(ブルームバーグ):7月の米雇用統計では、雇用者数の伸びが市場の予想以上に減速。失業率はほぼ3年ぶりの水準に上昇した。労働市場が従来の想定よりも速いペースで悪化していることが示唆され、9月利下げへの道筋がほぼ確実となった。

非農業部門雇用者数の伸びは過去2カ月分、下方修正された。

失業率上昇の背景には、新たな労働者が労働力として参入したというよりも、職を失い離職した人が多かったことがある。一方で、労働市場を退出していた人が復帰しており、参加率の上昇に寄与した。

労働者の大半を占める生産部門および非管理職の賃金は、平均時給と同様に鈍化した。

今週は期待外れの経済指標が相次いで発表され、景気が急減速しているとの懸念が高まり、株式市場で売りを誘発、米国債利回りは低下した。今回の数字を受けて米金融当局者は、金融政策が労働市場を新型コロナ禍前の健全なトレンドに戻すよりも、むしろ過度に鈍化させていると考える可能性がある。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は7月31日、連邦公開市場委員会(FOMC)会合後の記者会見で、インフレがコロナ禍のピークからおおむね下がってきていることから、当局者は2大責務のもう一方への注力を強めており、労働市場への過度な打撃を防ぎたいとの考えを示していた。

パウエル氏は「早ければ次回9月の会合で政策金利の引き下げが選択肢となり得る」とも述べた。短期金融市場では9月会合での0.5ポイント利下げが織り込まれつつある。

調査会社LHマイヤー/マネタリー・ポリシー・アナリティクスのエコノミスト、デレク・タン氏は「こうした環境は利下げの加速につながる」と指摘。「米金融当局は既にリセッション(景気後退)回避、あるいは彼らが呼ぶところの景気拡大維持に傾いている。インフレの上振れリスクがほぼ過去のものとなる中、今回の統計でその傾斜がさらに一段と強まるだろう」と述べた。

雇用統計を構成する事業所調査と家計調査の両方の調査期間に当たる7月8日に、ハリケーン「ベリル」がテキサス州に襲来。労働統計局はこれによるデータへの「顕著な影響はなかった」と説明したが、悪天候のために仕事をしなかったと答えた人は急増した。

サーム・ルール

失業率が上昇したことで、FRBの元エコノミスト、クラウディア・サーム氏が考案した「サーム・ルール」上、リセッション開始の目安となる数値に達した。同ルールは過去50年にわたり完璧な有効性を示してきた。サーム氏は今回の雇用統計発表後にブルームバーグラジオで、米国はリセッションに陥っていないが、「良い方向には向かっていない」と語った。

サーム氏は最近、労働参加率の上昇やそれが失業率のデータにどの程度影響を及ぼしているかにも予測担当者は注目するべきだと述べている。米国人が労働力として復帰し、移民が流入するのに伴い、労働参加率が急速に上昇していると同氏は指摘していた。

労働参加率は62.7%に上昇。25-54歳の労働参加率は84%に上昇し、2001年以来の高水準となった。

雇用者数の伸び鈍化は、情報分野や自動車製造業での人員削減を反映した。臨時雇用も減少。これは景気下降の前兆と見なされることが多い。一方、ヘルスケア部門は引き続き雇用の伸びをけん引した。

雇用拡大の広がりを示す雇用DIはコロナ禍初期以来の最低水準に下げた。

原題:US Unemployment Rate Rises Again, Cementing Path to Fed Rate Cut(抜粋)

(統計の詳細やエコノミストのコメントを追加し、更新します)

--取材協力:Chris MiddletonMatthew BoeslerCecile Daurat.

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