花笠まつりに欠かせない「花笠」。実は今、この花笠に異変が起きている。原材料の不足で、新しい花笠を買いたくても手に入らない「花笠不足」となっている。
山形市の民芸品店「尚美堂」では、「山形花笠まつり」で使われる花笠のじつに9割以上を作っている。
まつりの開幕まであと2週間あまり。例年であれば店内にズラリと並ぶはずの花笠がなかった。
(尚美堂・逸見良昭社長)
「通常だと踊り用の『尺一寸』という花笠が置いてある。外にワゴンを置いているのでそこで販売もしていたが、今年は全くない」
品薄状態の中、こちらの客が買いに来たのは「花笠に付ける花」。
(客)
「古い花を外して、つけて、修理しようと思って」
(逸見社長)
「いつもは花笠を買ってもらうんだが、花笠がないので花だけ」
(客)
「なかなか調達できない。古くなったものから少しずつ買い替えていたんですけど」
(電話)
「はい、尚美堂です」
店には、花笠を買いたいという客からの電話がひっきりなし。支払いの対応中も、何度も電話がかかってきた。
(電話)
「何枚ですか。何枚か入ったので、用意させていただきます」
(尚美堂・逸見良昭社長)
「今は、『花笠が入荷したか』ということで。団体さんはお断りしているが、ある分は1枚・2枚はお譲りしている」
花笠の品薄の原因は、「編み手」と「材料」の不足。
尚美堂では、飯豊町中津川で手づくりされた「笠」に「花」を付けるなどして花笠を作っている。しかし、この「笠」の仕入れられる量が、年々、大きく減っている。
(尚美堂・逸見良昭社長)
「高齢化で“編み手”が少なくなってしまったのが一番大きな要因」
飯豊町の笠の編み手は去年まで11人いたが、高齢化で多くが引退し、今年は6人と半数近くにまで減ってしまった。
さらに、笠の材料として県内で栽培されている「スゲ」という植物も、栽培面積が年々減少している。
そこに追い討ちをかけたのが、去年の猛暑。
(尚美堂・逸見良昭社長)
「今年はスゲが非常に細い。昨年は非常に暑かったから『影響があるのかも』と言われている」
今年の花笠には、去年刈り取って乾燥させたスゲが使われる。しかし去年のスゲは、猛暑の影響からか笠を作れる太さにまで育たなかった。
(尚美堂・逸見良昭社長)
「スゲが細いと本数は使う、幅が広いと本数を使わない。(笠に使える太いスゲが…)今年はない。全くなかった」
「編み手」と「スゲ」の不足で、今年の花笠の製造数は去年の4000個から1000個減って3000個に…。
店の一角には、竹で作られた骨組みだけが並んでいた。
(尚美堂・逸見良昭社長)
「本来であれば楽しみに参加しようとしているのに、花笠がないのは踊り手にしても寂しい。私たちの立場からしてみたら提供できない虚しさがある」
尚美堂では今、スゲとは異なる素材を使った代替品の試作も検討しているという。
(尚美堂・逸見良昭社長)
「担い手を育てる・代替えも考えていかなければならない。毎年花笠を楽しみにしている人に、花笠だけは届け続けたい」
尚美堂には、きょうの時点ですでに在庫がないという。
パレードに出る人で花笠がないという人の中には、知り合いに借りるなどして対応するケースもあるようだ。
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