイルス禍後のインフレの呪縛から抜け出す中、高金利時代が終わりの始まりを迎えている。

「政策を調整する時が来た」と、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長はワイオミング州ジャクソンホールで開かれているカンザスシティー連銀主催の年次シンポジウムで発言。9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げに踏み切ることをほぼ確約した形だ。

米利下げ開始時期がほぼ確定し、世界の主要中銀の多くが同じ方向にかじを切ったことで投資家の不安はいくらか解消された。しかし、依然として大きな不確実性とリスクが残っている。パウエル氏と他の主要中銀総裁は、今後数カ月にわたる金利引き下げペースについて、いずれも明確なガイダンスを示さなかった。そうした不確実性の中、労働市場と全体的な成長の弱さが政策当局者にとってインフレに代わる最大の脅威となっている。

ジャクソンホール会合には欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバー数人も出席した。

ワイオミング州ジャクソンホールで開かれている年次シンポジウムで講演するパウエルFRB議長

フィンランド中銀のレーン総裁、ラトビア中銀のカザークス総裁、クロアチア中銀のブイチッチ総裁、ポルトガル中銀のセンテノ総裁は、いずれも6月の利下げに続き、来月の追加利下げを支持する意向を示した。

レーン氏はユーロ圏におけるディスインフレの進行を「順調」と表現する一方で、「欧州の成長見通し、特に製造業はかなり低調だ」と指摘。「これは9月利下げの妥当性を裏付けるものに見える」と述べた。

センテノ氏は、インフレと成長に関するデータを踏まえると3週間以内に追加利下げを行う決定は明快だとの見方を示した。

英中銀総裁、追加利下げにオープンな姿勢示唆

ユーロ圏の政策当局者らは、経済成長が今年前半の好調から勢いを失いつつあることに懸念を強めているようだ。労働市場の軟化にも懸念を示す一方、インフレについてはそれほど心配していない様子だ。ECBの責務に雇用は含まれていない。

ECB当局者の間では、インフレ率が金融当局の予測に沿って推移する限り、9月を含め年内にさらに2回の利下げを行うというコンセンサスがまとまりつつあるようだ。ECBは2025年下期にはインフレ率が2%目標まで低下すると予想している。

イングランド銀行(英中銀)のベイリー総裁は23日のジャクソンホール会合での講演テキストで、持続的なインフレのリスクは後退しているように見えると述べ、追加利下げにオープンな姿勢を示唆した。講演テキストは事前に公表された。

左からパウエルFRB議長、カナダ中銀のマックレム総裁、イングランド銀行のベイリー総裁(23日、ワイオミング州ジャクソンホール)

英中銀は今月、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)初期以来となる利下げを実施。政策金利を0.25ポイント引き下げ、5%とした。

カナダやニュージーランド、中国の中銀も金融緩和を実施している。大きな例外は日本で、日本銀行は今年、17年ぶりに金融引き締めサイクルに着手した。

パウエル議長は「方向性は明確であり、利下げのタイミングとペースは今後入手するデータ、変動する見通し、そしてリスクバランスに左右される」と述べ、9月以降の動きについてガイダンスのようなものはほとんど提供しなかった。

ただ、今後はインフレよりも労働市場からより多くのシグナルを得る見込みであることを示唆した。

KPMGのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は「今回のスピーチで、労働市場が今や最優先事項であることが明確に示された」と分析した。

原題:Major Central Banks Now Aligned as Powell Signals Fed Cuts Ahead(抜粋)

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