(ブルームバーグ):9日の日本市場では株式が上昇。米国の過度な景気悪化懸念が和らぎ、投資家心理の改善から買いが先行した。ただ、3連休やお盆休み中の相場変動リスクが警戒される中、買い持ち高を手じまう動きも出て、午後には下落に転じる場面が見られた。

円相場はリスク許容度の改善を意識した売りが先行した後、日本株の失速に伴い買い優勢となり、一時1ドル=146円台に上昇した。債券相場は米長期金利の上昇を受けて中長期債中心に下落。

8日の米国市場では新規失業保険申請件数が約1年ぶりの大幅減少となったことを好感し、S&P500種株価指数が2022年11月以来の大幅高となった。日本株も追随し、日経平均株価は800円超上げたが、午後に入ると急速に伸び悩み、一時マイナス圏に沈んだ。過去最大の下げ幅と上げ幅を記録した週前半から徐々に落ち着いてきたとはいえ、この日も不安定な値動きが続いた。

株式

東京株式相場は上昇。円相場とともに不安定な値動きが続いたが、米労働市場の回復の兆しがセンチメントの支えとなった。

日経平均株価は840円高から午後に一時385円安となり、TOPIXもマイナスに転じる場面があった。

しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーは、連休やお盆休みを前に相場が動いており「ポジションを抱えて越したくないという心理が働いているのではないか」と指摘。為替が円高方向に進んいることも株価の重しになった可能性があるとの見方を示した。一方で、「値上がり銘柄数の方が多く、全体的に調整に入っている感じではない」とも述べた。

TOPIX指数構成銘柄2133のうち、1555銘柄が上昇、523銘柄が下落。東証33業種中、非鉄金属やサービス業など23業種が上昇し、電気・ガスや空運業などが下げた。

8日に発生した日向灘を震源とする地震を受けて、建設株が上昇。気象庁は同日、次の巨大地震に注意を呼びかける「南海トラフ地震臨時情報」(巨大地震注意)を発表した。8日に予想を上回る決算を発表したリクルートホールディングスが大幅高で、TOPIXの上昇をけん引。米国債利回りが3日連続で上昇したことを受け、三井住友フィナンシャルグループなど銀行株も買われた。

為替

東京外国為替市場の円相場は底堅く推移。前日の米国株高や日本株の上昇を受けた投資家心理の改善で1ドル=147円台後半まで売りが先行したが、株価が下落に転じるのに伴い、一時買い優勢となった。3連休やお盆休みを前した輸出企業の買いも円の支えとなった。

あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、日本株や米国株先物、米金利の低下にあわせて円買いになったと説明。「米新規失業保険申請件数の改善が安心感にはつながったが、市場全体のボラティリティーも高いため、まだ警戒は緩められない」と述べた。

債券

債券相場は下落。米国で景気懸念の緩和により金利が上昇したことで、売りが優勢になった。金融市場が落ち着きを取り戻しつつある中、中期債で日本銀行による利上げの織り込みを回復させる売りも出た。一方、8日の30年債入札が順調だった超長期債には買いが入った。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジスは、米国債利回りがベアフラット(平たん)化した影響に加え、8日公表の日銀の「主な意見」で中立金利1%の言及があったことが意識されており、「利上げ織り込みが剝落し過ぎていた部分には修正が入っている」と述べた。

大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジストは、午後は超長期債が買われて先物が下げ幅を縮小しており、「30年債入札が予想より堅調だったので買い戻しが続いている印象だ」と述べた。もっとも、金融市場全体が急変動後のストレスを抱えている状況の中で「債券市場の流動性も低く、相場の地合いも日替わりで不安定だ」と話した。

新発国債利回り(午後3時時点)

--取材協力:我妻綾.

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