記者会見で頭を下げる小林製薬の小林章浩社長(中央)ら=3月22日、大阪市中央区

小林製薬が製造・販売した「紅麹(べにこうじ)」成分のサプリメントを摂取した人に健康被害が広まっている問題を巡り、健康被害の情報が同社に寄せられた後の今年1月から2月にかけて開かれた取締役会が、情報共有の迅速化などを議論しながら、その場にサプリの被害情報が報告されていなかったことが分かった。問題を受け、同社は品質管理や危機管理の体制見直しなどを社外取締役を含む取締役会の定期的な議題に設定した。

同社の取締役会は、小林一雅会長、小林章浩社長、山根聡専務の社内出身者3人に加え、コーポレートガバナンスの第一人者として知られる伊藤邦雄・一橋大名誉教授ら社外取締役4人の計7人で構成している。

同社は昨年10月から、コーポレートガバナンス(企業統治)の強化を図ろうと取締役会が有効に機能しているかどうかを評価する作業を進めてきた。そうした中、今年2月21日の定例取締役会では「取締役会当日の議論の充実のためには事前説明の活用が欠かせない。資料の配布時期を早める」など、社外取締役への迅速な連絡に取り組むことを決議。しかし、すでに会社側が把握していた健康被害情報はこの場で共有されなかった。

同社はその後3月28日に開催した取締役会で、紅麹サプリ問題を受けた再発防止策、リスク管理強化、品質管理体制と危機管理体制の見直し、情報共有・情報発信のあり方などを定期的に議論することを決めた。

紅麹サプリ問題を巡っては、取締役の中で社内の小林社長と山根専務が執行役員中心の経営執行会議でほぼ1週間ごとに報告を受けていたのに対し、社外取締役らは3月20日の会社側からの取締役会開催連絡まで事態を知らされていなかったことが分かっている。

慶大大学院の斎藤卓爾教授(企業統治論)は「情報が入らなければ判断ができないという社外取締役の限界が明確に出た。危機管理のどの段階で社外取締役を議論に入れるかなど、意思決定のルールを事前につくることが必要ではないか」と指摘。そのうえで「社外取締役が今回の経緯を検証し、社長らの経営責任を問えるかどうか。今後、ガバナンスの機能が試される」と指摘した。(牛島要平)

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