■不要なオスのヒヨコ 世界で60億羽 日本で1億3000万羽 毎年殺処分

人間が食べる卵を産ませるために生産される「ニワトリ」は、オスは不要な存在となるため、産まれてすぐのヒヨコの段階で殺処分される。

殺されるオスのヒヨコは、世界中で毎年60億羽以上、日本国内でも年間1億3000万羽以上に上ると推定されている。

およそ1億2500万人とされる日本の人口を超えるオスのヒヨコが毎年殺されているのだ。

■卵の中の「目の色」でオスとメスを判別する新手法

ふ化前の「目の色」でオス、メスを判別

こうした現実を変えようと、徳島大学の竹本龍也教授と徳島大学発のベンチャー企業セツロテックなどは、卵の中のひなの性別をふ化する前に「目の色」で判別する手法を開発したと発表した。

竹本教授らが開発した手法は、ニワトリの性別を決定する染色体上にある「目の色」に関する遺伝子にゲノム編集を施し、卵の中にあるニワトリの胚の「目の色」の違いでオスとメスを判別するというもの。

■LEDライトを殻に照射で「目の色」を容易に判別

この手法を用いれば、ニワトリの場合、最短で卵が産み落とされて1週間の段階で、オスの胚が「黒色の目」であるのに対し、メスの胚は「無色透明」となるため、その差を容易に見分けることができる。

暗い場所で卵の殻をLEDライトで照らすと、殻に透けた光で目の色の違いが分かり、卵の殻を割ることなくオスとメスを判別できるという。

■従来になかった「非遺伝子組み換え型」 動物福祉の観点もクリアした新手法

胚の段階で目の色が「無色透明」だったメスは、ふ化した後、やがて「赤色の目」となり、野生のニワトリと同じように健康に成長し、産卵ができるようになることも確認されている。

また、この手法で用いられるゲノム編集は、もともとニワトリが持っている遺伝子の一部をなくす『非遺伝子組み換え型』であり、ニワトリではない他の種の遺伝子を取り込む『遺伝子組み換え型』とは異なる。

これまで、多くの研究機関などでふ化前の卵のひなの性別を判別できる技術開発は進められてきたが、遺伝子組み換え技術を使わず法律で規制されている時期までに簡単に性別が判別できる今回のような手法は開発されていなかった。(ドイツなどでは、ふ卵13日目以降のヒヨコの殺処分禁止の法整備が進む)

■「まだ特許取得ができただけ。生産現場で広く活用してもらい動物福祉に貢献したい」

竹本教授らは、この手法の日本国内における特許を取得。数年後の実用化を目指している。

【徳島大学 先端酵素学研究所 竹本龍也教授】「この技術を用いてオスニワトリの殺処分問題が解決できればと期待しております。一方で、現時点では研究段階での成果を基にした特許取得ができただけに過ぎません」

「今後、実際の採卵鶏(ニワトリ)の生産現場で広く活用してもらい、アニマルウェルフェア(動物福祉)に貢献することが最終的な目標ですので、実用化に向けてセツロテック社と共に取り組んでいく所存です」

■オスと判別された卵を用いてインフルエンザワクチンを製造

また竹本教授は、オスと判別された後の卵についてインフルエンザなどの「ワクチン」を製造する際に活用されることを期待している。

一般的にインフルエンザのワクチンはニワトリの有精卵にウイルスを打ち、培養させてそれを精製した後、毒性をなくす形で製造されている。
竹本教授はこの有精卵に、従来であればふ化した後に殺処分される運命だったオスの卵を活用したい考えだ。

竹本教授らは新手法が一般的となり、オスのヒヨコが殺されなくなる未来の実現に向けて研究を継続している。

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