6月の金融政策決定会合後、記者会見する日銀の植田和男総裁(日銀本店)

日銀は5日、6月13〜14日に開いた金融政策決定会合の議事要旨を公表した。9人の政策委員は「経済・物価見通しが上振れたり、上振れリスクが高まったりする場合も利上げの理由となる」との見解を共有した。7月の追加利上げに向け認識の擦り合わせを進めていたことが浮き彫りとなった。

日銀は3月会合でマイナス金利を解除し、無担保コール翌日物レートを政策金利とし、0〜0.1%に誘導すると決めた。6月会合では、4月会合に続いて短期金利を据え置き、その後の7月会合で0.25%への利上げを決めた。

6月会合当時に進んでいた円安と金融政策の関係について積極的に議論した様子がうかがえる。9人の委員は「最近の円安の動きは物価の上振れ要因で、金融政策の運営上、注視する必要がある」との認識を共有した。

委員の一人は「円安は物価見通しの上振れリスクを高める要因だ。現実の物価が2%を超えていると踏まえると、物価の上振れリスクが顕在化した際に生じる損失も高まっている」と指摘した。「リスクマネジメント・アプローチに立って考えれば、適切な政策金利の水準は、そのぶんだけ引き上がると考えるべきだ」とも話した。

「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)から乖離(かいり)した為替水準が続けば国民経済の健全な発展に影響が及ぶ。金融政策は経済・物価情勢の全体像をみて運営していく必要がある」と発言した委員もいた。

今後の金融政策について、委員の一人は「最近のコストプッシュ圧力の再度の高まりを背景とした価格転嫁が進み物価が上振れる可能性もある。リスクマネジメントの観点から金融緩和の度合いを更に調整することの検討も必要だ」と意見した。

別の委員は「物価の上振れリスクも出てきている」との見解を示し「消費者マインドに影響していることも意識しつつ、目標実現の確度の高まりに応じて、遅きに失することなく、適時に金利を引き上げることが必要だ」と述べた。

6月会合で日銀は長期国債の買い入れを減らす方針を決め、7月会合で具体的な減額計画を発表すると予告した。

多くの委員は「日銀の国債市場におけるプレゼンスの大きさを踏まえると、減額の過程における国債市場の安定に配慮するため柔軟性を確保することも重要」と指摘した。ある委員は「今後の国債保有構造のあり方を念頭に、中長期的な観点から新たな市場構造を議論していく必要がある」との見解を示した。

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