金融政策決定会合後に記者会見する日銀の黒田東彦総裁 (2014年7月)

日銀は16日、2014年1〜6月に開いた金融政策決定会合の議事録を公開した。異次元緩和の開始から1年ほどが経過し、2年程度で2%の物価上昇率が達成可能との自信を深めていた。4月の消費増税後の個人消費の落ち込みは「想定内」との議論が目立ち、懸念はそれほど大きくないと認識していたようだ。(肩書は当時)

「量的・質的金融緩和を導入して1 年だが、その効果は引き続きしっかり働いている」。黒田東彦総裁は4月8日の会合でこう強調した。円安で物価の伸びは1%台前半まで高まっていた。15年度ごろに2%程度に到達する可能性が高いとみていた。

当時の焦点の一つは、4月の消費税8%への引き上げによる経済への打撃の大きさだった。駆け込み消費の反動減は、雇用・所得の改善によって、その影響は次第に小さくなっていくとのシナリオを有力視していた。

中曽宏副総裁は4月30日の会合で「少なくとも想定を大きく上回る反動は起こっていないとみている。影響はさほど長く続かないとの見方が多いように思う。現時点では家計支出は早晩、底堅い動きへと戻っていくと考えておいてよいのではないか」と指摘した。

もっとも、消費の落ち込みや輸出の伸びの鈍さを懸念する指摘も出ていた。白井さゆり審議委員は5月の会合で「家計が実質賃金の目減りを意識し始めると、消費の基調が弱まるリスクがあると思う」との意見を出した。

木内登英審議委員は6月の会合で「駆け込みの増加に比べて反動減は小さいという認識が広く浸透しているようにみえるが、小売業全体の動向を必ずしも正確に反映していないと思う。消費者物価は徐々に水準を切り下げていく可能性がある」と主張した。

こうした議論からは異次元緩和が期待通りに進んでいなかった面があったこともうかがえる。実際、賃上げは力強さに欠け、消費の鈍さは短期間では解消されなかった。円安にもかかわらず輸出も勢いが強まらなかった。

当時は物価2%目標の達成が市場参加者から疑問視され、追加緩和への期待も高まっていた。佐藤健裕審議委員は4月8日の会合で「海外投資家の期待感の強さは圧倒されるものがあった」と指摘したが、6月までの決定会合で追加緩和へ向けた深い議論はしていない。

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