米アップルの日本向け「iPhone」に新たな機能が加わりました。小売店や飲食店のレジのように使える機能で、来店客はタッチ決済に対応したクレジットカードなどをかざすだけで決済できます。国内スマートフォン出荷台数の5割強を占めるiPhone。身近なスマホがレジ代わりになることで、「現金オンリー」のお店のキャッシュレス化につながるのでしょうか。

仕組み、アプリの種類は?

iPhoneのタッチ決済機能には、かざすだけで通信ができる近距離無線通信(NFC)と呼ぶ技術を使います。NFCは公共交通機関の自動改札機に活用されているソニーの「FeliCa(フェリカ)」が有名ですが、今回はフェリカとは別の種類のNFCが使われています。

飲食店などがiPhoneを「レジ」代わりに使うには、自身のiPhoneに専用のアプリをダウンロードする必要があります。現時点でアプリストア経由で導入できるのは、①GMOフィナンシャルゲートの「stera tap」②リクルートの「Airペイ タッチ」③スクエアの「Square POSレジ」――です。

オランダのアディエンも6月20日からiPhoneのタッチ決済を始めました。他の3社とはターゲットが異なり、グローバル企業や大企業向けに専用のアプリを開発しています。いずれも最新のiOSを搭載したiPhone XS以降のスマホが必要です。

お店や消費者はどう使う?

店側はアプリをダウンロードして登録し、来店客がタッチ決済を使うごとにアプリの提供会社に手数料を支払います。1度の決済でかかる手数料率はstera tapはカードのブランドによって異なりますが2.7〜3.24%、Airペイ タッチは一律3.24%、Square POSレジは一律3.25%です。

来店客はリップルマーク(波のような印)の付いたクレジットカードとデビットカードで利用できます。決済サービスを手掛けるフィンテック企業のインフキュリオン(東京・千代田)の調査によると、クレカでは利用者の半数、デビットカードでは利用者の35%がタッチ決済を利用しています。店舗にとっては初期費用を抑えつつ、キャッシュレス決済を始められることが最大のメリットと言えそうです。

iPhone

クレカ決済を受け付けるには通常、手数料のほかに専用端末が必要になります。1台あたり数千〜数万円程度のため、特に個人が営業する飲食店などでキャッシュレス化が進まない一因となっていました。

商品名や購入金額などの取引情報はアプリを通じてお店の情報管理システムに自動送信されます。お店だけでなく、イベントや宅配など様々な場面での利用が想定されています。

導入1カ月、現場では?

実際にiPhoneのタッチ決済を導入している飲食店を訪ねました。都内のドーナツ店「GRANDPA」では、スクエアのサービスを使っています。これまでは据え置き型の決済端末だけを使っていましたが、混み合う時間帯は決済をiPhoneで済ませることもあるそうです。常時2〜3人の店員がそれぞれのiPhoneを片手に接客していました。

iPhoneは、飲食店のタッチ決済端末としても使われる(東京都中央区)

このお店では多いときに月2回ほど飲食関連のイベントに出店します。店長の三上龍馬さんは「出店のたびに大きな決済端末や付随するコードなどを持ち出すのは一手間だった。いまはスタッフのひとりでもiPhoneを持っていれば問題ない」と話します。販売に不可欠だった専用の決済端末が不要になることへの負担低減は大きいようです。

店の売り上げデータをiPhoneで管理できるのも利点のひとつです。スクエアの場合、レジ締めをすると1日の売り上げや決済情報がリポートとなってアプリに届きます。据え置き型の端末であれば、店長などの限られた人しか見る機会はありませんが、同じアカウントを持っていればアルバイトのスタッフもお店の収支を確認できます。三上さんは「スタッフの経営に対する意識が変わった」と話していました。

(古田翔悟)

【関連記事】

  • ・Appleも生成AI メール・カレンダー連携でSiri高度化
  • ・最新AIが端末変える iPhoneなど音声技術で手入力不要に
  • ・iPhoneホーム画面の「Apple News」、日本で表示終了

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。