厚生労働省は3日、5年に一度行われる年金の財政検証の結果を公表し、現役世代の平均的な手取り額と年金額を比べた「所得代替率」が、33年後には現在より2割ほど低くなる見通しが明らかになった。
所得代替率とは、年金世代の受給額が、現役世代の手取り額と比べてどのくらいの割合になるかを示す指標だ。
2024年度の所得代替率を見てみると
(夫婦2人の年金22万6000円)÷(現役世代男性の平均手取り収入37万円)×100=61.2%
となっている。
厚労省は今回、高成長実現ケース、成長型経済移行・継続ケース、過去30年投影ケース、1人当たりゼロ成長ケースの4パターンで検証している。
今後経済成長と働き手の増加が一定程度しか進まない「過去30年投影ケース」の場合、33年後の2057年度には、夫婦2人の年金は21万1000円と1万5000円減少する一方、現役世代男性の平均手取り収入は41万8000円となり、所得代替率は50.4%と、現在よりも2割ほど低下する見通しであることが分かった。
5年前の検証では所得代替率は45%前後まで低下するとの試算だったため、今回の検証では改善した形だ。
改善の理由は、女性やシニア層の労働参加の増加や、年金積立金の運用収益が黒字だったことなどが指摘されている。
法律で定めた「現役世代の半分以上」という水準は維持されるが、出生率が保たれ、入国する外国人が増えるなどことを前提にしており、想定を下回れば、年金水準はさらに低下することになる。
厚労省は、検証結果を踏まえて今後、本格的に制度改正の議論に入る。
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