3月の訪日客数は単月として初めて300万人を上回り、来年4月開幕の2025年大阪・関西万博も海外からの多くの来場者が予想される。ただ、宿泊施設の人手不足やオーバーツーリズム(観光公害)の懸念など、対処すべき課題は多い。
日本国際博覧会協会は期間中に約2820万人の来場を見込み、うち約350万人(約12%)が訪日客と想定している。足元の回復を踏まえ、想定以上の数になるとの見方も出ている。
多くの来場客を予想し、大阪ではホテルの新規開業が相次ぐ。
JR大阪駅北側の再開発地区「うめきた2期」には米ヒルトンの最高級「ウォルドーフ・アストリア」が令和7年度上期に進出。ヒルトンは同年までに関西で合計4カ所の開業を計画する。大阪城近くにも7年春、シンガポール系の「パティーナ大阪」(同市中央区)が開業する。
ウォルドーフ、パティーナとも中心の客室単価は1泊10万円超が見込まれる、訪日富裕層がターゲット。既存のホテルでも、大規模改装が続いている。
ただ、多くのホテル関係者は「人手不足が一番の課題だ」と声をそろえる。宿泊客の増加に加え、ヘッドハンティングなど「ホテル勤務経験の豊富な人材の取り合いが激しさを増している」(大手ホテル経営者)。
人手不足対策としてヒルトンは、リゾート地のホテルで閑散期に発生する余剰人員を生かし、新規開業が増えている関西への派遣を進める。
また、育て上げた従業員を離職させないことにも神経をとがらせる。「まずは従業員満足度を上げることが重要だ」。こう語るのは、インターコンチネンタルホテル大阪(同市北区)の担当者。同ホテルは、今年1月から年間休日を120日と10日増やした。
一方、星野リゾートの星野佳路(よしはる)代表は17日の記者会見で、万博が大阪や京都での観光公害に拍車をかける懸念に言及した。「万博だけでなく、周辺や広域にも足を延ばし滞在してもらうようにすること」が、観光公害対策としての来場客の分散化につながるとした。
関係者が頭を悩ませるのが、万博会場へ来場客を混雑させず運ぶことだ。万博協会は、会場の夢洲(ゆめしま)へのアクセス方法に知恵を絞る。主要なアクセスとしては鉄道とシャトルバスを想定。原則、公共交通機関での来場を呼びかけるが、自家用車を夢洲から離れた駐車場に止めてバスで会場に運ぶパークアンドライド方式も導入する。
鉄道は大阪メトロ中央線がコスモスクエア駅から夢洲駅まで延伸され、会場に乗り入れる唯一の鉄道路線となる。
ただ、万博協会はピーク時の混雑率は現在の2倍の140%になるとみる。大阪府市や経済界とともに、混雑が予想される会期終盤の来年9、10月を中心に沿線企業などに在宅勤務や時差出勤を呼びかける。(田村慶子、井上浩平)
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