クレディ・スイスを買収したUBS=ロイター

【ロンドン=大西康平】スイス連邦内閣は10日、国内の大銀行に対する金融規制の強化を求める報告書をまとめた。クレディ・スイス・グループの事実上の破綻を教訓とし、同社の買収で経営規模が膨らんだ金融大手のUBSを念頭に、より多くの自己資本や手元流動性の確保が必要との考えを示した。

報告書では、海外子会社への出資について、親会社の銀行が従来よりも多くの自己資本を積み増すことが提案された。複雑な親子関係が解消され、緊急時の海外子会社の持ち分売却による再編や資金捻出が進みやすくなるとした。

経営責任を明確にするため、多額の損失発生時には役員に支払い済みの報酬を返還させる「クローバック条項」の導入も推奨した。2024年初からストレス下での資金流出に耐える手元流動性の保有基準を引き上げており、26年までに同基準の有効性を見直すともした。

今後、24年末までにスイス議会でも同様の調査報告を行う。これらの報告をもとに、条例と法律の改正を経て正式に新しい規制が適用される見通しだ。

10日の欧州株式市場では、自己資本の積み増しが業績の下押し圧力になるとの懸念から、UBSの株価は前日比3%安で引けた。

スイス当局は12年、大銀行に対して「Too Big to fail(TBTF)」と呼ばれる規制を導入した。高いレベルの資本や流動性の確保を求めてきたにも関わらず、クレディが事実上の破綻に陥ったことで見直し機運が高まっていた。

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