ことし3月に石川県の金沢から福井県の敦賀(つるが)まで延伸した北陸新幹線。

22日、大阪府の吉村知事や関西の経済団体などが1日も早く大阪までつなげることを改めて訴えました。

しかし、敦賀からどのようなルートで大阪につなげるかで、一旦は選択肢から消えたルートを再び推す動きがここに来て活発化しています。

■災害発生時 東海道新幹線の『代替ルート』としての役割期待

22日、大阪府の吉村知事や関西の経済団体などが一堂に会した会合。
その目的は、北陸新幹線の1日も早い全線開業です。

【大阪府・吉村洋文知事】「敦賀までの開業は素晴らしいんですが、やはり大阪まで全線を開業する、これが最も重要であろうと」

ことし3月に石川県の金沢から福井県の敦賀(まで延伸した北陸新幹線。
しかし、北陸新幹線はここで終わりではありません。

災害などが発生した場合は東海道新幹線の『代替ルート』としての役割も期待される中、大阪までつなげるのが最終目標です。

■まだ着工しない「小浜ー京都ルート」建設費は当初の2倍に膨張

与党の検討委員会は2016年、敦賀から新大阪までの延伸について3つの候補から福井県の小浜市(おばまし)から、京都駅を経由する「小浜-京都ルート」での整備を決定しました。

【与党・検討委員会 西田昌司委員長(2016年)】「我田引“鉄”と言われるようなことがないように公平にやってきたつもりですし、妥当な報告だと思います」

しかし、京都府の地下を縦断するルートのため、地下水への影響や建設残土の処理をめぐって地元では不安の声が根強く、7年以上経った今も着工には至っていません。

また、関係者によると、当初およそ2兆1千億円と想定していた建設費を国交省が改めて試算した結果、物価の高騰などでおよそ2倍の3兆9千億円近くにまで膨らんでいて、費用対効果が懸念されています。

■工期が短く建設費減の「米原ルート」

それに加えて、『滋賀・米原ルート』が再燃する動きが出ているのです。

【石川県議会・福村章議員(去年1月)】「私はもういっぺん、米原。経費は4分の1。時間も10年内で必ずできるんです」

滋賀県の米原駅につなぐ「米原ルート」は、東海道新幹線に乗り換える必要がありますが、『小浜―京都ルート』に比べると工期が短く、建設費も大幅に抑えられます。

■石川県や維新などが「米原ルート」を推進

ことし5月には、敦賀延伸によって新駅が誕生した加賀南部の自治体や経済界が集まった会合でも、石川県加賀市の宮元陸市長が「政府与党合意は全てではないです。状況に応じて的確な判断をして、ルートを変更していく。決断をして前に進めるべきだと思います」と発言。
この会合では、政府・与党の方針を覆し、米原ルートへの再考を求める決議が採択されました。

さらに先月、石川県議会で米原ルートへの見直しを求めることを賛成多数で決議したほか、日本維新の会と教育無償化を実現する会が米原ルートへの変更を強く求める提言書を国に提出。

ここに来てそもそものルートの見直しを求める声が相次いでいるのです。


■「米原ルート」への見直し厳しく『けん制』した福井県知事

こうした中、22日の大阪での会合では「小浜-京都ルート」での整備を一刻も早く進め、1日でも早い全線開業に向けて国や関係機関に強く働きかける決議を採択。

また、来賓として出席した福井県の杉本達治知事は「例えば、もしも米原ルートとなった時には、福井と大阪の間、小浜―京都ルートでつないだ時よりも4割時間がかかり、その上料金は5割高くなる、金沢でも富山でも20分以上遠くなり、しかも料金が2000円以上上がっていく。毎回乗る度にですよ。こんなことがあって許されるのでしょうか」と述べ、「滋賀・米原ルート」への見直しの動きをけん制しました。

■「東海道新幹線が止まった時の代替手段必要」と大阪府・吉村知事

大阪府の吉村洋文知事は「本日も東海道新幹線が止まって影響を受けている。その中でやはり太平洋側ではなくて北陸側を回って東京と大阪がつながる、国家としてのリダンダンシー(代替手段)の観点から非常に北陸新幹線は重要だと思っています」と語りました。

敦賀から大阪まで北陸新幹線をどのようにつなげるのか。
延伸をめぐる議論は大詰めを迎えるのか、それともさらなる混迷を深めることになるのでしょうか。

■米原ルート が『建設コスパ良し』の試算

北陸新幹線の大阪への延伸ルートについて、「小浜-京都ルート」の建設費が当初のおよそ2倍の3.9兆円に膨らんだことを受けて浮上した米原ルート。

まず、2016年の国交省の資料をもとに、見込まれる利益を建設費などのコストで割った「費用対効果」について比較します。

数字が大きい方が『コスパが良い』と判断できますが、「費用対効果」は小浜―京都ルートが1.1なのに対し、米原ルートは2.2なので、米原ルートの方がコスパが良いということになります。

■乗車時間と料金で優位な『小浜ー京都ルート』 工期は『米原ルート』が短い試算

想定される工期については小浜―京都ルートが15年、米原ルートが10年かかるということです。

利用者にとってはどちらが便利なのでしょうか。

金沢-新大阪間の乗車時間と運賃を比べると、小浜―京都ルートは直通でおよそ1時間19分、8740円なのに対して、米原ルートは乗り換えありで金沢―新大阪間が約1時間41分で、1万1190円となります。

利用者にとっては、小浜―京都ルートの方が安くて近いという計算になります。

■「エリアごとの綱引きだが、2つのルートを検証し直した方がいい」と泉房穂氏

もともと政府与党では、小浜-京都ルートで決まっていましたが、費用対効果などの議論があり、米原ルートが浮上している現状について、前明石市長の泉房穂氏は「もう一度2つのルートを検証し直したらいい」とする見解を示しました。

【泉房穂 前明石市長】「この手のテーマはそれぞれ近くの地域の方々が自分の地域を通ってほしいということがよくあることなので、結局今の行動を見ていても、それぞれエリアごとの綱引きです。ただ私からすると、この手の話はもちろん無いよりあった方がいいわけですし、遅いより早い方がいいですけど、ただコストの問題も大きいので、やはり今回は当初の約2倍のコストだということであれば、一旦立ち止まって考えるのもありだと思います」

「私も明石市長の時に、一つの案があっても代替策、ほかに方法がないのかを考える。次にコストを考える。もっと安くならないかと考える。そして急ぐかどうかも考える、そこまで急がないですとか、その3つの観点で考える。今回は、3つとも関係していて、一旦もう一回検証したらいいと思いますけどね」

「来年できる話じゃないので、10年、15年後の話ですので、少し落ち着いて整理してもいいと思うし、今、資材高騰で値段上がっていますから、若干落ちついてから工事するのも私はありだと思います」

■コスト面で優位とされる『米原ルート』しかし地質調査などはまだ行われず 

また、関西テレビ加藤さゆり解説デスクは「米原ルートについては地質調査等がまだ実施されていないことも念頭に置くべき」と指摘します。

【加藤さゆり解説デスク】「工期に関して言うと、今15年、10年でていますけれども、ここにさらに米原ルートをやろうと思うと、そこの地質調査や水質調査も発生してくるので、それによってはさらに何かしらの金額がかかるかもしれないっていうところも念頭に置かないといけないので、ほんとうにどちらが現実的かっていうのはちゃんと立ち止まって考えなければいけないと思います」

どちらのルートにも懸念材料がある中で、北陸新幹線の延伸をめぐる議論はどのような決着を迎えるのだろうか。

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